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本編
裏切り者と緋翼
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事の発端は俺が王都へ行ったその次の日。アーネは学校長から呼び出しを受け、誰かの目に触れないよう、こっそり学長室に出向いたらしい。
そこで学校長から話されたのは、裏切り者が居るらしいという事と、その裏切り者が、一年前のアーネ誘拐事件に関わっている可能性が高いという事、そして俺が探してなお見つからず、今日まで聖学に隠れているらしいという事だった。
「ん、ちょい待て。俺、学校長に裏切り者の件言った覚えねぇんだけど」
「英雄の方から聞いたそうですわよ。何方かは知らないですけれど」
ならヴァルクスだろうか。いつの間に…とは思うが、それこそ一年前の話なので、機会はいくらでもあっただろう。
「話戻しますわね」
「悪い」
で、話を一通り聞かせた後、学校長はアーネに「《緋眼騎士》が内通者である可能性も踏まえた上で、調査を行って欲しい」と言ったらしい。
「ま、だろうな」
それを聞いて、思わず苦笑する。
そらそうだ。一年以上もなんの成果もあげられていないのなら、余程俺が無能か相手が上手なのか。
そのどちらでもないなら、既にこの学校から手を引いて居ないのか、そもそも俺自身が内通者だったかだろう。
俺自身、既に内通者はいないのでは無いかと半ば諦めていたし、学校長も一人そう思っていたのかもしれない。
だが、先日の襲撃がそれを覆した。
たった一名の生徒を狙った魔族の進行。《魔王》という存在が放つ確かな存在感を、魔族という種全体が感じ、襲ってきた。そう考えることも出来る。
だが、もっとシンプルに「内通者がその居場所を魔族に流した」という考えも、ここでまたゆっくりと首を上げるのだ。
あまりにも正確すぎる襲撃。それだけで、《勇者》や《魔王》を詳しく知らない学校長には、内通者を再度疑うには十分すぎる要因となっただろう。
すると、先程の四つの可能性のうち、内通者がいないを除いた三つをまとめてクリアする方法が一つある。
単純だ。俺とは別の、信頼出来る有能な二つ名持ちに任せる。それだけだ。
そう考えた学校長が一人、絶対に安心出来る二つ名がいると思い当たったのが、アーネと言う訳だった。
座学の成績は良く、素行も問題なし。頭は回るし実力も申し分ない。加えて努力の仕方を知っている。つまりは、何か物事をやる時に、積み重ねることが出来るという事だ。
極めつけは、既に内通者らしき存在のせいで、一度攫われている被害者であるという点だった。
「それ、逆に危なくないか?」
「何がですの?」
「だってアーネ、一回攫われてんだろ?その時に洗脳とか受けてたらどうしようもねぇじゃん。しかも俺が疑い向けられてるんだから、長いこと一緒にいるお前は不味いし、例の件を助けたのも俺じゃん。むしろ二人一組でそうやってたって考える方が自然なんじゃないか?」
「同じ事を思いましたし、同じ事を聞きましたわ」
まぁそうだわな。合理性の塊であるあの学校長が、少し考えれば思い当たるような事に気づかない訳が無い。
「で、学校長はなんて?」
「『本当にそうなら、自分からそんなこと聞きませんよ』だそうですわ」
「俺みてぇなクソ適当な理屈だな……」
何かしら他に理由があるのだろうか。まぁ、はぐらかされたということは、答える気がないと言うこと。学校長は学校長なりに確信があってそう決めたのだろう。
「で、成果は?」
「詳細は言えませんけれど、ある程度は絞り込めましたわよ」
あっさりとそう言う彼女に、俺は思わず口笛を吹いて「やるぅ」と言った。
そこで学校長から話されたのは、裏切り者が居るらしいという事と、その裏切り者が、一年前のアーネ誘拐事件に関わっている可能性が高いという事、そして俺が探してなお見つからず、今日まで聖学に隠れているらしいという事だった。
「ん、ちょい待て。俺、学校長に裏切り者の件言った覚えねぇんだけど」
「英雄の方から聞いたそうですわよ。何方かは知らないですけれど」
ならヴァルクスだろうか。いつの間に…とは思うが、それこそ一年前の話なので、機会はいくらでもあっただろう。
「話戻しますわね」
「悪い」
で、話を一通り聞かせた後、学校長はアーネに「《緋眼騎士》が内通者である可能性も踏まえた上で、調査を行って欲しい」と言ったらしい。
「ま、だろうな」
それを聞いて、思わず苦笑する。
そらそうだ。一年以上もなんの成果もあげられていないのなら、余程俺が無能か相手が上手なのか。
そのどちらでもないなら、既にこの学校から手を引いて居ないのか、そもそも俺自身が内通者だったかだろう。
俺自身、既に内通者はいないのでは無いかと半ば諦めていたし、学校長も一人そう思っていたのかもしれない。
だが、先日の襲撃がそれを覆した。
たった一名の生徒を狙った魔族の進行。《魔王》という存在が放つ確かな存在感を、魔族という種全体が感じ、襲ってきた。そう考えることも出来る。
だが、もっとシンプルに「内通者がその居場所を魔族に流した」という考えも、ここでまたゆっくりと首を上げるのだ。
あまりにも正確すぎる襲撃。それだけで、《勇者》や《魔王》を詳しく知らない学校長には、内通者を再度疑うには十分すぎる要因となっただろう。
すると、先程の四つの可能性のうち、内通者がいないを除いた三つをまとめてクリアする方法が一つある。
単純だ。俺とは別の、信頼出来る有能な二つ名持ちに任せる。それだけだ。
そう考えた学校長が一人、絶対に安心出来る二つ名がいると思い当たったのが、アーネと言う訳だった。
座学の成績は良く、素行も問題なし。頭は回るし実力も申し分ない。加えて努力の仕方を知っている。つまりは、何か物事をやる時に、積み重ねることが出来るという事だ。
極めつけは、既に内通者らしき存在のせいで、一度攫われている被害者であるという点だった。
「それ、逆に危なくないか?」
「何がですの?」
「だってアーネ、一回攫われてんだろ?その時に洗脳とか受けてたらどうしようもねぇじゃん。しかも俺が疑い向けられてるんだから、長いこと一緒にいるお前は不味いし、例の件を助けたのも俺じゃん。むしろ二人一組でそうやってたって考える方が自然なんじゃないか?」
「同じ事を思いましたし、同じ事を聞きましたわ」
まぁそうだわな。合理性の塊であるあの学校長が、少し考えれば思い当たるような事に気づかない訳が無い。
「で、学校長はなんて?」
「『本当にそうなら、自分からそんなこと聞きませんよ』だそうですわ」
「俺みてぇなクソ適当な理屈だな……」
何かしら他に理由があるのだろうか。まぁ、はぐらかされたということは、答える気がないと言うこと。学校長は学校長なりに確信があってそう決めたのだろう。
「で、成果は?」
「詳細は言えませんけれど、ある程度は絞り込めましたわよ」
あっさりとそう言う彼女に、俺は思わず口笛を吹いて「やるぅ」と言った。
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