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第4話 セクターG潜入
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「へえ、ここがセクターGの本拠地ってわけか…」
大牙は興味津々であたりを見渡した。高い天井に無数のモニター、白く輝く床。どこを見ても近未来SF映画の世界そのもので、彼のテンションは無駄に高かった。
しかし。
「天城くん。ここまで来ちゃった君には残念だけど、ちょっと大事な儀式が待ってるんだよねぇ~」
いきなり背後から声をかけてきたのは、もちろん久遠。肩にポンと手を置かれ、サングラスをくいっと押し上げながら悪戯っぽく笑っていた。
「……儀式?なんだよそれ、また胡散臭いこと言い出して……」
不安げに眉をひそめる大牙に、久遠は軽く手を挙げる。
「ま、簡単なことさ。君にはセクターGの存在を知った記憶をちょちょっと消してもらうだけ」
「えぇっ!? 記憶消されんの!?」
大牙は目を見開いて久遠を睨んだが、久遠はどこ吹く風でスルーした。
「悪いねぇ。ルールだからさ~。こっちこっち」
そのまま肩を叩かれ、強引に連れて行かれる大牙。背後では莉奈が別室へ案内されていく。
「莉奈、大丈夫だ!あとで俺が迎えに行くからなーっ!」
大牙の叫びに、莉奈は小さくうなずいたが、なぜかその背中が妙に遠く感じた。
連れてこられたのは真っ白な部屋。中央には、見るからにヤバそうな椅子と、頭上の金属リング。
「ほい、これが『メモリーリセットチェア』。今日の主役のお席でーす」
久遠は椅子を指差し、プレゼン風にウインクを飛ばす。
「ふざけんな!なんで俺がそんなもんに座らなきゃいけねーんだよ!」
「だって君、一般人でしょ?記憶消さないと帰れませんよ~?」
「見なかったことにすればいいだろ!消す必要ねえだろ!?」
「ままま、落ち着いて。リクライニングもあるし、寝心地は悪くないよ♪」
「寝心地の問題じゃねぇぇぇぇぇ!!」
騒いでいる間に、金属リングが青く光りはじめる。
「準備完了っと。じゃ、リセットいきまーす☆」
「待て待て待て待て!!ほんとにやんの!?ホントに記憶なくなるのか俺!?」
「……って顔、面白いねぇ」
その瞬間、久遠の笑みがふっと消えた。
ピ、と装置を止める音が響く。
「……やっぱやめとこっか。君には、ちょっと予定変更」
「は?予定……?」
なぜか次に通されたのは、トレーニングルーム。
大牙はバイクマシンに固定され、ひたすらペダルを漕がされていた。目の前には無限に続く坂道の映像。
「おい!これただのフィットネスじゃねぇのか!?何の意味があるんだよ!」
スピーカーから久遠の軽快な声が飛ぶ。
「お~いいぞいいぞ~!そのペダル捌き、ナイスよたいちゃん!」
「たいちゃん呼びやめろ!あと説明しろって言ってんだろ!」
画面には「斜度20%」。大牙の脚は完全に悲鳴を上げていた。
「これ絶対拷問だろ!俺の何を測ってんだよ!」
「忍耐力と筋力と、れから文句を言いながらどれだけ頑張れるか、ってとこかな!」
「文句込みで測るな!」
バイクが終わったと思えば、久遠が指差したのは、大きな水槽。表面にはうっすら氷が浮いている。大牙の全身が瞬間的に拒否反応を示した。
「いや、無理無理無理無理!こんな冷たいの絶対凍死するだろ!」
久遠はにこやかに頷く。
「まぁまぁ、大丈夫。多少指が痺れる程度だよ。」
「多少!?どこ基準の多少だよ!」
強引に押し込まれる形で水槽に足を突っ込むと、大牙は思わず声を上げた。
「ぎゃぁぁぁ!冷てぇぇぇぇぇぇ!」
水面から飛び出した大牙の顔が青ざめ、歯がガタガタと鳴っている。
「何秒耐えられるかな~?記録更新したら褒めてあげるよ!」
「誰が更新するか!さっさと出させろ!」
