空蝉

杉山 実

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結婚

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  84-096
「落合さんは最後まで抵抗されたのですが、我々が無理矢理麻酔で眠らせたのです!このお二人が危機一髪で助けて下さったのですよ!」
「ありがとうございます!何とお礼を言ったら良いのか言葉が見つかりません!ありがとうございました!」
武史は小さな体を一層小さくして、由紀子と静子に深々と頭を下げた。
「早く麻結さんの所に、、、」
「はい!」
「気が付いたら、気を落として大変だと思いますので、、、、、」

一時間後、麻生久美子は大阪府警の刑事に自宅に来られて、大慌てで応対したが連行されてしまった。
「文句が有るなら、明石警察署でどうぞ!」
「何故、明石なのよ!」
「我々は明石までお送りするだけですよ!息子さんも明石の警察にいらっしゃいますよ!」
「何故祐樹が?」
「一緒に病院に行った児玉紹子さんの住所と電話番号も教えて頂きたい!」
久美子は児玉紹子の話が警察から出たので、苦虫を潰した様な顔に成った。
祐樹が警察で喋ってしまったので、知っていたのだ。
祐樹は由紀子と静子に交通事故に見せかけて武史を大怪我させる予定だったが、完全に裏切られていたのだ。

武史は麻結の寝顔をずーと眺めて、時々ハンカチで汗を拭き取っていた。
「いやーーーころさないでーー」急に麻結が口走った。
「麻結!大丈夫か?」
「いや―いやー殺しちゃ駄目!」
「麻結!大丈夫だよ!子供は無事だよ!」囁く様に耳元で言う武史。
しばらくして、ゆっくりと目を開く麻結は武史の顔に気が付いた。
「ごめんなさい!ゆるしてー」右手で武史の腕を握りしめて詫びる。
「大丈夫だよ!子供は助かった!あの二人が助けて下さったのだよ!」
「気が付いたの?」向こうから駆け寄る由紀子と静子。
「えっ、貴女達が助けて下さったの?」
「無事で良かったわ!元気な赤ん坊を産んでね!」
「あ、ありがとうございます!度々助けて頂いてお礼の言葉も有りません!」
「大森さん!落合さんを少しお借りしても宜しいでしょうか?」刑事は気が付いた麻結の傍に来た。
ゆっくり起き上がる麻結。
「私にはよく判りませんが?」
「麻生の母親が、小南先生を騙して貴女のお腹の子供を始末しようとしたのです!」
「えー、麻生の母親が私達の子供を狙ったのですか?」驚き顔の麻結。
「最初は大森さんを狙ったらしいのですが、母親が落合さんの子供に狙いを変えた様です」
「恐ろしい人達ですね!」怒る様に言う。
「麻生の実の兄が大阪で医師会の重鎮で、小南先生の先輩の様です」
「それで、騙されて、、、、、、、もう少しで子供が、、、、、、」涙ぐむ麻結。
「他にも何かあの二人に?」
「はい!この頭も、、、、、、」そう言って鬘を外した。
「何ですか?坊主にされたのですか?」
「婚約から逃れる為に自分から散髪屋に行きました!」
「元の彼女の頭はこれです!」武史がスマホの写真を刑事に見せた。
「凄いですね!あの親子は鬼ですね!」呆れる刑事。
麻結が鬘を元に戻して「他に何か?もしなければ帰らせて下さい!疲れました!」麻酔の影響で身体が怠い麻結。

武史の車に乗ると「少し休みたいわ!」
「自宅に急ごう!」
「違うの!武史と少し一緒に居たいの!」甘える様に言う麻結。
車は途中のラブホテルに吸い込まれる様に入って行った。
「病院の匂いがするわ!」
悪夢を忘れたい麻結は、今は武史の胸に飛び込みたい気分だった。

夜9時過ぎに自宅迄送って貰って「今日はありがとう!」
「子供が無事で良かった!明日はゆっくり休んでね!」
そう言うと頬にキスをして車を降りた麻結。
「朝から何処に行っていたの?大森さんと?」浅子が尋ねた。
「そうよ!何か食べる物有る?」
「良い匂いがするわね!」
「病院の匂いでしょう?」
誤魔化す麻結だが、浅子は二人がラブホに行ったと直ぐに判っていた。
恐ろしい一日を過ごしたとは思っても居ない。

数日後、結婚式の日取りが決まって、6月第一週の日曜日に成った。
来客は少数にして、時間も短くする事で麻結の身体の負担を軽減させた。
麻生親子は悪質との警察の見解で、罪に問われる事に成った。
小南医師は騙された被害者でお咎めは無かった。
由紀子と静子は警察から賞状を貰ってご満悦。
この二人は結婚式に招待されて、最初は辞退したが麻結の再三の説得で出席に成った。

6月の結婚式では武史の両親が、嬉しさに泣き崩れて挨拶が出来ない状況だった。
身体障害者で、嫁の心配をしていたが麻結さんの様な美しい妻と同時に孫まで授かったと感無量の挨拶が途中で泣き崩れたのだ。
新婚旅行はお腹の事も有るので、近場の山陰に二人は車で向かった。

「大変だったわね!お父様!」
「本当だよ!親父があんなに泣いたのを見た事が無かったよ!余程嬉しかったのだと思うよ!それもこれも麻結のお陰だ!本当にありがとう」
「私も伸一さんを失って、誰とも結婚出来ないと決めていたのだけれどね、、、、」
「変な俺に捕まった?」
「変じゃない!とっても素敵な旦那様ですよ!」車は播但道を北上して行った。

     
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