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3話
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車は滑らかに山道を登っていく。運転手は淡々とハンドルを操り、後部座席では久遠がサングラスを指でクイッと直しながら、のんびり脚を組んでいた。
「ふー、これで巻いたかな?さすがに自転車で追ってくるのは無理だよね~」
ミラーを確認した運転手が軽く頷く。
「追跡者、確認できません。振り切りました」
「うんうん、やっぱ高校生にしてはがんばったけど、さすがにね」
そう言って久遠が口元を緩めた、その時だった。
――「おいスーツ野郎ォ!開けろこのヤロー!!」
バン!バン!バン!
とんでもない衝撃音がフロントから響いた。
「……は?」
久遠がサングラスを下げてフロントガラスを覗き込む。
その視界のど真ん中に、何かがビターッ!と張り付いている。
まるで――そう、カエルだ。
制服姿で全身を広げてボンネットに張り付きながら、タイガが顔をしかめて叫んでいた。
「フゥーッ……追いついたぜッ……!!」
「いや……マジかよ!?どこから来たの!?!?」
助手席の莉奈が驚愕の声を上げる。久遠も思わず口をあんぐり開けて、額に手を当てた。
「……あれ、カエル?いや違う、人だ……って、タイガ君かい!」
すぐに車が基地の前で停車し、自動でドアが開いた。
久遠は車の前に回り込んで、ボンネットの上に張り付いているタイガを見上げる。
「ねぇ、君どうやって来たの?」
「……坂の中腹でチャリ捨てた。足つったけど気合で走った。で、最後は跳んだ。」
「いや、カエルかよ……」
「お前に言われたくねぇよ!!」
タイガはついにボンネットから転がり落ちるように着地すると、膝に手をついてハァハァと息を切らした。
「ていうか、俺のチャリどこ行ったんだよ……後で回収しなきゃじゃん……!」
「えっ、置いてきたの!?なかなか命がけの追跡だったんだねぇ~」
久遠は愉快そうにクスクス笑いながら、手を差し出した。
「ま、せっかくだし中、見学してく?」
「……ふざけんな。連れてった莉奈を返してもらうぞ!」
「いや、別に誘拐とかじゃないんだけど……」
「信じられるかっつーの!このコートとサングラスのせいで、完全に悪役だろお前!」
「イメージで判断しないでよ~。あとコートじゃなくてジャケットだし!」
そんなアホみたいな応酬をしている間に、莉奈が車から降りてきた。
「た、タイガ!?どうしてここに……!」
「お前が変な奴に連れてかれるの、放っとけるかよ!」
その真っ直ぐな声に、莉奈は少しだけ目を見開いて、それからほんのり微笑んだ。
久遠はその様子を見て、ふっと笑う。
「いやぁ、いい関係だねぇ。青春って感じで。じゃ、見学に決定ってことで?」
「チッ……信じてねぇからな」
「了解了解。まぁ、俺がどれだけ誠実な人間か、たっぷり見せてあげるよ」
タイガはぶすっとした表情で頷きながらも、内心では――
(……こいつ、絶対只者じゃねぇ)
そう確信していた。
「よーし、交渉成立!」
久遠は満足げに微笑み、車のドアを軽快に閉める。そして、基地の中へと二人を案内し始めた。
「ふー、これで巻いたかな?さすがに自転車で追ってくるのは無理だよね~」
ミラーを確認した運転手が軽く頷く。
「追跡者、確認できません。振り切りました」
「うんうん、やっぱ高校生にしてはがんばったけど、さすがにね」
そう言って久遠が口元を緩めた、その時だった。
――「おいスーツ野郎ォ!開けろこのヤロー!!」
バン!バン!バン!
とんでもない衝撃音がフロントから響いた。
「……は?」
久遠がサングラスを下げてフロントガラスを覗き込む。
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まるで――そう、カエルだ。
制服姿で全身を広げてボンネットに張り付きながら、タイガが顔をしかめて叫んでいた。
「フゥーッ……追いついたぜッ……!!」
「いや……マジかよ!?どこから来たの!?!?」
助手席の莉奈が驚愕の声を上げる。久遠も思わず口をあんぐり開けて、額に手を当てた。
「……あれ、カエル?いや違う、人だ……って、タイガ君かい!」
すぐに車が基地の前で停車し、自動でドアが開いた。
久遠は車の前に回り込んで、ボンネットの上に張り付いているタイガを見上げる。
「ねぇ、君どうやって来たの?」
「……坂の中腹でチャリ捨てた。足つったけど気合で走った。で、最後は跳んだ。」
「いや、カエルかよ……」
「お前に言われたくねぇよ!!」
タイガはついにボンネットから転がり落ちるように着地すると、膝に手をついてハァハァと息を切らした。
「ていうか、俺のチャリどこ行ったんだよ……後で回収しなきゃじゃん……!」
「えっ、置いてきたの!?なかなか命がけの追跡だったんだねぇ~」
久遠は愉快そうにクスクス笑いながら、手を差し出した。
「ま、せっかくだし中、見学してく?」
「……ふざけんな。連れてった莉奈を返してもらうぞ!」
「いや、別に誘拐とかじゃないんだけど……」
「信じられるかっつーの!このコートとサングラスのせいで、完全に悪役だろお前!」
「イメージで判断しないでよ~。あとコートじゃなくてジャケットだし!」
そんなアホみたいな応酬をしている間に、莉奈が車から降りてきた。
「た、タイガ!?どうしてここに……!」
「お前が変な奴に連れてかれるの、放っとけるかよ!」
その真っ直ぐな声に、莉奈は少しだけ目を見開いて、それからほんのり微笑んだ。
久遠はその様子を見て、ふっと笑う。
「いやぁ、いい関係だねぇ。青春って感じで。じゃ、見学に決定ってことで?」
「チッ……信じてねぇからな」
「了解了解。まぁ、俺がどれだけ誠実な人間か、たっぷり見せてあげるよ」
タイガはぶすっとした表情で頷きながらも、内心では――
(……こいつ、絶対只者じゃねぇ)
そう確信していた。
「よーし、交渉成立!」
久遠は満足げに微笑み、車のドアを軽快に閉める。そして、基地の中へと二人を案内し始めた。
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