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閑話(ロレンツィテェ家side)
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執務室に顔を色を変えた執事が入ってくる。
「公爵様、大変です!」
「騒がしいな。どうしたというんだ?」
「虹色の雫が拠点を撤去しました」
シルヴェストルはこっそりとハルトに指示を出していた。
「それがどうした? 我が領には上級ダンジョンが2つもある。それを目当てに他のクランがくるであろう」
ロレンツィテェ領にいる大クランは虹色の雫だけだった。公爵は問題ないと言うが執事の顔色が晴れることはない。
「しかし、何故撤去したのか分からければ後から来たクランもいなくなってしまうかもしれません。それにいつ来るか分からないのです。その間にダンジョンからの魔物の氾濫があれば……」
上級ダンジョンからの氾濫となればSランク以上の冒険者が必要となる。だが、Sランク以上は中央にいることがほとんどだ。救援にくるまで被害が出る。執事はその事を心配してるが、公爵には伝わらなかった。
「冒険者なぞ放っておいても向こうから来る。それよりもどうやって第1王子を失脚させるかの方が大事だ」
これ以上は話を聞いてもらえないと執事は判断する。そして辞めることも視野に入れた。
レティシアの祖母が入ってくる。
「母上、何用ですか?」
「貴方に挨拶しに来たのです」
「挨拶とは?」
「わたくしは友人の領地で余生を過ごすことにしましたわ」
公爵は内心、喜んだ。何かと口うるさい母親がいなくなると。
「そうですか」
「ええ。レティシアは遠くに嫁に行ってしまいましたから、ここに残る理由もありませんの」
レティシアの名前が出て公爵の顔が歪む。
「母上はまだアレを気にしてるのですか? 母上には他に3人も孫がいるではないですか?」
「そうね。わたくしを邪険にしてる孫が3人もいるわね」
レティシアは祖母が来る度に出迎えたが、他は好きなことをしていた。それならばと祖母が孫たちに顔を見せに行っても喜ぶところか徐に嫌な顔をした。
「母上は厳しいですから仕方ないでしょう」
「まぁ! わたくしは基本的なことしか申してないわ」
心外だと伝えるが、公爵はそれが鬱陶しいのだと心の中で答える。
「母上がどこで暮らそうがお好きになさってください」
「ええ。好きにさせてもらいます」
用事は終わったと祖母は退室する。代わりに夫人が入ってくる。
「お義母様は何用でいらっしゃったのですか?」
「レティシアが遠くに嫁いだから我が領から出ていくと言いに来た」
「レティシアが嫁いたですって?」
「ふん。既に死んでいて探せなかったのだろう。きっと神の元に嫁いだと言いたかったに違いない」
祖母が既にレティシアとは会っているとは夢にも思わないだろう。
「マリーアンナの婚約が決まりそうな時なのにそれを祝うことなくレティシアなんかの話をするなんてお義母様も常識がないのね」
「全くだ。これからもっと栄華を極められるというのに。母上も耄碌してるのだろう」
夫人はマリーアンナの婚約が決まりそうになってレティシアの事で行きにくかった茶会や夜会にすすんで参加するようになり自慢をしてる。
数日後、公爵が王城で仕事をしてると国王からの呼び出しがあった。
ついに婚約が決まるのかと公爵は胸を躍らせて謁見の間へと向かう。
「公爵、ひとつ聞きたい」
「何でしょうか?」
「何故、第2王子の婚約者をレティシアではなくマリーアンナを薦めるのだ? 叔母上の話ではレティシアは思慮深く優秀だと伺ってるのだが?」
公爵は顔が引き攣りそうになるのをおさえた。
「あれは王妃には相応しくないと判断しましたので」
魔力0なんて恥ずかしくて言えない。
「ほぉ……。我は王家の色を持つレティシアのが相応しいと思うのだがな」
白銀色の髪と金の瞳は王家の色とされて、その血筋にしか現れない。
「い、いえ、アレは……」
「魔力0などと戯けたことを言うつもりはないよな?」
不敬にも公爵は国王の顔を凝視する。必死に隠してたことを何故知ってるのかと。
「我が何も知らないと思ったか? 王を侮っているのではないか?」
「め、滅相もありません」
「貴殿に1つ言っておこう。レティシアが妃であれば第2王子が王太子になる可能性はあったとな」
直接、国王とレティシアが会ったことはない。祖母の話だけでそこまで評価する理由が公爵には分からなかった。
国王はレティシアのことを聞き独自に調査をしていた。公爵令嬢であれば王妃になる可能性があるからだ。それで魔力が無限であることや人柄を知り得た。また幼い頃から教育されていてマナーは勿論のこと知識も豊富だということも。
それならば王妃教育もこなし第2王子を支え立派な王としてくれる可能性もあったと。
暗にマリーアンナでは立太子できないと言われた公爵は唇を噛み締めた。
