初冬

杉山 実

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出産近し

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  92-042
「凛子って名前しか知らないのよ!年齢も顔も住まいも判らない!この女との再婚だけは許せないのよ!」
「凛子ね!一度青木さんにカマかけてみましょうか?」
「えっ、そんな大胆な事を?」
「反応が有れば間違い無いでしょう?」
「そりゃそうでしょうけれど、いきなり凛子って言うと警戒するわよ!」
「任せて下さい!探りを入れて見ますから、、、、、」
対岸の火事だから面白いのか?門田は積極的な行動を考えて楽しもうとしていた。
「兎に角何故リホームしたのか?まさかとは思うが、凛子とか云う女と再婚?それだけは許さないわ!」怖い顔をする。
既に入籍が終わっているとは考えても居ない順子。

数日後、頃合いを見計らって俊三が出かける時間に箒を持って道に出る初美。
「おはようございます。リホーム終わられても中々引っ越して来られませんね!」
「はい!仕事の関係で遅れて居ます」
「再婚されたとか?」
一瞬驚いた顔をした俊三が「また越して来たら挨拶に伺わせますので、、、」
お辞儀をして行き過ぎ様とした俊三に「奥様、凛子さんっておっしゃるのですね!」と背中に浴びせる。
一瞬ドキッとしたが、振り返らずに歩く俊三。
何故凛子の事を知っている?何故だ?誰かに聞いたか?保険の勧誘員が喋ったか?
先日、保険の受取人の変更をして、自分が亡くなった時の為に生命保険に新たに入った。
「あの喋りの叔母さんに言うなよな!」独り言の様に言った。
凛子の入籍と同時に保険の外交員を呼んで、受取人を凛子に変更した。
すると年齢を見て「これだけ若い奥様でしたら、残される額が大きい保険に入られた方が良いですよ!」と勧められて入ってしまった俊三。
その時の保険の外交員を疑ってしまった。
凛子の事を知っているのは保険屋位だ!困った喋りだったな!
でももう近い内に引っ越して来るので、どうせ判る事だ!としばらく歩くと忘れてしまった。

門田は早速「再婚は間違い有りませんよ!」
「何故判ったの?」
「もう直ぐ引っ越すから、挨拶に行かせますと言われましたよ!」
「じゃあ、間違い無いわね!再婚ね!」
「そうですよ!それも子供が出来た様ですよ!」
「例の赤ん坊のお風呂の話と結びつくわね!」
「再婚相手は既に妊娠しているって事で間違い無いでしょうね」
「相手の女が凛子だと判ったの?」
「それが凛子と呼びかけましたが、反応が有りませんでしたね!」
「そう、じゃあ違うのね!違うなら再婚しても構わないのよ!多分私とそれ程変わらない年齢の女だと思うのよ!凛子はね」
「そうなのですね!」
「最高に若くても50が限界でしょう?」
「ご主人幾つでした?」
「元の旦那ね!もう直ぐ66歳よ!50歳なら16も若いから、凛子は無理よ!だから今の女は若い女よ!」
勝手に決めてしまう順子、想像は怖い世界だった。
「!そんな年寄りに子供出来ませんよね!」
「だから、凛子って女の可能性は低いのよ!子供の話を聞いて或る意味安心した!でも若い女とならまだ出来るのだわ」元夫俊三の行動に呆れる順子。
「18年も19年も前なら、20歳そこそこですね!流石にそれは有りませんね」
「子供を産むなら30代の女だから、凛子ではないわね!」と自分に納得させる順子。

その凛子はまどかに自分の病院を紹介したが、医者からは39歳での初産なので帝王切開の可能性が高いと言われてショックに、、、、、、
凛子の出産は10月の初めだろうと、医者に言われて順調なら10月末には神戸に引っ越すと俊三に連絡した。
「11月には宮参りに成るな!生田神社に行くかな?」嬉しそうに言う俊三。
「宮参りは初めてよ!」
「そうなの?」
「忙しくて行く時間が無かったのよ!」
昔の自分を思い出す凛子は再び二人の子供の姿が目に浮かぶと、目頭が熱くなる。
「生まれる時には病院に行くよ!」
「急に産気づいたら無理でしょう?」
「遠すぎるな!事前に東京に行くかな?」気に成る俊三は出産の数日前から東京に行くと決めた。
「宿泊は凛子の家にしよう!」
「ワンルームマンションよ!二人で住むには狭いわ!私一人でも狭いのに、、、、、」と不満。

そんな話を学長に冗談の様に話すと「我が家に泊まりなさい!部屋は空いているからな!東京のホテルは高い!一週間程度なら良いぞ!酒の相手が見つかって楽しい」上機嫌で言う持月学長。
まどかを紹介してから一層親密に成った二人。
「同じ病院に行く妊婦仲間だ!亭主も仲良くしようじゃないか」上機嫌だ。
余程子供が産まれる事が嬉しいのか、子供の話に直ぐに進む。

夏が過ぎて9月の下旬に成ると、まどかのお腹も多少は目立ち。
凛子のお腹は既にはち切れそうに成っている。
「男の子らしいな!青木家の後継ぎだな!」
「遅い遅い後継ぎですよ!」
「今日から生まれるまでゆっくり泊まってな!今夜は早速前祝いの酒盛りだ!」
「学長のお宅はどちらですか?」
「どうやら男の様なのだ!」
「それはおめでとうございます!」
「めでたくないと思う奴もいるがな!」
娘婿の二人がどうやらそのめでたくない奴の様だが、年齢が違い過ぎるので次の世代に成ると思う俊三。

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