初冬

杉山 実

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神戸へ

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  92-043
10月2日、俊三と凛子に待望の男の子が誕生した。
「新と決めたよ!」
「青木新って名前に成るの?」
「青木家の新しい命だからね!」
嬉しそうに凛子に云う俊三。
まどかも「私も凛子さんの様に安産なら良いのだけれどね」
「私は既に二人産んでいるから安産だったけれど、まどかは初産でしょう?手術の方が痛くないから楽よ!」
「でも可愛いわね!早く欲しく成ったわ」喜びを言うまどか。
「これなら今月中には神戸に移動出来るな!」俊三も無事に生まれた子供を見て安心して言った。
「月末までには神戸に転居するわよ!」凛子も自分も子供も元気だと聞いて、今月神戸に引っ越そうと準備は殆ど終わっていた。

月末近くに荷物が運ばれて来て、門田が「いよいよ引っ越されて?」
「はい!明日子供と一緒にやって来ますので、よろしくお願いします」
俊三はご近所付き合いが始まる凛子の為に愛想良く接する。
引っ越し屋さんの車一台に纏められた荷物は、半日も要せずリホームされた家に収納された。
「今日荷物が届きましたが,本人の姿は見えません!明日来ると話して居たので、また顔を見たら連絡します」早速順子に連絡した。
「凛子って女以外なら、お好きにどうぞ!だから気にしなくて良いわよ!」
子供を産んだ事で、或る意味安心している順子なのだ。

凛子は学長夫妻に挨拶をして、翌日昼過ぎの新幹線に乗って神戸に向かった。
胸に我が子新を大事に抱いて「お父さんの家に行くのよ!」と語りかけていた。

新神戸駅に迎えに行く俊三。
改札で時計を何回見るのだと思う程何度も何度も見る。
やがて新幹線が到着して次々改札に来る人を探す俊三。
改札口でこれ程必死に乗客を見た事が無い程真剣に見ている。
「おっ、あらたーー」思わず手を振って我が子の名前を呼ぶ俊三。
傍に来た凛子が「恥ずかしいわ!大きな声で子供の名前を呼ばないでよ!」
「みんな孫を迎えに来たお爺ちゃんだと思うよ!」
「どちらでも一緒よ!恥ずかしいの!」
改札を出ると直ぐに我が子を覗き込む俊三。
「寝ているな!」
「電車の中でミルク飲んだから満腹なのよ!」
「早く家のベッドに寝かせてあげよう」
子供の様にはしゃぐ俊三を見て、これからどうなることやらと心配顔に成る。
車に乗ると既にチャオルドシートが設置されている。
「これはまだ無理よ!」笑う凛子を他所に「直ぐに必要に成る!」そう言うと車を自宅に向けて走らせるが、無茶苦茶慎重な運転の俊三。

自宅に着くと「ここが新の新しいお家だよ!」そう言いながら玄関の戸を開ける。
この時、門田は俊三が留守なので買い物に出かけて留守だった。
車を庭の車庫に入れると、急いで家の中に入る俊三。
「広いわね!東京なら考えられない広さだわ!庭も在るし、バーベキューも出来そうだわ」
「こちらがリホームしたお風呂だ!新をお風呂に入れるのに楽な様に大きくした」
「本当に大きなお風呂ね!大人が二人充分には入れるわね」
「疲れただろう?早速お風呂入るか?」
「まだ5時に成ってないわ!私の荷物は何処?」
「向こうの部屋にそのまま置いて在るよ!」
「じゃあ、少し片づけるわ」
「近所への挨拶は明日行こうか?土曜日だからみなさん家に居るだろう?」
「東京の土産送ったでしょう?」
「挨拶に持って行く菓子だよね!仏壇の間に在るよ」
「仏壇が在るの?何方の?」
「リホームの時に造ったのだよ!いずれは必要に成るからね」
「えっ、そんな事考えているの?」急に寂しく成る凜子。
俊三に抱き着いて「長生きしないと駄目よ!新の成人式迄は最低生きるのよ!」
「当然だ!」凛子の身体を抱き寄せると久々に唇を重ねる二人。
凛子も名実共に青木俊三の妻に成った実感が湧いていた。

買い物から帰った門田が俊三の家の前に来た時、笑い声が聞こえて「あっ、女の声だわ!」小さく口走ると、俊三の家の玄関に近付いた。
でもその後は大きな声が聞こえなく成った。
でも女性の声が聞こえたのは間違い無いと思った。
自宅に入ると順子に携帯メールを送って(今日、女性が来ました!まだ挨拶は有りません!)と送った。
順子から(多分、凛子ではないと思うけれど、一応どんな女が再婚相手か調べて連絡をくれる様にお願いします)と返事が届いた。

いつもは電気の点いている部屋が少ないので暗い青木家だが、今宵は二階も点灯されて明るいと思う門田。
凛子が自分の荷物を片付けるので、家中の電気を点灯させて何処に収納するかを考えていた。
二階の部屋は将来新の勉強部屋、私達の寝室は奥の6畳の間と決める凛子。
「ベッドにした方が楽よ!これから歳を重ねると布団の上げ下ろしは大変よ!」
「やはりベッドが良いか?」
「勿論!ホームセンターに見に行きましょう」
育休の休みの間に部屋を模様替えしたいと凛子は言う。

その後、新のお風呂で二人は大きなお風呂で奮闘をする。
でも楽しい二人は新の顔を見ながら、将来の事を夢見ていた。
「青木家に跡取りが生まれるとは思わなかったよ!」
その言葉は俊三に将来の夢を語らせていた。
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