初冬

杉山 実

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高速警察へ

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 92-07
でも何故?空港に勤務していないのだろう?
周と結婚する前、凛子は地上勤務を申し出ていた筈だ。
俊三にもその様な話をしていたので、地上勤務の方が危険も減るね!それに不規則な生活から解放されるから良いと話した。
10年の歳月の長さを感じながら、自分も今頃10年前の事を探している。

しばらくして仲居がやって来て、大浴場の時間と食事処の順番を紙に書いて渡した。
「部屋食ではないのか?」
「人手不足で中々手が回らいので、団体さん以外は夕食も朝食も食事処でお願いしています」事務的に答えて部屋を出て行く。
俊三は取り敢えず大浴場に行く事にして、タオルセット持って向かった。

大浴場には数人の客が居て日本語では無い言葉で何か話して居る。
中国の人の様なイントネーションの言葉。
三人の男性は楽しそうな話し方では無かった。
インバウンドでの旅行の様には思えない。
三人の内の二人は俊三より少し上の様に見えるので、70代半ばか?一人は40代で息子の様だ。
一番若い男性が俊三の方を向いた時、俊三は「あっ!」と小さく声を出した。
そして思わず反対側を向いてしまった。
その顔が周文雄に似ていたからだ。
もしかして、台湾から親兄弟が花巻に遺体を引き取りに?葬儀の為?勝手な想像が俊三の頭を巡る。
声をかけようと思ったが、寸前のところで思いとどまる俊三。
10年も前の顔が似ているのも変な話で、自分の記憶に自信が無くなった。
しばらくして三人は大浴場から上がって行った。

その後食事処でも近くに成ったので仲居に尋ねると、周さんでは無かったので声をかけないで良かったと胸を撫で下ろした。
俊三は自分が予想していない事が起こって動揺していると思った。
凛子は何処に行ったのだろう?事故は本当に凛子の旦那と子供達なのか?
疑問が次々と浮かんでは消えて行く。
眠れる様にビールを一本飲んで食事を終わって、部屋に帰るとテレビを点けた。
偶然か、先日の事故のニュースが流れている。
大型トラックの運転手の大北聡45歳の居眠り運転が事故の直接原因だと伝えて居た。
地元の放送局なので亡くなった方の葬儀の様子や、関係者のコメントが放送されて俊三の目は画面に釘付けに成ったが、周のニュースは三人の名前だけで、写真は無かった。
「周さんの写真が無いのか?」独り言の様に呟く俊三。
その後しばらくテレビを見ていたが、明日の行動予定を考え始める。
警察に行くのが一番手っ取り早い、

寝ながら凛子は何処に行ったのだろう?
上の女の子が8歳、下が6歳と新聞には書いて有った。
少なくとも5~6年前までは一緒に住んでいる筈だ。
亭主と子供を残して凛子は別れたのだろうか?普通では子供を残して消えるとは考え難い。
付き合って居た時も凛子は優しい性格だった。
障害の有る弟の為に風俗でバイトをする様な性格だ。
自分の子供を置いて離婚するとは考えられない。
CAから地上勤務に成って、時間が決まると安定するから良いと別れる寸前聞いた記憶が有る。
九州一週旅行に行った時を思い出す俊三。
二泊三日で福岡空港からレンタカーを借りて、鹿児島から宮崎、大分とドライブをした。
宮崎で都井岬に行こうとドライブ中、足を引きずる女性を見つけ最寄りの駅まで車に乗せてあげた事が有った。
その為、都井岬には行けなかった。
代わりに近くの鵜戸神社に行く事に、そんなに期待していなかった二人はその絶景に「綺麗ね」
「素晴らしい」を連発していた。
海の青と海岸の美しさ、神社の朱色が鮮やかだった。
本殿は海に面した断崖の洞窟の中にあり、神秘な雰囲気だった。
岸壁に運玉投げが、早速凛子が投げたいと言い出した。
眼下の絶壁の亀の形の石に枡形の窪みが有って、この窪みに運玉を男性は左手、女性は右手で五個を投げて一個でも見事入れば願いが叶うと云う。
俊三は左手だから、まるで異なる方向に、それを見て凛子は大笑い。
自分は真剣に投げて「入った」と大きな声を上げたが、バウンドして外に「ああー」と残念そうな声、観光客も次々と投げるが中々入らない。
「ほら、私の一度は入ったよ」と自慢げに言うのだった。
駐車場から結構の距離と登り坂、休憩をしながら、暑さで寝そべる猫に悪戯をして遊ぶ凜子は楽しそうだ。
俊三は凛子の優しさを見た様な気がして、二人の仲が近づいた時に成った。
この時まで二人の関係は依然デリヘルの客とデリ嬢の域を出て居なかったが、不倫の恋人同士に成ったのかも?その夜は宮崎のホテルに泊まったが、二人は燃えた様な気がお互いにしていた。

眠れない夜を過ごして翌日、タクシー運転手石崎が迎えにやって来た。
「高速道路の警察に行こうと思うのだが?」
「高速道路警察隊だね!盛岡南インターの処に在るな!ここから半時間程度で行けますよ!」
旅館を後にタクシーは高速道路に入った。
事故のトンネルは一関なので、ここに行けば大体の事は判ると思う俊三。

到着して係りの人が来るまで随分待たされる。
「何方の家族の方?」ぶっきらぼうに言う。
「周さんの事に付いてお聞きしたいのです!」
「10日程前の一関の事故だな!可哀そうな事故だったな!でも青木さんは関西だね!どんな関係?貴方も台湾の人?」不思議そうに尋ねる警察。
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