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第3章
3 交流⑥
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不測の事態だからと言って、晃輝は戸田さんに連絡して、今夜はウチに泊まる旨を伝えた。
戸田さんから"もっと早く言えよ"というメッセージが届いたのを見て、相変わらず怖ェなと思ったが、その後に送られてきた怒ったスタンプが可愛いキャラクターものだったので、女子ってわからないと思った。
無事に戸田さんの許可が下りたので、駅前の居酒屋で改めて飲み直そうと家を出た。
くだらない話で盛り上がり、三時間くらいダラダラ飲んだ後、二人でゲラゲラ笑いながら家に帰り着いて、ふとスマホを見ると、メールが来ていた。
「優子さん!」
「おっ、来たか?」
俺は急いでメールを開いた。
"こんばんは。返事遅くなってごめんね。言うかどうかすごく迷ったんだけど、実はイベントが苦手で、クリスマスは避けたいなというのが本音です。その代わり、その前の週とかでも良ければ一日空けとくけど、どうかな?"
「なんて?」
「いや……」
これはいったいどう受け止めればいいんだ?
クリスマスは避けたい。つまりクリスマスには会いたくないという意味だ。
でも、クリスマスじゃなければ一日会ってくれるとも言っている。これは嫌われていないということ?
でもイベントが苦手って、バレンタインの時はチョコを買おうとしてくれたって言ってたのに? 苦手ならそこもスルーしたはずじゃないだろうか。
「何、良くねえ返事?」
晃輝にスマホを渡すと、
「あー、これは彼氏いるってことじゃね?」
などと即答された。
「それならいるって言ってくれたらいいじゃん? わざわざ俺と会う必要もないし……」
「イヤでもお前と会うのって、幻滅させるためじゃなかった? 彼氏のためにもお前のためにも、早々に忘れてもらおうって考えなんじゃねぇの。だってお前、しつこいし」
「しつこいじゃなくて一途な」
「だってお前聞いた? 彼氏いるかどうか」
「……結婚してないのは聞いた」
「ほらな」
晃輝は、ベッドに突っ伏した俺にスマホを投げて返し、ソファにボスンと腰を下ろした。
「聞けば? 彼氏いるのかどうか」
優子さんが嘘をつくとは思えない。
彼氏がいることを隠して俺と会う人だとも思いたくない。
だいたいそれなら彼氏も裏切っていることになるし。
きっと、聞けば"いない"と断言してくれるだろうし、イベントについても納得のいく説明をしてくれるはず。
でももし、本当に彼氏がいるとしたら……?
「……聞かない。聞いて会えなくなるより、知らないフリしてでも優子さんと会いたい」
「亮弥……」
「そんなの卑怯だってわかってるけど、でも八年も待ってようやく手に入れたチャンスだから」
言いながら心がざわざわした。優子さんは既に誰かのものかもしれない。
その不安は、この時から実に半年もの間俺の心に影を落とし続けることになるのだった。
戸田さんから"もっと早く言えよ"というメッセージが届いたのを見て、相変わらず怖ェなと思ったが、その後に送られてきた怒ったスタンプが可愛いキャラクターものだったので、女子ってわからないと思った。
無事に戸田さんの許可が下りたので、駅前の居酒屋で改めて飲み直そうと家を出た。
くだらない話で盛り上がり、三時間くらいダラダラ飲んだ後、二人でゲラゲラ笑いながら家に帰り着いて、ふとスマホを見ると、メールが来ていた。
「優子さん!」
「おっ、来たか?」
俺は急いでメールを開いた。
"こんばんは。返事遅くなってごめんね。言うかどうかすごく迷ったんだけど、実はイベントが苦手で、クリスマスは避けたいなというのが本音です。その代わり、その前の週とかでも良ければ一日空けとくけど、どうかな?"
「なんて?」
「いや……」
これはいったいどう受け止めればいいんだ?
クリスマスは避けたい。つまりクリスマスには会いたくないという意味だ。
でも、クリスマスじゃなければ一日会ってくれるとも言っている。これは嫌われていないということ?
でもイベントが苦手って、バレンタインの時はチョコを買おうとしてくれたって言ってたのに? 苦手ならそこもスルーしたはずじゃないだろうか。
「何、良くねえ返事?」
晃輝にスマホを渡すと、
「あー、これは彼氏いるってことじゃね?」
などと即答された。
「それならいるって言ってくれたらいいじゃん? わざわざ俺と会う必要もないし……」
「イヤでもお前と会うのって、幻滅させるためじゃなかった? 彼氏のためにもお前のためにも、早々に忘れてもらおうって考えなんじゃねぇの。だってお前、しつこいし」
「しつこいじゃなくて一途な」
「だってお前聞いた? 彼氏いるかどうか」
「……結婚してないのは聞いた」
「ほらな」
晃輝は、ベッドに突っ伏した俺にスマホを投げて返し、ソファにボスンと腰を下ろした。
「聞けば? 彼氏いるのかどうか」
優子さんが嘘をつくとは思えない。
彼氏がいることを隠して俺と会う人だとも思いたくない。
だいたいそれなら彼氏も裏切っていることになるし。
きっと、聞けば"いない"と断言してくれるだろうし、イベントについても納得のいく説明をしてくれるはず。
でももし、本当に彼氏がいるとしたら……?
「……聞かない。聞いて会えなくなるより、知らないフリしてでも優子さんと会いたい」
「亮弥……」
「そんなの卑怯だってわかってるけど、でも八年も待ってようやく手に入れたチャンスだから」
言いながら心がざわざわした。優子さんは既に誰かのものかもしれない。
その不安は、この時から実に半年もの間俺の心に影を落とし続けることになるのだった。
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