未確認戦線:クロスバトル

影武者なのだ

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5話

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「いや~キミの体、ちょっと“特別”っぽいからさ。能力ゼロでこの反応、見たことないし。俺、ワクワクしちゃってるからね~?」



「……特別?能力ゼロ?…何のことだよ、おい…」



大牙は頭を抱え、完全に打ちのめされたような表情を浮かべる。久遠は気軽な調子で続けた。

大牙の困惑した声もどこ吹く風、久遠はあっさりと背を向け、ひらひらと手を振りながら歩き去っていった。



「じゃ、また後でね~!ゆっくり休んでて!」



「いやいやいや!おい待てよ!話が終わってねえだろ!」



大牙の叫びも虚しく、久遠はすでに姿を消していた。

大牙は手元の光る石を見つめ、深いため息をつく。



「…こんなわけのわかんねえ状況で、俺、どうすりゃいいんだよ…。」



 地獄のような検査を終え、大牙は施設の一室に案内された。

 白を基調とした静かな空間には、久遠と数名の研究員が待っていた。



「お疲れ様、大牙くん。体調はどうかな?」



「はー……まぁ、なんとか。しぬかと思ったけどな」



 大牙は椅子にドサリと腰を下ろし、ストレッチついでに天を仰ぐ。



「で、話ってのは?また何かやんのか?」



 その問いに、研究員の一人がモニターを操作し、ホログラフに数値の並んだ画面が浮かび上がる。



「……君の検査結果について、少し詳しく説明しようと思ってね」



「へ? 俺、どっか悪かったのか?」



「むしろ、逆だよ。君の身体能力の数値がね……異常なんだよ、大牙くん」



「異常……って?」



 大牙は眉をひそめ、画面を覗き込む。



「筋力、反射神経、回復力、持久力、動体視力……どれもが通常の基準をはるかに上回っている。たとえば握力」



 研究員が別のタブを開く。



「通常の高校生男子の平均は40~50kg。君は……軽く200kgを超えている」



「……マジで?」



 思わず自分の手を見下ろし、大牙は目を丸くする。



「自覚、なかったけど……そんなにかよ……」



「さらに反射神経は、オリンピッククラスのトップアスリート並み。疲労回復も、20分で筋繊維が再生を始めるというデータが出ている」



「え、それってもう人間やめてない?」



 一人――眼鏡をかけた穏やかな口調の女性研究員が、そっと別の資料を大牙の前に表示した。



「さて、ここからが本題です、大牙くん」



「……まだあるのかよ……」



「これは“先ほど、君に渡した石”についての記録です」



ホログラムに映し出されたのは、黒くいびつで不規則な形状の石。

 まさしく、タイガが手にした時に“ドクン”と脈打つように光った、あの石だった。



 「これ……光ったやつだよな?あの、ヤバそうなやつ」



 「ええ。正式名称を――《アーク・コア(ARC-CORE)》といいます」



 「……なんか急に中二感強いな」



 タイガのツッコミを無視して、研究員は説明を続けた。

 「このアーク・コアは、アンノウンを撃破した際にのみ出現する“コア結晶”です。

  撃破対象のアンノウンの“種別”、“ランク”、“エネルギー強度”によって、コアの性質と価値が決まります」



 「つまり、強いやつ倒すと、レアアイテムが出るってことか」



 「まあ、ゲーム的に言えば……そうなりますね」



 研究員が微笑む。だが、その表情の奥には、どこか張り詰めた緊張感があった。



 「通常、このアーク・コアは適性を持つ者が触れたとき、微弱に反応を示す程度です。反応しないことも多いです。

 ですが――君の場合、石自体が“鼓動するように”強く光った。これは、非常に……稀な事例です」



 「いや、なんかの冗談?」



 タイガは思わず苦笑いしたが、研究員たちは一切笑わない。

 再びホログラムが切り替わり、タイガが石を握ったときの生体データが映し出される。



 「ここをご覧ください。石が光を放つと同時に、君の体から未知のエネルギー波が発せられている」



 「は?未知って……おいおい、そういうの一番ヤバいやつじゃん」



 「……現時点では、断言できることは少ないのですが、仮に――仮にですよ。

  この反応が“アンノウンと類似した波長”であった場合……」



 研究員が言葉を濁す。

 タイガは椅子に深く座り直し、思わず背もたれを見つめながら小さく息を吐いた。



 (……まさか、俺が“アンノウン寄り”ってことか?)



 それは、自分でも信じたくない推測だった。



 「とはいえ、アーク・コアの研究はまだ進行中です。私たちにもすべては分かっていません。

 ただ――この反応を見た限り、君が“何かを秘めている”ことだけは確かです」



 「……俺、普通の高校生のはずなんだけどなぁ」



 タイガは頭を掻きながらぼやいたが、心の奥底で何かがザワリと蠢いたのを感じていた。

 「――ですが」
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