大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

疑問と脱走

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身体がダルい、まるで身体に鉛を埋め込まれたような感覚。まぶたを上げるのでさえ億劫だ。まだ寝てたい。寝すぎて眠いってのは、多分こんなのなんだろうな。
それでも……あぁ、起きなきゃならん。
目を覚まし、あたりを見回すと………牢屋?
子供の腕ほど太い鉄格子、足を不自由にする枷と、それに繋がれた頑丈そうな鎖。周りに仲間の姿はなく、システナの姿もない。
………どこだここ。
今いる部屋の向かいに目をやってみるが、あるのは規則正しく並んだブロック状の壁。左右にも似たような牢屋がある訳でもない。どうも俺しかいないらしいな。そういや看守もいねぇや。
とりあえず身体を検査して所持品や体調をチェックしてみるが、特に変な所は…ないな。
金剣も銀剣もあるし、マキナもいる。胸の傷は塞がれていて、ちょっと貧血気味な事と髪が若干荒れ気味な事以外は問題ないな。なんで俺を捕まえときながら武器とか取らなかったのかさっぱり分からんが…普通は身包み剥いで不審なところが無いかチェックして、その後適当なボロか何か知らんが、ともかく自分の所持品とかは一切無くなるもんじゃないのか?
…ふーむ、わからん。ともかく残り時間を確認しておこう。タイマーを──
──ってちょっと待て、魔獣の首とかタイマーが入った袋はどこ行った。
あれが無いと結界の中に戻れないし、仮に戻れても進級が出来ない。
…落ち着け、まずは──
「マキナ、起きろ」
呼んでみるが反応がない。魔力が切れたか?とりあえず親指の腹を噛み、血をマキナに塗っておくがすぐには起動しない。ふむ、もう少し多めに塗っておくか。
さて、と。
「《血刃》」
範囲を最小限に絞り、人差し指を薄く覆うように展開。
とりあえず足の枷を切り落とし、身軽になってみる。血刃が絶対切断の血界だとは言え、こうもあっさり処理出来るか……産獣師は《勇者》の事を知ってるんだよな?その事に違和感しかない。
武器持たせて牢獄入りなんて尚更意味がわからん。泥棒に仕事道具持たせて牢屋に放り込む馬鹿がいるか?それと同じだと思うんだが。
まぁ、どの道血刃があるからあんまり変わらないっちゃ変わらないんだが。
牢屋も…出ちまうか。ここでうじうじしてても何も変わらねぇし。むしろ悪化するだろうし。
ビビビッ、と鉄格子を指で弾くように血刃で切り、俺がギリギリ通れるぐらいの出口を作る。
「シャル?マキナ?」
どちらもまだ返事はない。それに何となく心細さを感じながら歩き始める。
まずは…そうだな、ここがどこかを把握するところから始めるか。
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