空蝉

杉山 実

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心に刺さる

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  84-014
武史は麻結が何故恋愛も見合いも出来ないのかが?判ってしまった。
そしてしばらく沈黙の食事が続いてしまった。
「僕と見合いをされて、思われたのでしょう?身体が不住でも生きていて貰えたらと、、、、」
武史は先日麻結が思った事をズバリと言い放った。
「そ、そんな、、、、、、」
「良いのですよ!僕は気にして居ませんよ!ここに来るまでに何人の人に見られたか判りません!変な恰好の男が絶世の美人と歩いているとね!」
「、、、、、、、、、、、、」
「だって落合さんと私では不釣り合いでしょう?誰だって変な目で見ますよ!」
「私は全く気にして居ませんよ!安心して下さい!」
「私の事家族の人はご存じなのですか?」
「え、ええー勿論よ!」
「その言い方は何方も知らないのですね!最近このサイトでお見合いする女性は、家族に言わずに見合いをしてしまう様です!僕の様な場合は後で困りますよ!」
「そ、そうなのですね!」麻結は次々と武史に心の中を見られて、驚きしか無かった。
伸一との事も遠い過去だと悟られていたからだ。
しばらくして食事が終わってデザートが運ばれて来た。
「今日も一時間程度だから、時間的にお城に行くのも難しいから、ここでゆっくりして終わりましょうか?飲み物注文します!僕はコーヒーですが、落合さんは?」
「同じでお願いします!」

コーヒーを飲みながら武史が「空蝉って、蝉の抜け殻ですよね!落合さんは自分が空蝉の様だと思ったのでしょう?」
「、、、、、、、、、」急に空蝉の話を始める武史に驚きながら、話に耳を傾けた。
「長い間土の中で暮らして、土から出ると空蝉を残して羽ばたくのですよ!そして数日の間に子孫を残しているのです!抜け殻では有りませんよ!未来に羽ばたく為の手段ですよ!これからは自分が空蝉だと思わずに未来に羽ばたいて下さい!」
「、、、、、、、、、、」急に空蝉の話をする武史の言葉が、胸に突き刺さっている麻結。
身体が満足に動かず、走れずに生活している武史に何か別の勇気を貰った気がする麻結。
「あ、り、が、とう!全てお見通しですね!」思わず言った麻結。
12年間の出来事が走馬灯の様に頭の中で流れている。
「初めて良い方と話が出来ました!今日の食事は一生心に残りますわ!」
「僕も初めて美しい女性と食事が楽しめました!辛い事を思い出させてすみませんでした!明日からまた頑張って下さい!」
「今日はご馳走様でした!」
それは別れの挨拶に聞こえた。
麻結の頭の中で、明日には母達に武史さんの事が知られてしまう!そうなれば烈火の如く怒って前には進まない事は明白だった。
自慢の娘が、、、、、、

一方の武史も今日の話から、家族に反対されてこれ以上進む事は無いと悟っていた。
駅の改札前で握手をして別れた二人。
丁度一時間の短いデートは終了した。

武史は自宅に帰ると上機嫌で「お母さん!見合いの女の子写真が本来の姿だったよ!」
「あの美人さんが本当の姿なの?武史をからかっていたのだね!悪い女の子だったのね!身体が悪い武史をからかうなんて許せないわ!相談所の倉田さんに苦情を言わないとね!」
「違うのだよ!」
「あんなに綺麗な娘さんなら、彼氏のひとりやふたり居て当然でしょう?武史はからかわれただけね!」
「多分彼女随分若い時に彼氏を事故で失っているのだよ!それも遠い場所でね!あの容姿だから男が近寄って来るから、あの様な服装に化粧をしていたらしいよ!」
「えっ、でも見合いまでそんな事をしなくても良いでしょう?」
「本当は見合もしたくなかった様で、家族の要望で婚活サイトに登録した様だよ!」
「すると、断られるのを覚悟の見合い?」
「そうだよ!でも僕が交際を申し込んだから、本来の姿でやって来たって話していた」
「驚く程の美人さんだったの?あの写真のままの?」
「もっと綺麗だった!髪も黒髪で背中までのロング!目の位置に彼女の胸だから困ったよ!」
「えっ、そんなに高いの?」
「ヒール履いていたからね!」
「楽しい思いをしたわね!」
「そうだね!みんなの視線に優越感が有ったよ!」
「まあ、次の女の子をまた探さないとね!今回の様な子は二度とないだろうけれどね!」
「美人で何年も亡くなった彼氏の事を思っているって、中々居ないよ!容姿迄変えてだよー」
「本当だね!亡くなった彼氏も罪作りだね!何年位前だろう?」
「僕は十年以上前だと思うよ!堂ヶ島って話して居たから伊豆半島だよ!多分彼氏ひとりで行ったと思う」
「ひとりで堂ヶ島まで?」
「もしかして、学生で夏休みにバイクでのツーリングかも知れないね!伊豆半島結構多いらしいよ!」
「彼女29歳だろう?じゃあ高校生の時の話?」
「多分、その位前の出来事だと思うよ!」
「それからずーと彼の事を思って、あの様な姿にしているのね!それも凄い事よね!それだけ思い続けられるのが有る意味怖いわ!」
「そうだね!だから僕をからかって居たのではなかったのだよ!」
「返事は断るの?多分今回でお別れだろうけれどね!」
「僕からは断らないよ!彼女が断ると思うけれどね!家族は僕の事知らないらしいからね!」
「、、、、、、、、、、、」母には次の言葉が無かった。

麻結も自宅で浅子に「どうだったの?お付き合い続けるならお相手の事を教えて頂戴ね!」
「先方が断るかも知れないわ!」
「今回は前回とは別人の様に綺麗な麻結なのに、断らないでしょう?」
「それは判らないわよ!色々聞かれたからね!」
「何を?」
「彼氏の事とか、、、、、、、、、、、」
浅子は既に十年以上も前の事で、娘が振られる事が信じられない。
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