さらに連れていかれたのは、謎のドーム型マシン。中には回転する巨大な座席があり、いかにも「宇宙訓練」的な見た目だ。
「おい、これだけはマジでやばそうだって!頼むからやめてくれ!」
「大丈夫大丈夫、ちゃんと安全装置もついてるし、途中で吐いても掃除するから安心して!」
「吐く前提で安心しろって言われても、無理だからな!?」
大牙は無理矢理座席に固定され、装置が唸りを上げて回転を始めた。
「うぉぉぉぉぉぉぉ!これジェットコースターどころじゃねぇぇぇぇぇ!」
大牙の絶叫が装置の音と混じりながら響く。
久遠はモニター越しに優雅にコーヒーを飲みながら微笑んだ。
「うん、なかなかいい悲鳴。音域的にはA+ってところかな。」
「誰が採点しろって言ったぁぁぁぁ!」
________________________________________
最終的に、大牙は椅子に崩れ落ち、魂の抜けた目で天井を見つめていた。
「はぁ…はぁ…なんで俺がこんな目に…学校行ってるはずだったのに…。いや、そもそもこれって、検査なんか?」
そんな大牙の前に、久遠がひょいっと現れた。大牙が不信感を露わにして久遠を睨むが、久遠は全く意に介さず、にっこりとした笑みを浮かべる。
「よっ、お疲れさん!さっきのは、まあ一応“精密検査”ってことで」
「検査……じゃなかったら訴えてるわ……!」
久遠はそんな大牙に、黒くいびつな石をひょいっと放る。
「はいラスト!これ持ってみて~」
「おい、これなんだよ。形も色も悪趣味だな……って、うわっ!?」
石を掴んだ瞬間、大牙の手の中でそれが淡く光を放つ。心臓の鼓動とリンクするように、ぼんやりと脈動していた。
「なんか……やばくねこれ!?爆発しないよな!?」
久遠はそれを見て、「ふーん」と意味深に頷いた。
「へぇ、なるほどね。…まあ、これでオッケー。精密検査はこれで終了。」
「はぁ!?終了って、いや待てよ!この石はなんなんだよ!?そもそもこの検査ってなんなんだよ!?」
大牙が詰め寄ろうと立ち上がりかけるが、全身の疲労に襲われて再び崩れ落ちる。久遠はそんな大牙を見て、肩をすくめた。
大牙は興味津々であたりを見渡した。高い天井に無数のモニター、白く輝く床。どこを見ても近未来SF映画の世界そのもので、彼のテンションは無駄に高かった。
しかし。
「天城くん。ここまで来ちゃった君には残念だけど、ちょっと大事な儀式が待ってるんだよねぇ~」
いきなり背後から声をかけてきたのは、もちろん久遠。肩にポンと手を置かれ、サングラスをくいっと押し上げながら悪戯っぽく笑っていた。
「……儀式?なんだよそれ、また胡散臭いこと言い出して……」
不安げに眉をひそめる大牙に、久遠は軽く手を挙げる。
「ま、簡単なことさ。君にはセクターGの存在を知った記憶をちょちょっと消してもらうだけ」
「えぇっ!? 記憶消されんの!?」
大牙は目を見開いて久遠を睨んだが、久遠はどこ吹く風でスルーした。
「悪いねぇ。ルールだからさ~。こっちこっち」
そのまま肩を叩かれ、強引に連れて行かれる大牙。背後では莉奈が別室へ案内されていく。
「莉奈、大丈夫だ!あとで俺が迎えに行くからなーっ!」
大牙の叫びに、莉奈は小さくうなずいたが、なぜかその背中が妙に遠く感じた。
連れてこられたのは真っ白な部屋。中央には、見るからにヤバそうな椅子と、頭上の金属リング。
「ほい、これが『メモリーリセットチェア』。今日の主役のお席でーす」
久遠は椅子を指差し、プレゼン風にウインクを飛ばす。
「ふざけんな!なんで俺がそんなもんに座らなきゃいけねーんだよ!」
「だって君、一般人でしょ?記憶消さないと帰れませんよ~?」
「見なかったことにすればいいだろ!消す必要ねえだろ!?」
「ままま、落ち着いて。リクライニングもあるし、寝心地は悪くないよ♪」
「寝心地の問題じゃねぇぇぇぇぇ!!」
騒いでいる間に、金属リングが青く光りはじめる。
