空蝉

杉山 実

文字の大きさ
73 / 98

終わった旅行

しおりを挟む
  84-072
「行って来たぞ!」落合智光は自宅に戻った。
「お帰りなさい!ご苦労様でした!何か言われましたか?」
「まあ、泣き言は言ったよ!」
「家の恪も違う、本人は障害者‼身の程知らずも甚だしいわね!」
「まあ、麻結が優しいから今日まで付き合っていたのだと説明して来た!すると向こうの奥さんは結婚が決まらなければ、息子とずーと付き合うのですか?と詰め寄って来たよ!」
「まあ、自分達の息子が麻結に好かれていると思っているのかしら?」
「誰が見ても月とスッポンだがな!取り敢えず決着は付いた!唯、向こうが未練を持つかも知れないな!」
「本人は居なかったの?」
「夫婦だけだった!」

その頃電車の中では相変わらずラブラブの二人は、昼間の湯布院散策の話をしていた。
「あそこの占いよく当たるってネットで評判なのにね!今回は当たらないわね!」
「そうだよな!今年中にお父さんとお母さんに成るって言われた時は思わず吹き出しそうに成ったな!」
「今妊娠していても難しいわよね!」
「あの占い師、僕達を夫婦だと思ったのかな?」
「上手にこんなお守り買わされたわね!」キーホルダーの様な先に水晶玉が付いた物を目の前で振る麻結。
「でも綺麗だわ!武史の物と少し形が違うけれど、ふたつ揃えば願いが叶うって、私の成功運で武史さんが金運だと言われたわね!」
武史もポケットから出して、ふたつ並べてゆらゆらさせると夕日が反射して輝いて見えた。
「綺麗だわ!」
「本当だね!夕日に輝いているね!」
二人は自宅での出来事を知らず楽しいひと時を過ごしていた。

睦は母親から確かめる電話を貰ったが、武史に電話もメールも出来なかった。
折角楽しい旅行が全て台無しに成ってしまう様な話は出来ない。
帰ってからの対応にするのが良いと自分で決めたのだ。

やがてゆふいんの森4号は博多駅に到着、楽しい二人は荷物を纏めて下車の準備。
「新幹線の時間まで半時間程有るな!明太子買うからお爺さんにお土産!」
「えっ、またお爺さんにお土産を?」
「年寄りは博多の明太子好きですよ!昔津山のお爺さんが土産に貰って喜んでいましたよ!」
「田舎は津山ですか?」
「お爺さんはもう亡くなり、親父の兄貴も去年亡くなりました!相続が続いて従弟は頭を抱えている様です!」
「財産が有るのね!」
「お爺さんの口癖で自分は家老の末裔だと自慢していましたよ!」
「津山城の家老の末裔って由緒ありますね!」
待合室に座ると、武史は麻結を待たせて売り場に向かった。
気が利くのね!お爺さんがまた喜ぶわ!麻結は智樹の喜ぶ顔が目に浮かんだ。

定刻に新幹線のさくら570号がホームに滑り込む。
武史は電車より少し早く戻って来て「これはお爺さんに!こちらはうちの親父に買いました!」嬉しそうに袋に放り込む。
「ありがとうございます!お爺ちゃんに間違いなく渡します!両親に見つからない様にね!」そう言って舌を出す可愛い仕草の麻結。
新幹線の中でも二人は顔が触れる程近づいて、小声で何かを話して居る。
座って居る時には全く普通の人と変わらないが、立ち上がると前かがみの姿勢に成ってしまう武史。

lineで自宅に到着時刻を送る麻結。
あっさりと(気を付けて帰って来なさい!)と返信が届いた。
浅子達は既に来週の結納の事だけを考えているので、麻結が元気で伸一の事を忘れて帰ると信じ切っている。

8時52分に姫路に到着すると、荷物を持ってホームに降り立つ二人。
「武史さんタクシーで帰るよね!」
「そうだね!荷物が多いからね!」
「じゃあ、乗り場まで荷物持って行くわ!」
「遅く成るから、いいよ!」
「大丈夫よ!武史さんがタクシーに乗ったら、帰るわ!」
確かに、武史は荷物を持つと杖が使えなくなるのは事実だった。
「言葉に甘えるかな!」
両手に一杯の荷物を持って麻結はタクシー乗り場に向かった。
「筋肉付きそうだわ!」微笑みながら言う麻結。
タクシー乗り場に着くと「雨が降り出したな!」
「三日間楽しかったわ!」
「僕も最高に楽しかったよ!」
「ありがとう!またlineするわね!」
「はい!ゆっくり休んで下さいね!」
「武史さんもね!」
タクシーに荷物を積み込むと麻結は動き出すまで手を振って見送った。

帰ると開口一番「武史!本当に九州に行って来たのか?」武男が不思議そうに尋ねた。
「これ湯布院の土産!それからこれは親父が好きな博多の明太子だよ!」
土産を見ながら「湯布院から博多に確かに行ったのだな!」
「あのー」久代が言おうとした時「兎に角疲れただろう?先にお風呂に入って来なさい!」武男は今云うのは酷だと、久代を止めた。
「そうだな!こんなに遠くまで行ったのは始めただよ!疲れたよ!」
今まで気持ちが張り詰めていたので、自宅に帰ると急に疲れが吹き出した武史。
「少し落ち着いてから話そう!」武男は風呂から上がってから、話す事にした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。 「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…

清掃員と僕の密やかな情状

MisakiNonagase
恋愛
都心のオフィスビルで働く会社員の26歳・高城蓮(たかぎれん)。彼の無機質な日常に唯一の彩りを与えていたのは、夕方から現れる70歳の清掃員・山科和子だった。 青い作業服に身を包み、黙々と床を磨く彼女を、蓮は「気さくなおばあちゃん」だと思っていた。あの日、立ち飲み屋で私服姿の彼女と再会するまでは――。 肉じゃがの甘い湯気、溶けゆく氷の音、そして重ねた肌の温もり。 44歳の年齢差を超え、孤独を分かち合った二人が辿り着いた「愛の形」とは。これは、一人の青年が境界線の向こう側で教わった、残酷なまでに美しい人生の記録。

屋上の合鍵

守 秀斗
恋愛
夫と家庭内離婚状態の進藤理央。二十五才。ある日、満たされない肉体を職場のビルの地下倉庫で慰めていると、それを同僚の鈴木哲也に見られてしまうのだが……。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

処理中です...