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本編
変化と夢
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昨日の夜、剣を振っていて気づいたことが二つ程ある。
一つは銀剣が既に形を微妙に変えていた事。柄の意匠が僅かに変わっており、さらに刃も僅かに変化していた。
具体的には、片方の刃が潰れておらず、尋常ではないほど鋭くなっていた。
これはどういう変化なのか…シャルに聞いても以前狭間の子の事を聞いた時のように、言葉にモヤがかかって聞き取れない。とは言え狭間の子の時ほど強い感じではなかったため、そのうち分かるだろう程度の情報だな。
次いで、銀剣は金剣と異なって簡単に抜けたという事か。
驚いた。まさか文言も戦技も必要せずにスラリと抜けるとはな。その癖俺が黒剣ではなく銀剣として扱っている時は抜けないので、便利になったと言わざるを得ない。
黒剣の方は大した変化もなく、今まで通りの形。強いていうなら、やはり柄の意匠が僅かに変わっていたことだろうか。
そんな事を思って昨晩は眠りにつき、今現在、思いっきり変な夢を見ている。
場所はどこかの研究室みたいな部屋。何を研究しているのかは全くわからない。
部屋にあるのはフラスコやビーカー、試験管などで、中に入っているのは様々な液体や固体…固体と言うより、厳密にゃこれは鉱石か?
何にせよ、そういった物が広い研究室を狭いと感じさせるほどゴチャゴチャと置かれており、いくつか置いてあるレポートや書物を取っかえ引っ変えにらめっこする研究員が二、三、四…合計六人。顔は夢のせいか靄がかかってよく見えないが、男が四人、女が二人だろうと言うのは体型で分かる。
彼らには俺の姿が見えていないようで、ついでに言うなら俺は幽霊のようなものらしい。だって机に下半身埋まってるもん。
『くそ、数値が安定しないぞ!』
『オリハルコンと霊髄液の比率がおかしいんじゃないか?』
『アダマンタイトでやってみたらどうかしら?そっちの方が耐久性と安定性が優れているわよね?』
『馬鹿、それは前にやったろ、それよりもっと根本的な問題が──』
彼らが何か議論をする中、俺はゆっくりと彼らの読んでいるものを覗いてみるが──なんだこれ。
文字が読めない。汚いから読めないとかそういうレベルじゃなくて、全く知らない言語だ。
…俺は一体何を見ている?
『やはりルーンを鉱物に刻むのは無理があるか。ルーンの制御を誰かがし続けなければすぐに不安定になってしまう。そうなれば、私達が目指すものも単なる消耗品になる…消耗品にするにはあまりに高すぎるがな』
研究者のうちの一人が持つものをのぞき込む。
手の中には短い短剣。その側面には、どこかで見たことのあるような文字が刻まれている。
それがどこで見たかを思い出す前に、短剣は元は砂で出来ていたかのように崩れて消える。
『見ろ、最高純度のオリハルコンを使った素体でもルーンの制御が出来んばかりにルーンの力が器を壊す。これでは軍に配備することも出来ん』
るーん?何だそれ。
よく分からん。もっと情報を集めなくては。
部屋を見渡し、目に付いて視線を止めたのは──俺が持っている銀剣とそっくりな形をした大剣、その設計図。
俺が持っているものとは細部が異なるが、ほとんどが同じ。
そして気づいた、俺がさっき崩れた短剣に見た文字は、銀剣の側面に刻んである例の文字──あれとそっくりだったということに。
つまり、こいつらが創ろうとしているのは銀剣?
まて、これはなんの夢だ?
『主任、なら次はすこしアプローチを変えるのは──』
夢はそこで途切れた。
唐突に、まるで誰かが強制的に止めたように。
一つは銀剣が既に形を微妙に変えていた事。柄の意匠が僅かに変わっており、さらに刃も僅かに変化していた。
具体的には、片方の刃が潰れておらず、尋常ではないほど鋭くなっていた。
これはどういう変化なのか…シャルに聞いても以前狭間の子の事を聞いた時のように、言葉にモヤがかかって聞き取れない。とは言え狭間の子の時ほど強い感じではなかったため、そのうち分かるだろう程度の情報だな。
次いで、銀剣は金剣と異なって簡単に抜けたという事か。
驚いた。まさか文言も戦技も必要せずにスラリと抜けるとはな。その癖俺が黒剣ではなく銀剣として扱っている時は抜けないので、便利になったと言わざるを得ない。
黒剣の方は大した変化もなく、今まで通りの形。強いていうなら、やはり柄の意匠が僅かに変わっていたことだろうか。
そんな事を思って昨晩は眠りにつき、今現在、思いっきり変な夢を見ている。
場所はどこかの研究室みたいな部屋。何を研究しているのかは全くわからない。
部屋にあるのはフラスコやビーカー、試験管などで、中に入っているのは様々な液体や固体…固体と言うより、厳密にゃこれは鉱石か?
何にせよ、そういった物が広い研究室を狭いと感じさせるほどゴチャゴチャと置かれており、いくつか置いてあるレポートや書物を取っかえ引っ変えにらめっこする研究員が二、三、四…合計六人。顔は夢のせいか靄がかかってよく見えないが、男が四人、女が二人だろうと言うのは体型で分かる。
彼らには俺の姿が見えていないようで、ついでに言うなら俺は幽霊のようなものらしい。だって机に下半身埋まってるもん。
『くそ、数値が安定しないぞ!』
『オリハルコンと霊髄液の比率がおかしいんじゃないか?』
『アダマンタイトでやってみたらどうかしら?そっちの方が耐久性と安定性が優れているわよね?』
『馬鹿、それは前にやったろ、それよりもっと根本的な問題が──』
彼らが何か議論をする中、俺はゆっくりと彼らの読んでいるものを覗いてみるが──なんだこれ。
文字が読めない。汚いから読めないとかそういうレベルじゃなくて、全く知らない言語だ。
…俺は一体何を見ている?
『やはりルーンを鉱物に刻むのは無理があるか。ルーンの制御を誰かがし続けなければすぐに不安定になってしまう。そうなれば、私達が目指すものも単なる消耗品になる…消耗品にするにはあまりに高すぎるがな』
研究者のうちの一人が持つものをのぞき込む。
手の中には短い短剣。その側面には、どこかで見たことのあるような文字が刻まれている。
それがどこで見たかを思い出す前に、短剣は元は砂で出来ていたかのように崩れて消える。
『見ろ、最高純度のオリハルコンを使った素体でもルーンの制御が出来んばかりにルーンの力が器を壊す。これでは軍に配備することも出来ん』
るーん?何だそれ。
よく分からん。もっと情報を集めなくては。
部屋を見渡し、目に付いて視線を止めたのは──俺が持っている銀剣とそっくりな形をした大剣、その設計図。
俺が持っているものとは細部が異なるが、ほとんどが同じ。
そして気づいた、俺がさっき崩れた短剣に見た文字は、銀剣の側面に刻んである例の文字──あれとそっくりだったということに。
つまり、こいつらが創ろうとしているのは銀剣?
まて、これはなんの夢だ?
『主任、なら次はすこしアプローチを変えるのは──』
夢はそこで途切れた。
唐突に、まるで誰かが強制的に止めたように。
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