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最愛の弟
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92-023
昼からの説明会には案の定、丸善印刷出版部の部長と課長の二人が来ていた。
望月学長は姿を見せなかったが、完全に二社に見積もりを出させて競わせる算段だ。
約二時間に渡る説明が終わって、企画部長からは大まかな説明で見積もりを来月15日までに両社提出して下さいと伝えた。
部数の最低は1万部で一冊当たりの単価で競う事に成った。
1万円なら1億の見積もりに成るが、発行部数は不明だから沢山売れれば儲けは増える事に成る。
説明会が終わって小杉が「販売価格1万円は妥当な値段ですかね!」
「DVDだけでも2千円以上の値打ちが有るぞ」
「忘れていた!付録が凄いレアですよね!DVDの値段は入れないでの見積もりでしたね」
「しかし丸善印刷がライバルとは意外でしたね!あの学長も狸ですね!」
「この資料を本社に送って見積もりを出して貰ってくれ!私は来月15日にまでに来るよ」
「こんな見積もりより、あの森田凛子さんとの橋渡しをした方が仕事貰えそうですがね!」
「そんな事はないだろう!あれはプライベートの希望だ!彼女は難しい気がするよ!」
大學の校門前で別れる二人。
俊三は今夜も凛子とデートに成るとうきうきしてタクシーに乗った。
「でも古い薬でも良く効くな!」独り言の様に言うと、運転手が「これからお遊びですか?」にやにやしながら尋ねた。
「恋人!恋人だよ!遊びに行くのじゃないよ!」
65歳の俊三には薬は必須の様に思えた。
「昨日は本当に若者の様に元気だったよ!」
「お客さんはまだ60代でしょう?私の知り合い80代でも元気だと言いますよ」
「そうなの?」嬉しそうに成る俊三。
年老いての再びの青春の様な気がしている。
確かにここ数年女性とは全く縁が無かったのも事実だった。
数年前の薬が役にたつとは考えもしなかった。
全く遊んでいないし、妻とも全く無かった俊三。
ホテルに帰ると時計を見ながら、凛子が来る時間が待ち遠しい。
今夜も泊まるのかな?まさか帰らないよな!
昨夜の事を考えながら動きの遅い時計を見る。
その時携帯が鳴って「青木さん!少し早いけれどもうホテルに帰っていますか?」待ちに待った凛子の声が向こうに聞こえる。
「もう部屋に居るよ!」
「そうなの?じゃあ部屋に行くね!」明るい声が聞こえて嬉しく成る俊三。
昔8年間付き合った時は、どうしてもお金が先に付いて回り恋愛では無かった様に思う。
お互い好きだったが、一歩踏み出せない二人だったのだ。
俊三には妻も子も居るのと、年齢差の問題が大きかった。
安達恭一との破談で自暴自棄での俊三との関係の始まりは、二人の塀に成っていたのかも知れない。
知的障害の弟が原因での破談で、外人の周に求めたが結果は似た様な事に成った。
智之は姉凛子の子供達を可愛がっているのだが、周にはそれが可愛がる様子には見えなくて怒りをぶつけてしまった。
智之は叱られた事に理解が出来ず、周親子が帰った後怒り狂ってストーブを倒す程暴れたのだ。
助けに入った母信子は火傷と呼吸器障害で、寝たきり状態に成り先日亡くなった。
父の直之も助け様として足を火傷したのだ。
智之は焼死してしまい、話を聞いた凛子は烈火の如く周に怒りをぶつけた。
周は居たたまれなく成って、子供を連れて台湾に逃げ帰ったのだ。
大きな傷を心に負った凛子は、離婚と同時に海外勤務を申し出た。
唯、病気の両親も心配なので、三年の契約にしたのだった。
チャイムが鳴って、俊三は急いで扉を開いた。
「ステーキ頂きに来ました!」
コートの襟を立てて入ると「寒いわよ!ほら」といきなり自分の頬を俊三の顔に押し付ける様にする。
日が暮れると風が冷たいのか、凛子の頬は氷の様に冷たかった。
俊三はその凛子の頭を持って、直ぐに唇に自分の唇を合わせる。
直ぐに身体が暑く成る凜子。
凛子も俊三と同じく、三年以上男性との愛も恋も無かったので燃えてしまったのだ。
しばらくして「ステーキ何時から?」
「6時だよ!少し早いけれど行くか?」
「お昼抜いたのよ!」
「同じだ!」そう云って笑う二人。
「明日早いから帰ろうかな?」
「えっ、泊まらないのか?」
「だって5時起きよ!迷惑でしょう?」
「大丈夫だよ!年寄りは早起きだ!」
そう言いながら凛子は鞄を持って来ているので、着替えが入っているのは直ぐに判った。
しばらくして、ホテルの中庭に在るステーキハウスに向かう二人だが、日が暮れて寒いので凛子が甘えて俊三に身体を寄せて歩く。
「寒いけれどワイン飲むか?」
「ええ!赤ワインね!」
ステーキのコースとワインを注文する二人。
お昼を抜いた二人はステーキを楽々食べ干して、赤ワインも一本飲み干していた。
ほろ酔い気分で部屋に帰ると、早速お風呂に入る二人。
「あったかいね!」
「今夜は特別寒いな!」
「あの日の様ね!」
「大雪で羽田空港が麻痺した日だね!デリ嬢をして居たのには驚いたよ!」
「三回目の日だったのよ!本当は嫌だったのよ!でも仕事の合間にある程度稼ぐには、他に手立てがなかったのよ!でもちーちゃんは死んじゃった!」そう言うと大きな瞳から涙が零れていた。
