初冬

杉山 実

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妊娠確実

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  92-037

午後の東京文化大学での入札値段に仰天したのは丸善印刷だった。

「大同さんの値段には到底太刀打ち出来ません!完敗です」と言ったが、帰り道で丸善の須永部長が「あの価格なら2万部でも赤字に成る!大同さんは商売抜きだな!」と捨て台詞を残した。



凛子が昨夜の様子を聞こうと小南まどかに連絡すると、昨夜は行きつけのスナックに行って意気投合したと嬉しそうに話した。

そして、来週自宅に招待されたと言ったが、まどかはほいほいと行くのは安く見られると思い「凛子と二人なら行くと言ったのよ❕一緒に行って!お願い!」と頼み込んだ。

「えー、学長の自宅に招待って凄いわね!気に要られたのね!」

「でも一人で自宅に行くのは、、、、」

「いいわ!乗り掛かった舟だわ」

凛子も二人を結び付け様と手伝う事にした。



大きなお屋敷は世田谷の住宅地に在り、タクシーに乗って名前を言うと運んでくれた。

「学長の家って誰か住んでいるの?」

「お手伝いさんだけよ、気楽に来て下さい!って言われたわ」

簡単な手土産を持って家の前に着いて思わず「えー、これって豪邸よ!」

「本当だわ!まどか!この豪邸の奥様に成れるの?信じられない」

驚きの表情に成る二人。

「凛子さん!求婚されたのに断ったのは失敗だったわね」

「ここまで金持ちだとは思わなかったわ」

「定年退職のお爺ちゃんを選んだのだから、、、、、、、」

チャイムを鳴らすと「いらっしゃい!今開けますよ!」と聞きなれた学長の声が聞こえた。



「直ぐに判りましたか?」

「こんな大きなお屋敷だと直ぐに判りますよ」

玄関先に現れた学長は普段のスーツ姿ではない、リラックスな服装でとても学長には見えない。

猫を抱いていたのか服装に数本猫の毛が付いている。

それを見て凛子が「学長さん猫がお好きですか?」

「お!何故判った!」

「だって、胸に猫の毛が付いていますわ!」指さすまどか。

「そうか、君達は好きか?」

「私は犬派ですわ」凛子が言うとまどかが「私は猫かな?」と言うと喜ぶ学長。

「前回も驚いたが、本当に森田君の髪には、、、、、、」

「色々有りますからね」

「私が長い髪が好きだから、短くして逃げたのか?」

「まあ、そんな感じでしょうか?」笑いながら言う凛子。



やがて食堂に三人が行くと、既にテーブルに食事の準備がされている。

お手伝いさんが二人雇われている様で、掃除も調理も行き届いていた。

「今夜は三人ですき焼きを食べようかと準備しましたよ!」

「すき焼きですか?長い間食べて居ませんわ」

「私も一年は食べて居ませんね」

「それは良かった!神戸牛を取り寄せたのですよ!5Aの肉です」

お手伝いのひとりが牛肉を持ってやって来た。

「凄い❕霜降りですね!」

「流石は高級牛だわ!」

「早速作ります!」

「ビールを持って来てくれ」学長がグラスを持って言う。

「はい!お待たせしました!」

ビール瓶を二本テーブルに置くと、直ぐに瓶を持って「さあ、一杯!」

「じゃあ、私頂きます」グラスを差し出すまどか。

上手に注ぐ学長が「森田君は?」

「私受け付けませんので、ジュース貰えませんか?」

「どうしたのだ?いつも私より沢山飲むのに!」不思議そうに言う。

「ええ、最近受け付けないのです」

「本当か?もしかしておめでた?」

「えっ、先輩!おめでた?」

「この前も飲まなかったよな!髪切ったのは妊娠か?」

「そう言われたら、そんな気がするわ!先輩おめでたね!」

「、、、、、、、、、、彼に先に言わなければ成らないのに、二人にばれてしまったわ!」笑顔に成る凜子。

「これはめでたい!今日初めてか?」

「はい!昨日検査キットで確実と出たので、本当に今日が初めての発表です」

「勿論相手は青木さんだよな!」

「はい!」

「確か子供は三人目だったな!上の子は近くに居ないから尚更可愛いな!」

「はい、ありがとうございます」

「何かお祝いをしなくてはな!二人が喜ぶ様な物を贈ろう」

「学長!そんなに気を使って頂かなくても、、、、、、」

「いや、世話に成っているし、求婚した男だからな!」

三人は凛子の生まれ来る子供の話題をすき焼きで話が盛り上がった。



翌日、望月学長は小杉を呼んで「これは東京文化大学学長から御社の村永社長へのお願いのお手紙です。渡して貰いたい」

「改まって当社の村永への手紙ですか?」

「私からのお願いなのだ!是非叶えて頂きたい」

「判りました社長に送って置きます」



数日後、手紙を貰った村永社長は内容に驚いていた。

直ぐに俊三を呼び出して「飯でも食べ様❕」と誘った。

そのすぐ後、俊三に凛子が電話で妊娠が確実だと伝えて、決断をお願いしたいと話した。

「凛子は産みたいのだろう?」

「え、えぇ!二人の代わりに恵まれたと思ったから、、、、、、、、」すすり泣く声が聞こえた。







     
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