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側妃となります

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筆頭公爵シュヴァリエ家の執務室にわたくしはお父様に呼ばれた。

「フェリシア、王太子殿下の側妃となることが決定した」

15歳になったからどこかしらに嫁ぐとは思ってた。それが王太子殿下だったというだけ。自分にそう言い聞かせる。

「お前の役目は分かってるな?」
「王色の子を産むことですね」

白金色の髪に金の瞳でないと王子といえど王位継承権は与えられない。王色の子を産むのは侯爵家以上であり、色持ちそれも白銀色の髪に銀の瞳は必ず王色を産むとされている。

それなのに21歳になる王太子殿下は6年前に『真実の愛』と言って当時の色持ちの婚約者と婚約破棄した。お相手は男爵令嬢で王色の子を産むことはないといってもいい。現に2人ほど子供を産んでるがどちらも男爵令嬢の色で産まれた。

現在、王色を持ってるのは前陛下、陛下、王太子殿下のみだ。このままでは王家が潰える。だけど王太子妃が男爵令嬢では侯爵家以上の令嬢が嫁ぎたがらない。

勿論、わたくしも本心を言えば嫌だ。

だけど、そんな我儘はいってられない状態でもある。

「寵を争う必要はない。お前は王色を産めばいい」
「かしこまりました」
「10日後に王宮入りだ」

随分と時間がないのね。側妃なんて重要な地位なのに。もしかしたらお父様がギリギリまで黙っていたのかもしれないわね。わたくしが嫌だと言うと思って。

本音はどうあれ貴族の娘として産まれたからには責務を全うするわ。

お父様に挨拶をして辞した。自室に戻り侍女のマーサにお茶をいれてもらう。

「マーサ、嫁ぎ先が決まったわ。王太子殿下の側妃ですって。しかも10日後よ」
「そんな……お嬢様、なんて……」

マーサが涙ぐむ。城にはマーサも連れていけない。子供の頃からわたくしの専属侍女ともお別れとなる。

本当に王族に嫁ぐなんて運がないわ。

まぁこの色で産まれてしまった時点で未来なんて決まってしまってる。次代の王色が産まれるまではスペアとして待機して、王色が産まれれば他の色持ちの家に嫁ぐしか選択肢がなかった。

色持ちは全て公爵の地位があたえられ、侯爵以下の貴族は茶髪茶目で平民は黒髪黒目となってる。

強引な手を使ってまで欲した王太子妃がいる中に嫁ぐのは気が重い。王色を産むためには情けを戴かなくてならないのだから。きっと、わたくしのことは2人の愛を裂く悪女だと思われるに違いないわ。それでも、何とかして王色を産まないといけないのよね。

子どもが出来やすい日だけでもいいから相手してもらうように交渉するしかないわね。

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