魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました

紗南

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王都に到着してクランの拠点に行く。そこで登城するために着替えた。私は薄いピンクのドレスで裾に虹色の刺繍がしてあるドレス。シルは黒の正装に金色の刺繍がしてある。ハルトさんは白の正装姿だった。他のメンバーは拠点で留守番になる。

城に着くと直ぐに王女殿下の寝室に通される。王女殿下はベッドの上で寝ていて魘されてた。頬も痩けていて、長いことふせていることがみてとれる。

「まずは僕からやるね」

ハルトさんが王女殿下のもとにいき、解呪魔法をかけた。だけど、何も起きない。

「んー……。やっぱり無理みたいだね。ティナちゃん、よろしくね」
「は、はい!」

失敗してもペナルティーはない。だけど、苦しんでる王女殿下を助けたい。

「【解呪】」

王女殿下の身体から黒いもやが出てきた。どうみても体には良くなさそうなものだ。黒いもやは王女殿下の上で渦巻いてる。

「コレ、どうしたらいいんですか?」
「呪った相手に返せばいい」
「え?返しちゃっていいんですか?」

呪った相手が今度は苦しむのでは?

「王女殿下を呪った証拠になる。気にせず返せ」

シルに言われて、えいっと呪いを返した。呪いで内蔵が傷ついてるかもしれないので治癒魔法も施す。

「んぅー……」
「王女殿下、お目覚めですか?」

侍女が王女殿下に声をかけた。王女殿下の目がゆっくりと開いていく。

「わたくしは……」
「良かったです。本当に良かったです。国王陛下と王妃殿下に報告を」

バタバタと何人かが部屋から出ていく。

「わたくしは、どうしたのですか?」
「王女殿下は呪いにかかっていたのですよ」
「呪い?」
「ええ」

侍女と王女殿下が話してると勢いよくドアが開き、国王陛下と王妃殿下と思われる方たちが入ってきた。

「シェルラリア! おお!! 目が覚めたのだな」
「具合はどう? 苦しいところはない?」
「お父様、お母様、何ともございませんわ」

起き上がった王女殿下の腕は細く見ていて痛々しい。

「誰が解呪してくれたのだ?」
「こちらにいる少女です」

私はカーテシーをして頭を下げた。

「よい。顔を上げよ」

ゆっくりと顔を上げる。王妃殿下が膝をつき私の両手を握った。

「こんなに幼いのに解呪を成功させたなんて素晴らしいわ」
「光栄の極みにございます」
「お名前はなんと言うの?」
「ティナと申します」
「本当にありがとうね」

王妃殿下にお礼を言われて恐縮してしまう。私の魔法が役に立って良かった。

「シェルラリア、どこで呪いにかかったのだ?」
「分かりません。気を無くす最後の記憶はナリー・ドルガン男爵令嬢によく分からないことを言われてるところですわ」
「男爵令嬢だと!?」
「何と言われたの?」
「あくやくれいじょうとか、ひろいんとか、すとーりーとか、本当によく分からないのです。その後に掴みかかられて胸が苦しくなったのですわ」

悪役令嬢、ヒロイン、ストーリー!?

何それ。まるで乙女ゲームのようなワードだよ。もしかしてその男爵令嬢も前世の記憶があるのかも。

「ドルガン男爵令嬢を連れて参れ!」

国王陛下の命に騎士が素早く対応する。

「長いこと何も食べてないでしょう。お腹がすいてるでしょう。食事になさい」
「そうだな。我々は一旦、出ていこう」

王女殿下とお付きの侍女を残して部屋をあとにする。私たちは応接間に通された。紅茶を出されてそれを口にする。砂糖菓子も出されたがあれは甘すぎるため遠慮した。代わりにクッキーを神通販で購入して出す。

「おお! これはザンド商会のものでは?」

国王陛下が顔を綻ばせてクッキーを召し上がった。

「ザンド商会の食事は突如美味しくなりましたからね」

王妃殿下もクッキーを食べて顔が輝く。美味しいものは食べると幸せになれるよね。
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