初冬

杉山 実

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温泉旅行

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      92-027

俊三と凛子は久々に旅行気分で、露天風呂に入り昔の思い出を語り合い愛し合った。



翌朝も遅い朝食を食べると「どうしても飛行機で帰るの?」甘えた凛子が尋ねる。

「明日の仕事はどうしても抜けられないのだよ!あの学長の仕事の報告も行かなければ成らない」

「小杉さんが変な事を言ったわ」

「何を言ったの?」俊三にはおおよその見当は付いていた。

「望月学長と再婚する気はないか?と聞かれたわ」

「どう答えたの?」

「悪い方ではないけれど、今お付き合いをして居る男性が居ると答えたわ!勿論貴方の事よ!」

「ありがとう、それで諦めたのか?」

「いいえ、諦め切れない様子でしたわ!でも事実でしょう?私達!」

甘えた口調で俊三に抱きつく凛子。

再び唇を重ねる凛子は、既に俊三の存在が大きく成っていた。

過去はお金の付き合い、妻帯者だったので全く考えて居なかったが、今は違う凛子。

母と子供を亡くした寂しさをぶつける所がなかった。



しばらくして、土産物を買って部屋に戻ると「貴方を空港で見送ってから帰るわ!」

「遅く成らないか?」

「大丈夫よ!夕方には東京に着くわ」

「雪沢山積もっていたけれど、飛行機も新幹線も大丈夫かな?」

「今は晴れているから大丈夫よ!多分除雪も終わって普通に飛ぶわね!」

窓から外の景色を見て言う凛子。

石崎運転手に段取りを電話で伝えると、道路も今の時間大丈夫ですと話した。



一方の二人は比較的早い時間に新幹線の新花巻駅に待機していた。

「土屋さん!全く来ませんよ!予想が外れた?」

「温泉に泊まっているから、ゆっくりしているのよ!その内来るわ」

小松は小型のカメラを持って、既に一時間待って居る。

「飛行機ではないでしょうね!」

「東京には飛んでないわよ!」

二人は時々場所を変えて、監視を続けていた。



石崎のタクシーに乗った二人は、早目に花巻空港に着いて一緒に軽食を食べていた。

「石崎さんのお陰で、雪の中もお寺にも行けました!助かりました」

俊三は二人に見送られて搭乗ゲートを入る。

空港から新花巻駅までは10分程なので、見送つてからゆっくりと新幹線には間に合う。



二人が待ちくたびれた頃、コートの襟を立ててサングラスの凛子が改札にやって来た。

「あっ,来た!」小松の声に土屋は周りを見渡す。

同伴者の男性を探していた。

ひとりの男性が走って凛子の方に来た。

「あの男!写真!写真!」と急がせる土屋。

だが写真を数枚写した後、男は凛子の傍を通り過ぎて改札に駆け込んだ。

下りの電車の到着が迫っていた様だ。

「違ったわ!でもそれらしき男性は居ないわ!」

改札を入る凛子の後に付いて行く二人。



「見込み違い?」

「旅館には必ず二人で泊まっているわよ!」

「でも男性が予約していますから、探すのは難しいですよ!」

「相手の名前が判らないわね」

結局二人は東京まで凛子の姿を見ているだけで、完璧に尾行は失敗に終わった。



自宅に帰った俊三は先日と同じ様な光景に出くわしていた。

「おい!君は誰だ!」コートの女を追ったが、路地の横の軽四に乗り込んで直ぐに発進してしまった。

運転席にも女性の姿を見たので、二人共女性だと思った。

ナンバーは暗くて確認出来なかった。

二日以上留守にすると来るのだろうか?空き巣?でも少し変な行動だと思った。

監視カメラでも付ける必要が有ると考える俊三。

でも盗む物は大した物は無いけれどな?

明日はアルバイトに早朝から行って、午後には大同印刷の本社に行く事に成っている。



翌日職場の人に土産を配って、東北旅行を羨ましく言われた。

夕方から本社の村永社長と食事の予定に成っているが、例の東京文化大学の記念事業の話に決まっている。

学長が再婚相手に考えている森田凛子は俊三の恋人だ。

その話を社長に打ち明けると、烈火の如く起こるだろ、どうすれは丸く収まるのだろう?

今現在、何の策も無いので打ち明ける訳には行かない。



村永社長は一応のお礼を俊三に言ってから「元CAの女性に求婚しているらしいな!それを小杉に取り持つ様に言われたが、彼女付き合って居る男性が居ると断った様だな!」

「小杉所長から聞かれましたか?」

「それを学長に報告したら、どんな男性だ!調べる様に言われた様だぞ!」

「そうなのですか?彼氏が居るのなら諦めなくては駄目でしょう?」

「それが学長も頑固で、相手の男の顔を見て自分より勝人物なら諦める様だ」

「森田さんに相手の男性の事を聞いたのですか?」

「それが聞けてない様だ!ところで、その森田って女性は美人か?」

「美人でしたよ!年齢より若く見えますね」

「小杉では説得出来ないかも知れんな!最悪君に説得して貰うかも知れないな!」

「学長をですか?」

「違うよ!森田さんをだよ!」

「えー~‐」飲み始めたビールを吹き出しそうに成った修三。

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