空蝉

杉山 実

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髪フェチ野郎

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  84-061
「大分に帰られた様だわ!家族はね、確か妹さんと弟さんが居たわ!」
住所を書いた紙を武史に見せた。
「大分県の日田なのですね!」
「その様ですね!私も九州としか聞いてないので、何処なのか知りませんでした」
「どうされるのですか?」
「行くなら遠いので三連休位しか行けませんね!」
「こちらには菩提寺は無いのですね!」
「はい!多分無いのだと思いますね!伸一のお墓の場所は聞いた事無かったわ!」
麻結は遠い昔を思い出す様に言った。
葬儀の時。両親と、妹達二人が泣く姿が麻結の脳裏に蘇っていた。
麻結はその時、既に涙が枯れて泣きたくても泣けなかった記憶だった。
武史は急に麻結が伸一の墓参りを思い付いた理由が気に成っていた。
明らかに正月以降急に変わった様に思えたのだ。
それは結婚を意識している様に思える。
相手は?自分では無い様な気がしているのだ。
それは麻生と云う見合い相手が対象の様に思っていた。

麻結も武史との結婚には大きな反対が付き纏い、中々その方向に進まない。
もうひとつの懸念は本当に母浅子が言う様に、子供を作る能力が無い可能性も有る。
ふたつの大きな難関が麻結の脳裏に有る。
武史は好きだけれど、結婚の二文字には踏み出せない原因だった。
麻生祐樹には正直何も感じない。
だが智光の会社での地位は確実に上がっている。
今後二人が結婚するとその地位は盤石な物に成るだろう!
武史が駄目なら、既に抜け殻状態に成る自分は、父の為に結婚しても、、、、

「今日はありがとうございました」
夕方魚住駅前で別れた二人。
車を降りる時「武史さん!大分まで一緒に行って貰えますか?」麻結は思い切って言った。
「いいですよ!いつでも連絡下さい!合わせます!」
「ありがとう!」
今日ずーと悩んでいた麻結は最後に成って口に出した。

武史は高速の手前で車を止めると妹睦に電話で麻結の話をした。
「お兄ちゃん!それって麻結さんがお兄ちゃんに旅行に行こうって誘ったのよ!」
「確かにそうかも知れないが、それが僕との結婚を意味するとは思わないけどな!」
「でも何かの切っ掛けに成る様に思うわよ!頑張って!」
「湊川神社に行った日から、何かが少し違っている様に思うのだよ!」
「確かにね!着物着せてくれたでしょう、あれでも凄くお金使っていると思うのよ!相手の人が着物を着て欲しいと言ってお金を出した様だけれど、、、、」
「今日も昔の彼氏の家を探しに行っただろう?何かを決断したのだと思うよ!」

翌日麻結は洋服に身を包んで、長い黒髪をストレートに伸ばして居た。
10時過ぎに自宅の前に高級車が止まって、大柄の祐樹が降りて来た。
庭に出ていた智樹「おはようございます!」と軽く会釈をしながら言うと「麻結さんは?」そう言って玄関の方を指さした。
「祖父です!孫娘がお世話に成ります!」そう言って玄関の戸を開けた。
「お客様だよ!」
「はーい」浅子の声が聞こえて、出て来ると「おはようございます!麻結さん!準備出来ましたか?」
「麻結!」
「はーい」の声と一緒に白のセーター姿の麻結が出て来ると「おおーー素晴しい!黒髪が映えますね!」
白のセーターに黒髪が本当に映えているのだが、他には目もくれずに麻結の肩に手を伸ばした。
直ぐに車の方に案内する様にしながら、既に麻結の髪を触っている。
扉を開くと「どうぞ!」乗る様にエスコートする。
すると、直ぐに運転席に乗り込んで発車した。
呆れる智樹は「何だ!あの男!私には一言も無かったぞ!」目で車を追いながら言う。
「麻結しか見えない様ですよ!それも黒髪!見合いの時も同じでしたけれど、今日の方が凄いわ!」

「麻結!今日は明石大橋を走りましょう!風に靡く黒髪の写真を写してみたい!」
第二神明道路の方に高級外車は走って行く。
昨日は軽四で今日は外車で広々、後部座席には得意のカメラケースが大きな顔をして座って居る。
この感じならまたモデルに成るのね!
麻結は膝にコートを抱えて座って居た。
車から降りると風が冷たい様で、コートを羽織る予定にしている。

車は高速道路を明石海峡大橋方面に向かった。
「僕と結婚したら、週に一度は美容院へ行って貰いますよ!今は月に一度ですか?」
「は、はい!」返事をしながら、相当な髪フェチお宅な人だと笑っていた。
兵庫県明石市と淡路島を結ぶ世界最長のつり橋で全長3,911メートル、中央支間1,991メートルで、1998年に完成し大鳴門橋を渡り四国の鳴門市までの”神戸淡路鳴門自動車道”ができました。主塔の高さは海抜297メートルで、東京スカイツリー、東京タワー、あべのハルカスに次いで大きくギネス認定もされています。日本全ての橋梁技術を集め、風速80メートルの台風やマグニチュード8.5の地震にも耐えうるよう造られました。ライトアップされたつり橋は暗い背景に映ると橋と海の姿が絶景です。

車が海峡大橋に入ると「本当はここで車を止めて撮影したいですよね!麻結さんの長い髪が風に靡くのを、、、、」
車は走行車線をゆっくりと走って、海の風を楽しんでいる様だ。
「向こうに観覧車が在るので、一層景色が良いですよ!」岩屋のサービスエリアを指さす。
こんな男お金が無ければ、意味が無い奴だと心で笑いそうに成る麻結。
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