「準備完了っと。じゃ、リセットいきまーす☆」
「待て待て待て待て!!ほんとにやんの!?ホントに記憶なくなるのか俺!?」
「……って顔、面白いねぇ」
その瞬間、久遠の笑みがふっと消えた。
ピ、と装置を止める音が響く。
「……やっぱやめとこっか。君には、ちょっと予定変更」
「は?予定……?」
なぜか次に通されたのは、トレーニングルーム。
大牙はバイクマシンに固定され、ひたすらペダルを漕がされていた。目の前には無限に続く坂道の映像。
「おい!これただのフィットネスじゃねぇのか!?何の意味があるんだよ!」
スピーカーから久遠の軽快な声が飛ぶ。
「お~いいぞいいぞ~!そのペダル捌き、ナイスよたいちゃん!」
「たいちゃん呼びやめろ!あと説明しろって言ってんだろ!」
画面には「斜度20%」。大牙の脚は完全に悲鳴を上げていた。
「これ絶対拷問だろ!俺の何を測ってんだよ!」
「忍耐力と筋力と、れから文句を言いながらどれだけ頑張れるか、ってとこかな!」
「文句込みで測るな!」
バイクが終わったと思えば、久遠が指差したのは、大きな水槽。表面にはうっすら氷が浮いている。大牙の全身が瞬間的に拒否反応を示した。
「いや、無理無理無理無理!こんな冷たいの絶対凍死するだろ!」
久遠はにこやかに頷く。
「まぁまぁ、大丈夫。多少指が痺れる程度だよ。」
「多少!?どこ基準の多少だよ!」
強引に押し込まれる形で水槽に足を突っ込むと、大牙は思わず声を上げた。
「ぎゃぁぁぁ!冷てぇぇぇぇぇぇ!」
水面から飛び出した大牙の顔が青ざめ、歯がガタガタと鳴っている。
「何秒耐えられるかな~?記録更新したら褒めてあげるよ!」
「誰が更新するか!さっさと出させろ!」
さらに連れていかれたのは、謎のドーム型マシン。中には回転する巨大な座席があり、いかにも「宇宙訓練」的な見た目だ。
「おい、これだけはマジでやばそうだって!頼むからやめてくれ!」
「大丈夫大丈夫、ちゃんと安全装置もついてるし、途中で吐いても掃除するから安心して!」
「吐く前提で安心しろって言われても、無理だからな!?」
大牙は無理矢理座席に固定され、装置が唸りを上げて回転を始めた。
「うぉぉぉぉぉぉぉ!これジェットコースターどころじゃねぇぇぇぇぇ!」
大牙の絶叫が装置の音と混じりながら響く。
久遠はモニター越しに優雅にコーヒーを飲みながら微笑んだ。
「うん、なかなかいい悲鳴。音域的にはA+ってところかな。」
「誰が採点しろって言ったぁぁぁぁ!」
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最終的に、大牙は椅子に崩れ落ち、魂の抜けた目で天井を見つめていた。
「はぁ…はぁ…なんで俺がこんな目に…学校行ってるはずだったのに…。いや、そもそもこれって、検査なんか?」
そんな大牙の前に、久遠がひょいっと現れた。大牙が不信感を露わにして久遠を睨むが、久遠は全く意に介さず、にっこりとした笑みを浮かべる。
「よっ、お疲れさん!さっきのは、まあ一応“精密検査”ってことで」
「検査……じゃなかったら訴えてるわ……!」
久遠はそんな大牙に、黒くいびつな石をひょいっと放る。
「はいラスト!これ持ってみて~」
「おい、これなんだよ。形も色も悪趣味だな……って、うわっ!?」
石を掴んだ瞬間、大牙の手の中でそれが淡く光を放つ。心臓の鼓動とリンクするように、ぼんやりと脈動していた。
「なんか……やばくねこれ!?爆発しないよな!?」
久遠はそれを見て、「ふーん」と意味深に頷いた。
「へぇ、なるほどね。…まあ、これでオッケー。精密検査はこれで終了。」
「はぁ!?終了って、いや待てよ!この石はなんなんだよ!?そもそもこの検査ってなんなんだよ!?」
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