大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

血と操作 終

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一切、なんの減衰や弱体もされていない蹴り。
それは上を向いていた視覚外から突如放たれた。
『今代っ』
そして俺は、それを待っていた。
「──敵を貫く《聖弾》の理をここに」
『ほぉ?』
直後、白い輝きを放ち、金剣の刃が爆散。一瞬だけウィルの視界を遮る。
この瞬間を待っていた。
ウィルの蹴りを紙一重で回避、前に潜り込む。そして即座に左の指先から糸を生成。スキルの反動で複数の裂傷がある足の腿に三つ目と四つ目の糸を巻く。
「縛れッ!!」
輪が締まり、ウィルの足を血で縛る。暫くはかかるが、少なくともこれで動きは鈍るはず。
『《聖弾》をただの目くらましに使うか。やるね。レィア君、どうやって《聖弾》を発動した?』
別にそう難しいことじゃないさ。心の中でレイヴァーにそう答えながらウィルの暴れを冷静に回避する。
しっちゃかめっちゃかに手足を振り回し、周りを気にしないその攻撃は、当たる当たらないとはまた別の不安を掻き立てる。
早く止まってくれと祈りつつ、しかし回避しかやることが無いのでレイヴァーに説明を軽くしておく。
左手の紐を消した時点で既に《聖弾》の前準備、指輪で剣に触れるモーションは終わらせてた。
『詠唱は?破棄とか出来なかったろ』
魔法を生み出す剣だからな、ユーリアのアレが出来ると思ってやってみたんだ。
『アレ?』
韻を踏むってんだっけ?アレをウィルの攻撃を捌きながら。
最後の所だけは間に合わなかったけどな。
『なるほどな。いい発想だ』
「よっ」
ウィルの動きも随分悪くなってきた。膨れ上がった身体をその足が支えきれないのだろう。
ましてや両腕は既にただの棒と大差ない。それでも攻撃しようと蹴りを放つが、片足では自重を支えきれないほどなのだろう。
ついにふらりとよろけ、そのまま前のめりに倒れる。
それでもまだ動こうと足掻くのは流石か。
「やっとか」
浮遊する四つの魔法をそのままに、倒れたウィルを後ろから首を締め上げる。
当然ウィルは暴れようとするが、手足が動かない以上どうしようもない。
およそ二分程度か。血呪は解除し、鎧のみ肉体強化を反映させているが、それでようやく彼の意識が落ちたらしい。全身から力が抜け、狂化が解除されて肉体が縮み、元のサイズに戻っていく。
手足に施していた血の操作をやめるが、万が一起きても正気じゃなかったら不味いので髪で手足を縛って担ぐ。
しかしなんでまたこいつはこんな所で幻覚を見せられていたのか。
『おい今代の。奥に誰か…いや、何かいる』
「………。」
手出しする気配は。
『今の所ないな』
『殺られる前にやりな。血界を見られた可能性もある』
「………。」
いや、いい。喉も早くどうにかしたいしな。
『ダメだ。仲間がいて、そいつらに情報をバラされると厄介だ。今殺せ』
「うるせぇ。断る」
ウィルを担ぎ、柄だけの金剣を回収する。
あぁ──でも。
これぐらいはしてやるか。
ついっ、と人差し指を静かにそちらへ向けてなぞるように下ろす。
すると、今まで放置していた四種の魔法がそちらへ向けて猛突進。シャルが言っていた辺りに殺到した。
「これでいいだろ」
『………。』
ダメらしい。
──ん?
『おい今代の。なんか揺れてないか?』
「…そういや、ウィルが結構暴れてたな。あと今の衝撃も結構大きかったし…」
崩落する。その答えに行き着いたのは俺だけじゃなかったようだ。
『今代の、今すぐ出ろ。生き埋めになるぞ』
「あぁわかった。さすがにこれ以上色々すんのはゴメンだ。マキナ!足場!」
『了解・しました』
慌ただしくそうやって俺達は穴から脱出。
穴の奥に誰がいたのか、何があったのか知る前に、穴は崩落してしまった。
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