THREE MAGIC

九備緒

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FIRST MAGIC

第12話 癒し系王子様

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 一年が地球より長いだとか。
 寿命が違うだとか。
 魔法で外見を誤魔化しているだとか。

 知衣の思い尽く限りのローティーン否定要素は、セフィーとクレアによってことごとく否定された。

 この世界で一年は370日。
 一日の長さは地球と同じで、寿命は日本人の平均年齢と概ね同じくらい。
 姿を誤魔化す魔法はあるが、アレクはあれが素の姿だと言う。
 老け顔と言いたいところだが、セフィーの手前兄を悪く言うのは躊躇われる。

「いくらなんでも…年より大人っぽすぎないかな?」

 遠まわしに言ってみると、セフィーは首を傾けた。

「そんなことはないと思います。ルーエル兄様も同じような感じですし。」

 ルーエル兄様というのが、この国の三人の王子の最後の一人。
 歳はアレクの一つ下、セフィーの二つ上の13歳なのだと言う。

「あ、あんな13歳までいるの?」

 知衣の驚きように、セフィーは目を瞬かせる。

「女性に尋ねるのは失礼とは思いますけど、チイ様は一体お幾つなんですか?」

 知衣は童顔で年より下に見られることが多いこともあり、まだ歳を公表することに抵抗はない。
 だが、この展開では逆の意味で抵抗がある。
 けれど、ローティーンに見られたままというわけにもいかない。

「……24歳です。」
「え!?」

 今にも零れ落ちそうに大きな目を見開くセフィーに、知衣は表情を引きつらせる。

 よくわかった。

 ここが異世界であること。そしてここでは、自分はどうやらとんでもない童顔に入ってしまうことが。 
 地球でも日本人は童顔だと言われがちだ。そんな日本人の中でも知衣は童顔でだけれど、ここまで幼く見られたことはない。

「そんなに驚く?」

 苦笑して尋ねる知衣に、セフィーは慌てて首を振る。

「ご、ごめんなさい。僕の服を着てるし、てっきり同じ歳くらいかと思ってました。」

 それだけが原因とは思えないが、セフィーを苛めたいわけではない。
 肩を竦めて知衣は頷く。

「まあ、この国で女の人はこんな格好はしないみたいですし。いい年した大人だったら尚更なんでしょうね。」
「ドレスはお嫌ですか?」
「うーん。機能性がいいとは言えないし、私なんかが着飾ったところでたかが知れてるし。」
「そんなこと!チイ様はとても可愛らしいです!!」

 声を張り上げ否定するセフィーの愛らしい姿に、知衣は思わずその頭を撫でる。
 やってしまってから失礼だったかな?と我に返ったが、嬉しそうに目を細めているセフィーの様子に安堵して、さらに撫でる。

「そう言って貰えると嬉しいな。ありがとうございます。」

 本当にそう思って言ってくれていることがその瞳を見ればわかるので、悪い気はしない。
 こんな弟がいたらなぁと思う。
 ほのぼのとした空気を満喫していると、背後にいたクレアがすっと前に歩み出た。

「セフィー様、ありがとうございました。そろそろチイ様を、城内の案内にお連れしようと思うのですが。」
「ああ、そうだね。足止めしてごめんね。」

 少し残念そうな表情を浮かべるセフィーに、知衣も名残惜しさを覚える。

「あの、また来てもいいですか?」

 おずおずと尋ねると、セフィーは顔を輝かせた。

「はい!是非いらしてください!僕でよろしければ城下もご案内しますよ!」
「はい。是非、お願いします。」

 にっこり笑って言うと、セフィーもまたにっこり笑った。
 あの俺様とは大違い。
 あの俺様には到底無理であろう癒し系の笑顔に、知衣は心のオアシスを得た気分だった。



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