空蝉

杉山 実

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見合いの申し込み

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  84-07
「何が良いのかよく判らないのだけれど、気に成るのよ!一度も見合いした事無いから一度位見合いしても良いかな?思ったのよ!」
「麻結が見合いを!本当なの?どの人よ!教えて!詳しく見てみるわ!」
「内緒よ!私から申し込むのだから、断られたら恥ずかしいじゃない?」
「それでもお母さんも気に成るわ、麻結が見合いをしても良い人ってどの様な人なのか?」
「じゃあ、申し込むわね!」微笑みながら自分の部屋に駆け上がって行く麻結。
何故か足取りも軽やかに見えたのは気のせい?と思う浅子。

夜、夫が戻ると開口一番に話す浅子。
驚いたのは智光でこの十年男性を傍に寄る事を許さなかった娘が、自分から見合いを申し込む奇跡に驚きと喜びを大袈裟に身体で表現した。
手を叩いて喜ぶ智光の笑顔を浅子は目を細めて見つめていた。

夜、食事の時も饒舌で「麻結内緒にしないで教えてくれよ!」ビールを飲むと一層饒舌だ。
「内緒って余程良い男かい!」祖母も気に成るのか口を挟む。
「普通の人よ!写真を見て気に成ったから、一度会ってみようかなって位よ!まだ先方が断るかも知れないでしょう?」
「確かにそうだけれど、沢山の男性から申し込まれる麻結だから、相手の男性が断るって考えられないわね!」
「ありがとう!お婆ちゃん!」笑顔の麻結。
祖父が「もう申し込んだのか?」
「まだよ!」
「それなら、明日にしなさい!今日は仏滅だからな!明日が大安だ!」祖父が言う。
「お爺さんの話は信用します!伸一さんが交通事故の日が仏滅だったからね!」
麻結の一言で食事の場が一気に暗く成った。
「伸一君に勝るとも劣らない彼氏が出来る事を祈ろう!」智光が元気よく言ってその場を取り繕う。

翌朝、麻結はパソコンを開くと婚活サイトにログインした。
名前も住所も判らない男性に見合いの申し込みをしてから、役所に向かった。
何故か気に成る申し込みの結果。
自分は数十人を既に断っているのだが、自分から申し込むとこんなに気に成るのかと思う。
仕事が手に付かない様な気がして午後を迎えた時、携帯が鳴り響いた。
「う、梅宮ですが、お話が有ります!」
「はい!どの様な話でしょう?」
「今朝見合いの申し込みをされたでしょう?」
「はい!断られたのですか?」
「お、お母様はお相手の事は知らないとおっしゃったので、直接お電話をしましたのよ!今役所の近くに来ていますの!お話をしなければ駄目だと思いましてね!」
「申し込みに問題でも?」
「よく、読まれましたか?相手の男性の事を!」
「は、はい!」
「電話では難しいから、役所の近くのフローラって喫茶店に行きますので、半時間程出て来て下さい!」
「は、はい!課長に許可を貰って行きます!」

しばらくして麻結が喫茶店にやって来たが、梅宮は麻結が傍に来て「こんにちは!」と言う迄気が付かなかった。
先日見ていたが、近くで見て今更ながらに驚いた梅宮。
「ど、どうしたの?驚く様な地味な恰好ね!目が悪かったの?」
「実は昔ちょっとしたトラブルに成ったので、仕事場ではこの様な服装にしています!」
「制服は仕方が無いけれど、髪も化粧もマスクに眼鏡迄、、、、」
驚いて見つめている梅宮。
この姿なら職場で誰も声を掛ける男性は居ないだろうと思った。
せめて美しい黒髪だけでも、、、、、と思いながら見つめる。
「何でしょうか?」
「そうそう、貴女が申し込んだ男性の事だけれど、プロフィールをよく読んで申し込んだの?今まで申し込んでいる男性の数は、私が長年担当して初めての人数なのよ!そんな良い条件の男性には目を向けずに、選りによって貴女の選んだ男性って、、、、判っているの?」
「はい!判っていますよ!障害者の男性でしょう?」
「知っていて申し込んだの?相手が受けたら見合いに成るのよ!既にこちらからは断る事は出来ないけれどね!本当に見合いをするの?」
「ええ!気に成ったから申し込みました!」
「私もプロフィールを見ましたが、随分前からサイトに載せているので、番号が随分若いでしょう?」
「そうですね!もう直ぐ三年位ですか?」
「見合いに成ったら、今の服装とメイクで会うのはどうですか?」
「何故ですか?」驚く梅宮。
「だって、本当の姿で見合いに行けば絶対に断らないわ!貴女から断るなら別だけれど、、、」
「梅宮さんは縁談が纏まらない方が良いのですか?」
「そ、そんな事は無いけれど、吊り合わないのは良くないから、、、、」
「でも梅宮さんの意見を取り入れてみます!でも写真は出て居ますよ!」
「写真は修整した事にすれば?でも違い過ぎね!間違えて掲載されていると言えば誤魔化せるかも知れないわ!」
「詐欺って言われますよ!」
「とにかくこの縁談は吊り合いませんよ!銀行の支店長のお嬢様と定年退職した両親の息子で障害者!良い会社に勤めて居る訳でも有りませんよ!」
「杖をついているって書いて有りましたね!普通の生活には支障が無いらしいですよ!どの様な障害でしょうね!」
「それは判りませんが、前かがみの姿勢と書いていました!」
「梅宮さんでも判らないのですか?」
「先方の仲人さんに尋ねたら多分判ると思いますが、今そこまで尋ねる必要は無いと思いますね!」
「何故ですか?」
「お嬢さんが多分断られるからですわ!」
「は、そうでしょうか?」決めつけた様に言う梅宮に気分的に嫌みを感じた麻結。
「母に話しましたか?」の質問に首を振った梅宮。
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