英雄を諦めた青年

KEA

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2話

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頼み込んで脱退を認めて貰って、一週間。

俺は故郷でだらけた日々を送っていた。
この一週間、彼女らは破竹の勢いでクエストをこなしているらしい。
その情報は此方にも聞こえるほどだ。竜なんて存在と戦ったらしいからな。
俺がいたことで受けられなかったクエストも請け負っているのだろう。
ま、俺なんていう邪魔なモノがなくなったからな。
これからはもっと名を世界中に轟かせる事だろうな。

やはり俺がいなくなったことで効率が良くなったのだろう。
うれしいと思う反面、悔しいという気持ちも存在する。

出会ってから五年。そんなに長い期間旅をしていた。
多分、この一週間はその五年の中で最も調子がいいのではないだろうか。
もしかしたら、もう新しい仲間を迎えいれて俺のことなんて忘れているのかもしれない。

……泣きたくなってきた。
というかもうちょっと泣いてる。

村の俺に対する当たりが強い。
そりゃそうだ。幼馴染の――勇者の仲間を放り投げて帰ってきたのだから。
ひそひそと住民が此方を見て話しているのを見る。
話し声までは聞こえない。が、いい内容ではないだろう。
視線を向けるとピタリと会話は止まり、俺から視線を逸らす。

帰ってきてから、テゴやフォルティ―の家族とも顔を合わせていない。
合わせる顔がない。

家族もいない俺に、この村に味方はいない。
母は俺を産んで間もなく死に、父は俺が旅をする少し前に魔物に襲われ死んでしまった。
まあ、逃げ出した俺が悪いんだけどさ。

「…………はぁ」

駄目だ、仲間の事を――いや、元仲間か――考えると、暗い気持ちになる。
気分転換に狩りにでも行くとしよう。道具一式に弓矢を手に取り、家を出る。
魔物なら兎も角、このあたりの野生動物なら十分に、いや……過剰過ぎるか。

買い物をしてもいいが、あまり村の連中とは関わりたくない。

















そうして訪れた近くの森の中。

野生動物を狩ろうと意気揚々と来たのはいいが……違和感。
生き物の気配がしない。普通なら猪だとか兎だとかいるというのに。
鳥一匹見当たらない。

「なんだ……?」

矢を番え、周りを見渡す。草木のせいで視界が悪い。
物音は――しない。俺の呼吸と、心臓の音しかしない。
直ぐに射てるように番えたままゆっくりと歩きだす。

……落ち着け。何をこんなに心配してるんだ。
このあたりにいる凶暴な動物など、せいぜい熊ぐらいだ。
魔物なんていない。いないはずなんだ。

草木を掻き分けて、開けた場所へとたどり着く。
辺りの木々はなぎ倒され、円を作り上げている。
その中央に――何かがいる。

何かがいるであろう場所。目を凝らして見れば、蜃気楼のように僅かにぼやけて見える。
おそらく、何かは自身を透明化させているのだろう。
だが、魔法が完璧ではない。だから完璧に姿を透明化できていないんだ。

弓を構え、ゆっくりと近づいていく。

透明になれる動物などいない。そんな魔法を使うのは人間か魔物だ。
ぼやけている所を見るに、それなりにデカい魔物であることは予測できる。

「…………」

ポタリ、と汗が落ちた。
本来なら俺は逃げ出すべきだ。

だが、村の中で俺以上に戦えるの者などいない。
俺が……俺が、何とかしないと。
アイツらの帰ってくるべき場所くらい守ってやらないと。

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