未確認戦線:クロスバトル

影武者なのだ

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1話

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(数年後)



校庭の片隅。西日が長く影を伸ばし、夕焼け色の空が広がっていた。



 制服のスカートの上に手を添え、静かに足を揃えたまま、じっとその光景を見つめていた。



「……まだやるのかな」



 白崎莉奈は小さくつぶやく。彼女の視線の先では、天城大牙がひたすら木刀を振り続けていた。

 大牙は明るくて誰にでも優しい、まさに頼れるリーダータイプの少年だ。けれど、頑張りすぎるところがあって、いつも無理をしてしまう。それを止めるのは、大抵いつも莉奈の役目だった。



「……もう暗くなってきたよ、大牙くん」



 莉奈が遠慮がちに声をかけると、大牙は木刀を振る手を止め、振り返った。額には汗がにじみ、制服のシャツが少し汚れている。



「えっ、もうそんな時間?」



「うん。帰らないと……」



「あとちょっとだけ! もう少しで新しい型が掴めそうなんだ!」



「……さっきもそう言ってたよね?」



「うっ……!」



 莉奈の言葉に、大牙は苦笑する。確かに彼は「あとちょっと」が口癖で、結局何時間も続けることが多い。



「でもさ、こうして鍛えておかないと、いざって時に守れないだろ?」



「……うん、でも無理しないでね」



「おう!ありがとな莉奈!片づけるからちょっと待っててくれ」



仲間たちと道具を片付けながら、大牙は莉奈に話しかけた。



「待たせちまったな。寒くなかったか?」



「ううん、大丈夫。でも…無理しすぎちゃだめだよ。」



「ははっ、心配性だな。けど、ありがとう。」



そんな会話を交わしながら、二人は校門を出る。莉奈は少し不安そうな表情で大牙を見上げた。



「大牙くんって、いつも前に出てるよね。怖くないの?」



「怖いさ。でも、守りたいものがあるからな。」



その言葉に、莉奈は少し驚いたような顔をした。けれど、それ以上何も言わず、そっと微笑むだけだった。

訓練を終えた大牙と莉奈が帰路についている途中、静かな住宅街の通りを歩いていた。遠くから、不気味な唸り声が聞こえてきた。



「…なんだ、この音?」



大牙が足を止め、耳を澄ませた。その時、暗闇の向こうから一対の赤い瞳が現れた。



ガシャッ…ガシャッ…



金属を引きずるような音と共に、姿を現したのはアンノウン「犬型」。その巨大な体躯は狼のような姿をしており、口元から鋭い牙が覗いている。体全体に光る鎖のような模様が絡みついており、咆哮とともに大気を震わせた。



「おい、あれ…アンノウンだ!」



莉奈が恐怖に声を震わせる。犬型アンノウンは二人に狙いを定めると、一歩一歩近づいてきた。



「莉奈、逃げろ!こいつは俺が食い止める!」



大牙は身を前に出し、莉奈を守るように立ちはだかった。



「でも…危ないよ!大牙くん!」



犬型アンノウンは咆哮を上げると、一気に跳躍し、大牙に襲いかかった。その鋭い爪が空を裂き、大牙はギリギリで身をかわしたが、地面に倒れ込む。



「くそっ…!」



大牙はその場で懸命に莉奈を守ろうとするが、アンノウンの圧倒的な力の前に何もできなかった。しかし、その瞬間、莉奈の中に眠っていた未知の力が覚醒する。



「お願い…助けて…!」



彼女の瞳が赤く輝き、周囲の空気が歪むような異常現象が起きた。アンノウンの動きが止まり、莉奈の手のひらから放たれた光がそれを弾き飛ばした。



「…何、これ?私が…やったの?」



「莉奈…!」



大牙が驚きの声を上げる中、莉奈はその場で力を使い果たし、倒れ込む。犬型アンノウンは倒れず、怯んだだけで再び立ち上がり咆哮を上げるが、その場を離れ、暗闇の中へと消えていった。

大牙はすぐさま莉奈のもとへ駆け寄り、彼女を背負った。



アンノウンが倒れると同時に莉奈は意識を失い、大牙は彼女を背負ってその場を離れる。




莉奈を背負いながら家路についた大牙。彼女の小さな体の重みを感じるたびに、彼の胸には悔しさが募った。



「俺…何もできなかった…」



莉奈があの異常な力でアンノウンを倒した一方で、自分はただ守られるだけだった。その事実が彼の心を強く締めつける。



「もっと…もっと鍛えないと…俺は弱い…こんなんじゃ、仲間も守れねぇ…」



莉奈を家に送り届けた後、大牙は一人で夜道を歩きながら、自分に足りないものを噛みしめた。



「次は絶対…絶対に守ってみせる…」



握りしめた拳に、彼の新たな決意が宿る。まだ眠れぬ夜が続くが、大牙はその中で静かに鍛錬を誓った。



やがて、その想いが彼の未来を大きく変えることになるのだった。
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