初冬

杉山 実

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決断

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 92-032
凛子は以前から小南まどかに望月学長の事は話して居た。
「凛子が再婚しないのなら、私が貰っても構わないわね!」冗談とも本気とも判らない事を話して居た。
それは凛子が俊三と再会前の事で、相談の様な感じで話して居たのだ。
その時の感触から、凛子は小南に話を持ち掛けたのだ。
雰囲気もスタイルも似ている二人は、姉妹と呼ばれて居た事も有った。
お互い髪はロングだが、小南まどかは茶系に染めて若干パーマの髪質だった。
そのまどかに食事の話をすると「見合いの様な話ね!緊張するわ!でも面白そう!上手く運べば東京文化大学学長婦人?夢の様だわね!」大いに乗り気に成っている。
丁度休暇中で来週ヨーロッパのフライト迄時間が有った。

「明日美容院に行って、私の髪型にするのよ!そうすればきっと学長は気に要るわ!まどかの方が随分若いから大丈夫」
「面白そうね!でも黒に染めても直ぐに茶に成るわよ!」
「明日で決まるわ!その後はまどかのテクニックで、例のアメリカ人の様に、、、、、」
過去にアメリカの実業家と付き合った事も有るまどか。
「凛子が学長婦人の座を蹴って好きに成った男の顔も同時に見る事が出来るのね!」
「美男子じゃないわよ!なんとなく合うだけよ!」
「何が合うの?身体?性格?」
「両方かな?だから8年も続いたのよ!」
「お惚気?ご馳走様!明日午前中には行きましょう」
「私も髪型変えるのよ!凛子が二人居たら学長迷うでしょう?」
「えー、何考えているの?」

翌日、俊三が出かける為に家を出ると、変な男性が自宅を伺っているのが見えた。
「尾行か?早朝からご苦労な話だ!」そう口走りながら無視して、国道に急ぐ。
国道に出ればタクシーを拾えるので、新神戸駅まで行く予定だ。
男は慌てて俊三を追いかけて来た。
国道に出ると直ぐにタクシーが空車で来て、飛び乗る俊三。
「変な男に尾行されています!新神戸駅までお願いします!」
「直ぐに、タクシーに乗って追いかけて来ていますよ!」
「えー、探偵の様なのです」
この時、俊三は凛子の調査ではない別の誰かが自分の行動を探っていると思った。
「誰だ?」
こんな定年退職の男の行動を調べている奴は?
大同の社長?凛子?どちらも違うな!自宅に張り込む必要無い!誰だ?
タクシーの中で色々考えるが判らない。
「掴んで下さい!信号に突っ込みます」運転手がそう言って加速して黄色の信号に突入した。
「振り切りました!」
「ありがとう!」
尾行は辛うじて逃げ切ったが、誰が尾行しているのか判らないので気味が悪い俊三。

俊三が新幹線に乗った時凛子からlineが届いた。
(今から二人で美容院に行くわね!驚くわよ)と送られて来て、続けて自分の写真が送られて来た。
凛子の真面目な姿で動画、目の前に美容院の看板が見える。
(彼女の写真じゃないのか?)
(貴方には私の写真が良いでしょう?じゃあ、行って来ます)で終わった。
小南まどかさんの写真は一度も見ていない俊三だ。
今日は一世一代の大芝居の舞台に立つ心境だ。

小杉は先日の暴力事件から意気消沈で、今日も学長に会わない事に成っている。
俊三には好都合で、会いに来れば例の話が非常に話し難い。
自分と凛子が考えた筋書き通りに話が進むか?それが一番の心配点だ。
新幹線の中で俊三は話の順序等を何度も何度も考えて、望月学長が怒らない様に話すにはどれが良いか思案六法だ。

その頃美容院では美容師に凛子が「この人の髪型を私の様に出来ますか?」
「染めてストレートパーマをすれば、取り敢えずは似た髪型には成りますが、、、、、、」
「直ぐに茶に戻るのでしょう?」
「はい!それと髪質も有りますが少し天然ですから、日持ちはしませんよ!」
「構いません!ニ三日持てば充分です!」
まどかが美容師と向こうの席に移動すると、凛子が「私も少し変えようと思います!」
「綺麗な髪ですが?どの様に?」
「少しカットを、、、、、」

しばらくしてシャンプーを終わった二人が少し離れた席に座った。
凛子は鏡を見ながら「もう忘れるからね!」と小さく口走った。
カットクロスが首に巻かれて美容師が「どの様にカットしますか?」の問いに「短くして下さい!」と答えた。
「お母さんの長い髪素敵!私もお母さんの様に長く伸ばしたいな!」鏡の向うから娘咲の声が木霊の様に聞こえる。
生き別れ状態に成っていたけれど、娘の希望で長く伸ばして居た凛子。
今、今日凛子にとっても勝負に成っていた。
「どの位にされますか?」
「判らないので様子を見ながらお願いします」としか言えない自分がそこに居た。
美容師が適当な所にハサミを持って行くと「この辺りで様子を見ますか?」
「ジョキ、ジョキ」「ジョキ、ジョキ」と長い髪が一気に短く成る。
「咲!ごめんね!」小さく口走るが、美容師には聞こえない。

しばらくしてセミロングの髪が鏡の中に現れる。
「お似合いですよ!」
それは過去との決別の証にも成る変身だった。
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