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「――ごめん、もう……無理だ」
そう言って俺はその場で膝をついた。
深い深い森の中。ズボンが汚れるのも気にせず俺はその場に座り込んだ。
そんな俺の周りに、仲間たちが駆け寄ってくる。
「おいおい、もうへばってんのかよ……まだ始まったばっかだぞ?」
ケラケラと笑いながら俺の肩を小突くのは、聖騎士のテゴ・プラエフ。
短い金髪に碧目のイケメンである。俺と最も付き合いが長い友人だ。
こうして俺がへたり込んでも、軽口で済ませて今なお周りを警戒してくれている。
「大丈夫ですか? 何処か痛かったりしますか?」
俺と同じ目線まで顔を下げ、心配そうに此方を覗き込む少女、レナ・ビーブリア。
長い白髪を一括りにして、紫色の大きな杖を持っている美少女。
聖女と呼ばれる彼女は、様々な回復魔法でこのパーティを支えてくれている。
別に怪我をしている訳じゃない、と彼女の回復の申し出を断る。
ただ疲れた。心身共に疲れてしまった。
「そっか、それじゃあ此処で休憩にしよ?」
元気よくそういった少女――フォルティー・パレンティア。
聖剣を地面に突き刺し、魔法陣を展開する少女。
このパーティの要であり、聖剣に選ばれた勇者だ。
皆それぞれ秀でた能力がある。
それに対して俺は何もない。特別な力も能力も、何一つ存在しない。
「違うんだ、そういう意味で言ったんじゃない……皆の後ろをついて行く程度、なんて事はないよ」
そう。俺は後ろをついて行くだけ。
彼ら彼女らの戦いを、遥か遠くから眺めるだけなんだ。
後方支援の更に後ろから。
眺めるだけなんて、街の子供にでも出来る。
「なんだよ、じゃあ問題ねえだろ。行こうぜ」
「まだ話は終わってない、テゴ。言ったろ? そういう意味じゃないって」
俺はもう耐えられない。
これ以上足を引っ張りたくはなかった。
最初の頃は良かった。
そこらの野生動物や、低級の魔物。
そう言った存在にはまだ辛うじて戦えた。
俺は弓矢の扱いに関しては他者よりも……ここにいる誰よりも扱える自信がある。
だが、危険度の上がってきた今じゃ弓矢如きではここらの魔物の外皮や鱗など貫通する事は出来ない。
魔法の矢や特別な弓があれば話は別だろうが、そんな物が都合よくある訳もない。
弓だって非常に高価なものだし、常に矢も補充しなければならない。
それなら道具を買い揃えた方がいいだろう。
レナの魔法で矢を強化することも出来るが、それならテゴやフォルティーの支援に回った方が早い。
他に得意な武器なんてものも無い。
多分、騎士どころがそこらの傭兵にすら勝てない自信がある……なさけない。
今じゃ俺の役割は道具持ちなんていうザマだ。そんなのはもう仲間とは呼べないのではないだろうか。共に戦って、背中を預け合う。そうしてようやく仲間と呼び合えると俺は思っている。
「もう俺の実力じゃついて行く事は……敵わない。叶わないんだ。他に使えるやつなんていくらでも居る。仲間を募集してると言えばきっとお前たちぐらいの奴だって仲間になってくれるだろ」
これ以上惨めな思いをしたくなかった。
それなりの年月を共にして、こんな理由でパーティを抜けたくはなかった。
なんなら、彼らが俺を追放してくれた方がまだ割り切って別れることが出来たかもしれない。
それもこれも、皆が優しすぎたからだ。
もういっその事突き離して欲しかった。
俺は頭を下げて懇願する。
「だから俺を……脱退させてくれ」
そう言って俺はその場で膝をついた。
深い深い森の中。ズボンが汚れるのも気にせず俺はその場に座り込んだ。
そんな俺の周りに、仲間たちが駆け寄ってくる。
「おいおい、もうへばってんのかよ……まだ始まったばっかだぞ?」
ケラケラと笑いながら俺の肩を小突くのは、聖騎士のテゴ・プラエフ。
短い金髪に碧目のイケメンである。俺と最も付き合いが長い友人だ。
こうして俺がへたり込んでも、軽口で済ませて今なお周りを警戒してくれている。
「大丈夫ですか? 何処か痛かったりしますか?」
俺と同じ目線まで顔を下げ、心配そうに此方を覗き込む少女、レナ・ビーブリア。
長い白髪を一括りにして、紫色の大きな杖を持っている美少女。
聖女と呼ばれる彼女は、様々な回復魔法でこのパーティを支えてくれている。
別に怪我をしている訳じゃない、と彼女の回復の申し出を断る。
ただ疲れた。心身共に疲れてしまった。
「そっか、それじゃあ此処で休憩にしよ?」
元気よくそういった少女――フォルティー・パレンティア。
聖剣を地面に突き刺し、魔法陣を展開する少女。
このパーティの要であり、聖剣に選ばれた勇者だ。
皆それぞれ秀でた能力がある。
それに対して俺は何もない。特別な力も能力も、何一つ存在しない。
「違うんだ、そういう意味で言ったんじゃない……皆の後ろをついて行く程度、なんて事はないよ」
そう。俺は後ろをついて行くだけ。
彼ら彼女らの戦いを、遥か遠くから眺めるだけなんだ。
後方支援の更に後ろから。
眺めるだけなんて、街の子供にでも出来る。
「なんだよ、じゃあ問題ねえだろ。行こうぜ」
「まだ話は終わってない、テゴ。言ったろ? そういう意味じゃないって」
俺はもう耐えられない。
これ以上足を引っ張りたくはなかった。
最初の頃は良かった。
そこらの野生動物や、低級の魔物。
そう言った存在にはまだ辛うじて戦えた。
俺は弓矢の扱いに関しては他者よりも……ここにいる誰よりも扱える自信がある。
だが、危険度の上がってきた今じゃ弓矢如きではここらの魔物の外皮や鱗など貫通する事は出来ない。
魔法の矢や特別な弓があれば話は別だろうが、そんな物が都合よくある訳もない。
弓だって非常に高価なものだし、常に矢も補充しなければならない。
それなら道具を買い揃えた方がいいだろう。
レナの魔法で矢を強化することも出来るが、それならテゴやフォルティーの支援に回った方が早い。
他に得意な武器なんてものも無い。
多分、騎士どころがそこらの傭兵にすら勝てない自信がある……なさけない。
今じゃ俺の役割は道具持ちなんていうザマだ。そんなのはもう仲間とは呼べないのではないだろうか。共に戦って、背中を預け合う。そうしてようやく仲間と呼び合えると俺は思っている。
「もう俺の実力じゃついて行く事は……敵わない。叶わないんだ。他に使えるやつなんていくらでも居る。仲間を募集してると言えばきっとお前たちぐらいの奴だって仲間になってくれるだろ」
これ以上惨めな思いをしたくなかった。
それなりの年月を共にして、こんな理由でパーティを抜けたくはなかった。
なんなら、彼らが俺を追放してくれた方がまだ割り切って別れることが出来たかもしれない。
それもこれも、皆が優しすぎたからだ。
もういっその事突き離して欲しかった。
俺は頭を下げて懇願する。
「だから俺を……脱退させてくれ」
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