どいつもこいつもレティシア、レティシアと魔力0の何がいいと言うんだ。
公爵はレティシアが魔力0であると、その結果を疑うことはなかった。
「公爵様、大変です!」
「騒がしいな。どうしたというんだ?」
「虹色の雫が拠点を撤去しました」
シルヴェストルはこっそりとハルトに指示を出していた。
「それがどうした? 我が領には上級ダンジョンが2つもある。それを目当てに他のクランがくるであろう」
ロレンツィテェ領にいる大クランは虹色の雫だけだった。公爵は問題ないと言うが執事の顔色が晴れることはない。
「しかし、何故撤去したのか分からければ後から来たクランもいなくなってしまうかもしれません。それにいつ来るか分からないのです。その間にダンジョンからの魔物の氾濫があれば……」
上級ダンジョンからの氾濫となればSランク以上の冒険者が必要となる。だが、Sランク以上は中央にいることがほとんどだ。救援にくるまで被害が出る。執事はその事を心配してるが、公爵には伝わらなかった。
「冒険者なぞ放っておいても向こうから来る。それよりもどうやって第1王子を失脚させるかの方が大事だ」
これ以上は話を聞いてもらえないと執事は判断する。そして辞めることも視野に入れた。
レティシアの祖母が入ってくる。
「母上、何用ですか?」
「貴方に挨拶しに来たのです」
「挨拶とは?」
「わたくしは友人の領地で余生を過ごすことにしましたわ」
公爵は内心、喜んだ。何かと口うるさい母親がいなくなると。
「そうですか」
「ええ。レティシアは遠くに嫁に行ってしまいましたから、ここに残る理由もありませんの」
レティシアの名前が出て公爵の顔が歪む。
「母上はまだアレを気にしてるのですか? 母上には他に3人も孫がいるではないですか?」
「そうね。わたくしを邪険にしてる孫が3人もいるわね」
レティシアは祖母が来る度に出迎えたが、他は好きなことをしていた。それならばと祖母が孫たちに顔を見せに行っても喜ぶところか徐に嫌な顔をした。
「母上は厳しいですから仕方ないでしょう」
「まぁ! わたくしは基本的なことしか申してないわ」
心外だと伝えるが、公爵はそれが鬱陶しいのだと心の中で答える。
「母上がどこで暮らそうがお好きになさってください」
「ええ。好きにさせてもらいます」
用事は終わったと祖母は退室する。代わりに夫人が入ってくる。
「お義母様は何用でいらっしゃったのですか?」
「レティシアが遠くに嫁いだから我が領から出ていくと言いに来た」
「レティシアが嫁いたですって?」
「ふん。既に死んでいて探せなかったのだろう。きっと神の元に嫁いだと言いたかったに違いない」
祖母が既にレティシアとは会っているとは夢にも思わないだろう。
「マリーアンナの婚約が決まりそうな時なのにそれを祝うことなくレティシアなんかの話をするなんてお義母様も常識がないのね」
「全くだ。これからもっと栄華を極められるというのに。母上も耄碌してるのだろう」
夫人はマリーアンナの婚約が決まりそうになってレティシアの事で行きにくかった茶会や夜会にすすんで参加するようになり自慢をしてる。
数日後、公爵が王城で仕事をしてると国王からの呼び出しがあった。
ついに婚約が決まるのかと公爵は胸を躍らせて謁見の間へと向かう。
「公爵、ひとつ聞きたい」
「何でしょうか?」
「何故、第2王子の婚約者をレティシアではなくマリーアンナを薦めるのだ? 叔母上の話ではレティシアは思慮深く優秀だと伺ってるのだが?」
公爵は顔が引き攣りそうになるのをおさえた。
「あれは王妃には相応しくないと判断しましたので」
魔力0なんて恥ずかしくて言えない。
「ほぉ……。我は王家の色を持つレティシアのが相応しいと思うのだがな」
白銀色の髪と金の瞳は王家の色とされて、その血筋にしか現れない。
「い、いえ、アレは……」
「魔力0などと戯けたことを言うつもりはないよな?」
不敬にも公爵は国王の顔を凝視する。必死に隠してたことを何故知ってるのかと。
「我が何も知らないと思ったか? 王を侮っているのではないか?」
「め、滅相もありません」
「貴殿に1つ言っておこう。レティシアが妃であれば第2王子が王太子になる可能性はあったとな」
直接、国王とレティシアが会ったことはない。祖母の話だけでそこまで評価する理由が公爵には分からなかった。
国王はレティシアのことを聞き独自に調査をしていた。公爵令嬢であれば王妃になる可能性があるからだ。それで魔力が無限であることや人柄を知り得た。また幼い頃から教育されていてマナーは勿論のこと知識も豊富だということも。
それならば王妃教育もこなし第2王子を支え立派な王としてくれる可能性もあったと。
暗にマリーアンナでは立太子できないと言われた公爵は唇を噛み締めた。
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