昼からの説明会には案の定、丸善印刷出版部の部長と課長の二人が来ていた。
望月学長は姿を見せなかったが、完全に二社に見積もりを出させて競わせる算段だ。
約二時間に渡る説明が終わって、企画部長からは大まかな説明で見積もりを来月15日までに両社提出して下さいと伝えた。
部数の最低は1万部で一冊当たりの単価で競う事に成った。
1万円なら1億の見積もりに成るが、発行部数は不明だから沢山売れれば儲けは増える事に成る。
説明会が終わって小杉が「販売価格1万円は妥当な値段ですかね!」
「DVDだけでも2千円以上の値打ちが有るぞ」
「忘れていた!付録が凄いレアですよね!DVDの値段は入れないでの見積もりでしたね」
「しかし丸善印刷がライバルとは意外でしたね!あの学長も狸ですね!」
「この資料を本社に送って見積もりを出して貰ってくれ!私は来月15日にまでに来るよ」
「こんな見積もりより、あの森田凛子さんとの橋渡しをした方が仕事貰えそうですがね!」
「そんな事はないだろう!あれはプライベートの希望だ!彼女は難しい気がするよ!」
大學の校門前で別れる二人。
俊三は今夜も凛子とデートに成るとうきうきしてタクシーに乗った。
「でも古い薬でも良く効くな!」独り言の様に言うと、運転手が「これからお遊びですか?」にやにやしながら尋ねた。
「恋人!恋人だよ!遊びに行くのじゃないよ!」
65歳の俊三には薬は必須の様に思えた。
「昨日は本当に若者の様に元気だったよ!」
「お客さんはまだ60代でしょう?私の知り合い80代でも元気だと言いますよ」
「そうなの?」嬉しそうに成る俊三。
年老いての再びの青春の様な気がしている。
確かにここ数年女性とは全く縁が無かったのも事実だった。
数年前の薬が役にたつとは考えもしなかった。
全く遊んでいないし、妻とも全く無かった俊三。
ホテルに帰ると時計を見ながら、凛子が来る時間が待ち遠しい。
今夜も泊まるのかな?まさか帰らないよな!
昨夜の事を考えながら動きの遅い時計を見る。
その時携帯が鳴って「青木さん!少し早いけれどもうホテルに帰っていますか?」待ちに待った凛子の声が向こうに聞こえる。
「もう部屋に居るよ!」
「そうなの?じゃあ部屋に行くね!」明るい声が聞こえて嬉しく成る俊三。
昔8年間付き合った時は、どうしてもお金が先に付いて回り恋愛では無かった様に思う。
お互い好きだったが、一歩踏み出せない二人だったのだ。
俊三には妻も子も居るのと、年齢差の問題が大きかった。
安達恭一との破談で自暴自棄での俊三との関係の始まりは、二人の塀に成っていたのかも知れない。
知的障害の弟が原因での破談で、外人の周に求めたが結果は似た様な事に成った。
智之は姉凛子の子供達を可愛がっているのだが、周にはそれが可愛がる様子には見えなくて怒りをぶつけてしまった。
智之は叱られた事に理解が出来ず、周親子が帰った後怒り狂ってストーブを倒す程暴れたのだ。
助けに入った母信子は火傷と呼吸器障害で、寝たきり状態に成り先日亡くなった。
父の直之も助け様として足を火傷したのだ。
智之は焼死してしまい、話を聞いた凛子は烈火の如く周に怒りをぶつけた。
周は居たたまれなく成って、子供を連れて台湾に逃げ帰ったのだ。
大きな傷を心に負った凛子は、離婚と同時に海外勤務を申し出た。
唯、病気の両親も心配なので、三年の契約にしたのだった。
チャイムが鳴って、俊三は急いで扉を開いた。
「ステーキ頂きに来ました!」
コートの襟を立てて入ると「寒いわよ!ほら」といきなり自分の頬を俊三の顔に押し付ける様にする。
日が暮れると風が冷たいのか、凛子の頬は氷の様に冷たかった。
俊三はその凛子の頭を持って、直ぐに唇に自分の唇を合わせる。
直ぐに身体が暑く成る凜子。
凛子も俊三と同じく、三年以上男性との愛も恋も無かったので燃えてしまったのだ。
しばらくして「ステーキ何時から?」
「6時だよ!少し早いけれど行くか?」
「お昼抜いたのよ!」
「同じだ!」そう云って笑う二人。
「明日早いから帰ろうかな?」
「えっ、泊まらないのか?」
「だって5時起きよ!迷惑でしょう?」
「大丈夫だよ!年寄りは早起きだ!」
そう言いながら凛子は鞄を持って来ているので、着替えが入っているのは直ぐに判った。
しばらくして、ホテルの中庭に在るステーキハウスに向かう二人だが、日が暮れて寒いので凛子が甘えて俊三に身体を寄せて歩く。
「寒いけれどワイン飲むか?」
「ええ!赤ワインね!」
ステーキのコースとワインを注文する二人。
お昼を抜いた二人はステーキを楽々食べ干して、赤ワインも一本飲み干していた。
ほろ酔い気分で部屋に帰ると、早速お風呂に入る二人。
「あったかいね!」
「今夜は特別寒いな!」
「あの日の様ね!」
「大雪で羽田空港が麻痺した日だね!デリ嬢をして居たのには驚いたよ!」
「三回目の日だったのよ!本当は嫌だったのよ!でも仕事の合間にある程度稼ぐには、他に手立てがなかったのよ!でもちーちゃんは死んじゃった!」そう言うと大きな瞳から涙が零れていた。
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