初冬

杉山 実

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変身

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  92-033

「いいえ、もっと短くしなければ彼女との差別化が出来ません!首が見える位まで切って下さい」

「凄い変身ですね!」

再び「ジョキ、ジョキ」「ジョキ、ジョキ」とどんどん短く成る凜子の髪。

美容師も驚く程の長さを切ってしまった凛子。



しばらくして!鏡の中には全く別人の様な凛子が現われていた。

「ショートボブに致しました!これなら一見誰か判りませんよ!」美容師も驚く様な姿に成ってしまった凛子。

「彼女まだまだ時間掛かるわね!私買い物に行きます!」

そう言って店を出てしまった。

床には凄い量の凛子の綺麗な髪の毛が散乱していた。



凛子は近くの店に買い物に行って、この髪型に似合う帽子を見に行った。

急に髪が少なく成って寒いので、マフラーも必要だと思っていた。

時間も有るからぶらぶらと歩きながら、ガラスに映る自分の姿に驚く。

生まれて初めてのショートだったから、驚きで見ている。



しばらくして首にマフラーを巻き付けて美容院に戻る。

「もう直ぐ終わりますよ!」店員が教えてくれた。

向こうから凛子の方に来るまどかが、目をきょろきょろさせて自分を探している様子に「まどか!」と声をかけると、一瞬固まって「何!その髪?」驚きの声を上げた。

「貴女が際立つでしょう?」

「そんな事をしなくても良いのに!彼氏知っているの?」

首を振る凜子。

「駄目だよ!怒るわよ!凛子の長い綺麗な黒髪に惚れたのでしょう?」

「それで駄目なら別れるわ」

「馬鹿ね!でも私は目立つわね!」

「本当に綺麗に成ったわ、私の髪と変わらない長さと艶が有るわ」

「まだ、時間が充分有るから、軽く昼しましょう」

二人は颯爽と冬の町に出て行った。

北風が凛子の頬を赤く染める程吹いている。

髪が短く成って、寒さが身に染みて背を丸める凛子。



その頃俊三は荷物をホテルに置いて、タクシーで東京文化大学に向かっていた。

今日の凛子には尾行は無かった。

小杉が打ち切ったからで、湯本探偵社も今日の朝まどかと合流してからは尾行を中止した。

女友達と一緒に美容院に入ったので、今日は彼氏に会う事が無いと決めていた。



「青木さん!珍しいですね!大学で会いたいとは?」

「はい!今日は学長に非常にお話し難いので、ここなら誰にも聞かれる心配は無いでしょう?」

「確かに、まあお掛け下さい」

「はい!これは神戸のお土産です!」

「お茶、コーヒー?」

「コーヒーでお願いします」

内線でコーヒーをふたつ持って来る様に言う学長。



「学長が小杉に森田凛子の彼氏を探す様に指示されて、小杉が探偵を雇いましたね」

「そうなのだが、一向に進まないのだよ!苛々するよ!」

「それで丸善印刷にも捜索する様に頼まれましたね!」

「そ、それは、、、、、すすまないからだよ」言い難そうに言う学長。

その時、ドアがノックされてコーヒーが運ばれて来た。



「丸善の雇った探偵が筋の悪い探偵社で、先日小杉が襲われて怪我をしました」

「えー、本当か?」驚く学長。

「警察に訴える事も出来たのですが、学長の名前が出ると大変な事に成りますので押さえました」

「そ、そんな事が有ったのか?申し訳ない事をした!それを言う為に極秘で来たのか?ここへ?」

「違います!森田凛子の男を伝えに来たのです!」

「えー、探偵が二社も探してまだ判らないのに、青木さんが見つけたのか?関西人で60代しか判らないのだぞ!」

「はい!でも私には判るのです!」

「何故?判ったのだ!」

俊三はコーヒーを手に取って、飲み乍ら「私だからです」と言った。

「おいおい、冗談は止めろ!怒るぞ!」

「でも学長の情報に私は当て嵌まるでしょう?」

「関西人、60代!確かに、それで私に諦めろと煙に巻くのか?判らないからか?」

「違いますよ!森田凛子さんが学長には不似合いで、奥様には向かないと申し上げたのです」

「何!怒るぞ!」

「少なくとも東京文化大学の学長の奥様には相応しくないと云う事です!」

「ど、どの様に相応しくないのだ!実家は花巻で仕事は大手航空会社のCAから、今は羽田の国際線の地上勤務が何故恥ずかしいのだ!君の話が判らない!君が凛子の彼氏って本当なのか?」

「はい、私は随分前から彼女を知っていました!この写真をご覧下さい」

テーブルに置いた凛子の若い写真は、望月学長が凛子と初めて会った時よりも若い気がした。

「凛子に頼まれたのか?私が探偵まで使って、探しているからな!」

「違いますよ!学長の奥様にこの様な方は駄目でしょう?」

今度は異なる写真を二枚並べる俊三。

手に取る望月学長の顔色が変わって、もう一枚を見た時「ほ、本当なのか?」

頷く俊三の顔を見つめる学長。

「何故?君が知っているのだ?」と苦しそうに尋ねた。

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