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FIRST MAGIC
第13話 魔法棟への道程
しおりを挟む「まずは、魔法棟をご案内致しますね。」
「魔法棟?」
「はい。城内に施された魔法の制御と、一級魔法師たちによる最先端の魔法の研究が行われている場所です。チイ様を召喚したのも魔法棟に務める宮廷魔法師たちですから、詳しい説明を聞くためにも一度顔合せをしておいた方がいいでしょう。」
「私を召喚した魔法師たち、ね。」
アレクの話でそれは倣わしであり、一概に彼らのせいとは言えないことは知っている知衣だが、それでもやはりこんなことになった直接的原因の魔法の使い手と言われると好感は抱きがたい。
「確かに、色々話は聞きたいかな。」
苦情の一つや二つ、言ったところでバチはあたるまい。
この世界において、宮廷魔法師と言えばエリート中のエリート。
百年に一人の魔法の才能と優れた魔法知識が不可欠とされ、憧れの存在なのだと言う。
「じゃあ、身分的にも高い人たちなのね。」
「はい。王族やチイ様よりは下になりますが。」
「私ってそんなに高い地位の扱いになるの?」
英雄呼ばわりされたり、セフィーに当たり前のように呼び捨てを求められたりと、随分良い扱いを受けているとは思っていたが、そんなエリートたちより上の地位だとは。
「ええ。魔法案提供者の地位はこの世界において別格です。国政に関わることはできませんが、その地位は王族と並ぶものですから、チイ様は誰に対しても膝をつく必要はないのですよ。」
「王族と並ぶ!?」
「はい。ですからいくら第一王子とはいえ、アレク様のあのような扱いには、チイ様は文句をつけても良いのですよ。」
「それは……つけたいのは山々だけど、その後が怖いわね。」
王族の地位もあるが、それに加えアレクには魔法がある。
それにあの子供っぽい性格――実際子供だとわかったが。あまり逆らわない方が得策であるように思える。
「チイ様。魔法棟はこの上です。」
そう言われ視線を上げた知衣は、表情を引きつらせた。
はるか先にまで続く長い長い階段。
「……これ、昇るの?」
何百段――いや、ひょっとして数千段?
どちらかといえばインドア派の知衣から見れば、昇りきる自信など到底抱けそうもない、見るだけで拒絶反応が出そうな階段だ。
知衣の問いかけに、クレアは申し訳なさそうに頷く。
「はい。本来であれば魔法で魔法棟まで跳べるのですが、セキュリティーの関係でまだチイ様は城内の移動魔法が使えないので。」
城の各所には瞬間移動の魔法装置があり、それによって瞬時に移動が可能なのだが誰しもが使えるわけではなく、承認の手続きを踏んだ者だけが使えるらしい。
その手続きは魔法棟にある装置のみで行う事が出来、その手続きのためにもまず魔法棟に案内するのだとクレアは言う。
「まあ、確かに王族のいるお城でバンバン移動魔法が使えたら、暗殺とか防げないわよねぇ。」
理屈は納得できるのだが、この階段を昇るのかと思うとうんざりする。
「チイ様、よろしければ私が抱えて昇りますが。」
クレアの申し出に知衣は首を振る。
この年で男の人に抱えられて移動するのは、恥ずかしい。
それにクレアの容貌は、アレクのものなのだ。
第一王子の姿をした人に抱えられている姿を見られるのは、何か問題がありそうな気がする。
少なくともアレク本人に伝われば、さらなる人災が待っていることだろう。
「いいよ。頑張る。休み休みにはなると思うけど。」
知衣の答えに何故かクレアは少し残念そうな表情を浮かべたが、控えめに頷く。
「では行きましょう。」
そうして昇った地獄のような階段。
昇りきるまで、なんと2時間かかりました。
……ぐったり。
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