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第1話
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___ドサッ
居酒屋の個室、いきなり押し倒されて驚きが隠せない。
「な、何するんだよ急に…」
「先輩、俺の事覚えてないんですか?」
俺はなんでこんな事になってるんだ!?
__5時間前
大学3年生になった俺は、親の仕送りだけでは足りなくなり、塾講師のバイトを始めた。意外と給料も良くて、結構いい感じだ。
「田中ー、ちょっとこっち」
塾長の園村さんに呼ばれる。
「はい!今行きます」
園村さんの横にはチャラめのイケメンが立っていた。
誰だ…?なんだか見たことがあるような。
「新しく入った佐原くん。いろいろ教えてやってくれる?」
「よろしくお願いします、先輩。」
「よろしく、俺田中ね」
佐原…?
既視感を覚えながらも、仕事内容を次々と教えていく。
「…んー、こんなもんかな?わかんないとことかあったら遠慮なく言って」
「ありがとうございました、田中先輩。」
「もうこんな時間か。佐原、どっか飲み行く?」
これからの塾講師としての生活で、大切なのは職場での人間関係だ。早いうちに仲良くなっておいて損は無い。
「是非」
そして俺らは近くの居酒屋へ向かった。
「個室空いててよかったな」
「そうですね、何頼みます?」
先に料理やら酒やらを頼み、空腹を満たす。
「…佐原って大学生だよね?何年生なの?」
「2年生です」
勝手にタメ語使ってたから年下でよかった…。
「1個下なんだ。あと、もしかして俺ら会ったことある?なんな見たことある気がしてさ」
ネタっぽく気になっていたことをさりげなく聞いてみる。その瞬間、佐原の目の色が変わった。
「…」
__そして今に至る。
「俺の事覚えてないんですか?」
本当に誰だ!?既視感はあるものの、昔あったことがある記憶はさらさらない。
「ほ、本当に分からないんだ!気に触ったならごめん。どこで会った?」
はぁ、とため息をついて佐原は眼鏡を外す。整った顔が良く見えて、男でも惚れ惚れしそうなほどだ。
「…貴方はよく俺のことをさっちゃんと呼んでいました」
昔の記憶が頭に流れる。高校時代よく懐いてくれていたさっちゃんという後輩がいた。
…まさか
「さっちゃん…?だってさっちゃんは…」
どちらかというとカワイイ系男子だった。背が低くて童顔なのもあって、よく可愛がっていた。
「まあ確かに外見はだいぶ変わりましたね」
「嘘だろ!?本当にさっちゃんなのか?」
信じられない!あそこからここまで背が伸びるものなのか。
「…とりあえず分かったから、体退けてくれないか」
顔も体も近くてなんだか気まづい。
「分かりました。じゃあ最後に…」
チュ、と唇が重なるリップ音が聞こえる。
「は?」
「じゃ、俺はこれで。今日はありがとうございました、田中先輩」
ちゃっかり俺がトイレに行っていた間に全ての会計を済ませていた佐原は、店をすぐ出ていってしまった。
居酒屋の個室、いきなり押し倒されて驚きが隠せない。
「な、何するんだよ急に…」
「先輩、俺の事覚えてないんですか?」
俺はなんでこんな事になってるんだ!?
__5時間前
大学3年生になった俺は、親の仕送りだけでは足りなくなり、塾講師のバイトを始めた。意外と給料も良くて、結構いい感じだ。
「田中ー、ちょっとこっち」
塾長の園村さんに呼ばれる。
「はい!今行きます」
園村さんの横にはチャラめのイケメンが立っていた。
誰だ…?なんだか見たことがあるような。
「新しく入った佐原くん。いろいろ教えてやってくれる?」
「よろしくお願いします、先輩。」
「よろしく、俺田中ね」
佐原…?
既視感を覚えながらも、仕事内容を次々と教えていく。
「…んー、こんなもんかな?わかんないとことかあったら遠慮なく言って」
「ありがとうございました、田中先輩。」
「もうこんな時間か。佐原、どっか飲み行く?」
これからの塾講師としての生活で、大切なのは職場での人間関係だ。早いうちに仲良くなっておいて損は無い。
「是非」
そして俺らは近くの居酒屋へ向かった。
「個室空いててよかったな」
「そうですね、何頼みます?」
先に料理やら酒やらを頼み、空腹を満たす。
「…佐原って大学生だよね?何年生なの?」
「2年生です」
勝手にタメ語使ってたから年下でよかった…。
「1個下なんだ。あと、もしかして俺ら会ったことある?なんな見たことある気がしてさ」
ネタっぽく気になっていたことをさりげなく聞いてみる。その瞬間、佐原の目の色が変わった。
「…」
__そして今に至る。
「俺の事覚えてないんですか?」
本当に誰だ!?既視感はあるものの、昔あったことがある記憶はさらさらない。
「ほ、本当に分からないんだ!気に触ったならごめん。どこで会った?」
はぁ、とため息をついて佐原は眼鏡を外す。整った顔が良く見えて、男でも惚れ惚れしそうなほどだ。
「…貴方はよく俺のことをさっちゃんと呼んでいました」
昔の記憶が頭に流れる。高校時代よく懐いてくれていたさっちゃんという後輩がいた。
…まさか
「さっちゃん…?だってさっちゃんは…」
どちらかというとカワイイ系男子だった。背が低くて童顔なのもあって、よく可愛がっていた。
「まあ確かに外見はだいぶ変わりましたね」
「嘘だろ!?本当にさっちゃんなのか?」
信じられない!あそこからここまで背が伸びるものなのか。
「…とりあえず分かったから、体退けてくれないか」
顔も体も近くてなんだか気まづい。
「分かりました。じゃあ最後に…」
チュ、と唇が重なるリップ音が聞こえる。
「は?」
「じゃ、俺はこれで。今日はありがとうございました、田中先輩」
ちゃっかり俺がトイレに行っていた間に全ての会計を済ませていた佐原は、店をすぐ出ていってしまった。
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