初冬

杉山 実

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 92-025

二人の尾行が付いて、凛子は新幹線に乗り込む。

座席についてコートを脱いだ凛子を見て「黒い服を着ていますね!葬儀でしょうか?」

「そんな感じだわね!荷物の量から見て泊の旅行は間違いわね」

男女の尾行で、二人共中年で夫婦の様に見える。

「盛岡までの切符を買いましたが、誰も同伴者は居ない様ですね!」

「途中から乗って来るかも知れない!どんな男と付き合って居るのか?を調べるのが私達の仕事よ!」

探偵社の二人は駅に到着する度に、乗り込んで来る乗客に目を光らせている。



一方の俊三も遅れて伊丹空港に向けて家を出発した。

門田初美が家を出る時の服装を見て「結婚式?葬式?」と不思議そうな顔で見ていた。

直ぐに順子に、何時何分に家を出たが、服装がコートの下が黒い背広の様に見えたと連絡をした。

連絡を受けた順子は不思議に思った。

既に両親は亡くなって久しいので、法事?そんな時期ではないと考え込む。

荷物の量から考えて、二泊か一泊だと門田は話した。

「女か?」と口走っていた。

順子はあの女とさえ寄りを戻さなければ再婚しても不問にする考えだ。

あの凛子と云う女とだけは付き合う事も許す気はなかった。

それ程18年間の恨みは強かった。



実際は8年で後の10年は関係ないのだが、順子の頭の中では18年間裏切られた!の思いが残って居る。



凛子が盛岡の駅で降りる準備に入ると、二人も急いで支度をする。

一応自分達も宿泊の準備はして居るが、基本的には宿泊はしない方が多い。

コインロッカーにキャリーバックを入れると、小さな鞄を取り出して持った。

新幹線の駅からタクシーに乗り込む凛子を同じくタクシーで尾行する二人。

見失わない様に真剣に運転手に指示をする。

しばらくして介護老人ホームにタクシーは到着する。

男は車で待つ事に成って、女の方だけが老人ホームに入って行く。

この女土屋聡子で、物怖じしない勝気な女性で危ない程近くまで探りに行く事も度々有った。

介護が必要な老人専用のホームだと土屋は園内に入って直ぐに判った。

「こちらに森田さんって方入園されていますか?」

「はい!森田さんでしたら、二階の205号室ですよ!今日は娘さんが来られていますよ」

大胆に聞く事によって土屋は現在の状況の把握が出来た。

直ぐに踵を返すとタクシーの方に戻って行った。

「ここに父親が入園している様だわ!男はここには居ないね!この後何処へ行くかだね!」

のんびりとタクシーの中で待つ二人。

外は寒いので待つ必要の無い場合は車に限る。

「雪が降って来ましたね!」運転手がフロントガラスに付く雪を見て言った。

「この後何処に行くか判りませんね!乗って来たタクシーも待って居ますから、多分駅に戻ると思いますよ!」

「父親の見舞いにしては、黒いワンピースは変だな!」

「見舞いの装いでは有りませんね」土屋の相方、小松務が不思議そうに言った。



半時間程経過して、ようやく凛子が大事そうに胸に抱いた物を持って出て来た。

園の人が凛子の鞄を持って一緒に付いて来て、タクシーの扉が開くと丁寧にお辞儀をして乗り込む凛子。

鞄を受け取ると車は雪が舞い散る中を走り始めた。

「大事そうに持って居ましたが、何でしょうね」

「馬鹿ね!あの感じと服装から考えると遺骨だよ!」

「えっ、遺骨ですか?」

「間違い無いわ、これから行くのはお寺だよ!」

「何処の寺でしょうか?」

「判らないわよ!ちょっと待って、資料を見るわ」

クリアファイルを見ていた土屋が「花巻に行くわね!」

「花巻ですか?」

「元々の住まいが花巻だから、寺もおなじでしょう?追い抜いて駅に行って貰える!」

行先が判れば尾行の必要が無いので、追い抜いて盛岡駅に向かう二人。

次の準備をする為に切符を買って、弁当を買う事にした。



改札の近くで待つ二人。

凛子が遺骨を大事そうに持って改札にやって来た。

予め切符を持って居る凛子は、駅構内に入るとコインロッカーに向かった。

キャリーバックを置いていたので、荷物の整理をして居る。

「見て!あの荷物!今夜泊まる準備をしているわ」

「泊まるのなら、その時に彼氏が来ますね!

「多分そうだと思うわ!」



その頃、花巻では吹雪に成って駅前のタクシーが無い状態に成っていた。

花巻空港で石崎のタクシーが俊三を乗せた時から吹雪が始まっていた。

「凄い雪だな!」

「これ位なら大丈夫ですよ!でもターミナルにはタクシーは有りませんよ!」

「新幹線の駅に迎えに行って貰えるか?」

「勿論ですよ!森田さんは何時に到着ですか?」

「尋ねてみる!」

しばらくして電話が終わると「半には着くらしい」

「そうですか、同じ様な時間に着きますよ」

車は新花巻駅に向かって、吹雪の中を走って行った。



新幹線の駅を出た尾行の二人は「タクシーが有りませんよ!」

「あの女は?」

「タクシーが迎えに来た様です!」乗り込む凛子の姿を遠くに見て「男だ!」と叫んだ土屋。

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