異世界で俺はチーター

田中 歩

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{第五十八話} 人の命は簡単に消える

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相手の攻撃をひたすら受けるのも退屈なものだ。
「はぁ...」自然とため息が出る。
とあるヒーローが「圧倒的な力ってのはつまらないものだ」と言っていたが、今はその気持ちが理解できる。
団長は剣を構えたまま、動かない...いや、動けないというべきか。
彼女は自分を早いと言っていたが、はっきり言ってそこまでもない。
たとえるならトラクターと戦闘機ぐらいの差があるがしかし、この世界の住人の中では5本の指に入るだろう。
まぁ、あくまでこの世界の住人の話だが...

「なかなかやりますね~」
「この速度について来たのはあなたのが初めてです!」
一方の彼女はとても楽しそうだがな。
焦ってない様子を見るに、まだ本気は出していないんだろう。

「そろそろ俺も反撃しようかな!」
金属音が耳から離れなくなってきたし、火花で目がチカチカしてきた。
あ~、偏頭痛になりそう...
とりあえず、彼女の攻撃を止める必要がある。
止めると言っても、自分を中心にGOSを四方に1mほど展開する程度でいい。

「おっと!」
「なかなかやるね~おじさん!」
飛びのきかわしたおかげで攻撃は終わったと思ったがどうやら逆効果だったらしい、さらに加速してこっちに突っ込んで来た。
これはまた、面倒だ。
しかし、彼女は短剣を構えたまま止まってしまった。

もしや、さっきから彼女が蹴り破ったガラス窓の外から目に見えるほどの殺気に関係があるのか?と考えているとその殺気がこちらに近づいてきた。

これは、ヤバい..
かなりヤバい...

次の瞬間、俺達4人に重力魔法がかかった。
ネラはこの程度の重力など物ともしない設計だから安心だし、俺もこの中でも立っていられる位の筋力はある。
しかし、問題は昌だ。
あいつにこの状況に耐えられる技術を教えていない。
案の定、昌の体は重力に潰されていた。

「くっ...」
あ、昌は重力魔法を対策するすべを知らないんだった。

「ネラ、重力魔法を消してくんない?」
ネラに頼めば安心。

「わかりました」
よし、これで昌の方は何とかなるだろう。

「参りましたね、結構強めにしたはずですが」
杖を持った黒いローブ姿の男がゆっくり下降してきた。
きっと、飛行魔法の類だろう。

面倒ごとがさらに増えた。
しかも、男の杖やローブと言った装備やさっきの重力魔法の威力を見るに、かなりのてだれだ。

「先ほどの矢も効果がなかったようですし...」
威力はそれほどでもなかったが、本数は尋常じゃなかった。
つまり、ヤツはそれなりのMPを持っている事になる。
しかし、正確な数値が分からない。
普通は、このメガネの機能のひとつの相手のHPとMPの数値を出すことができるのだが、ヤツのローブの装備効果でHPとMPの数値が「????」と「?」が4つ表示されている。
まぁ、かといって数値が4桁かは分からんが。

「おっと、自己紹介がまだでしたね。私の名前は「モアブル」と申します」
「ヘロン、君は自己紹介したのかい?」
ん?「モアブル」だと?どこかで聞いたことあるようなないような?
相変わらずモアブルは空中でフワフワしている。

「あ!まだでした!私の名前は「ヘロン」!よろしくね!」
「何でモアブルはここに来たの?後ろで見守っているんじゃなかったの?」
もう戦わないのか、ヘロンは短剣をしまっていた。

「どうやら、私達はとてもつもない物を敵に回してしまった見たいだからね」
「今回はいったん引こう。部が悪い」

「は~い!」
「また遊ぼうね~おじさん!」
「あと、そこの君もね!」
彼女は昌を指差した。

「そういえば、まだ君達の名前を聞いてなかったね。聞いてもいいかい?」

「俺は、京一だ」
「ネラです、以後お見知りおきを」

「そこの君の名前も教えてもえらえるかい?」

「オレは昌だ」

「ありがとう、覚えたよ。またあえる日を楽しみに待つことにしよう。そう遠くないうちにまたあえるだろうけどね」
そう言うと、彼らを青い炎が包んだ。次の瞬間、彼らの姿はティッシュを燃やしたかのように、一瞬で消えた。ちり一つ残さず。
きっとどこかにテレポートしたんだろう。なんだよ!かっこいいじゃねぇかよ!今度、試してみよう...

「昌、もう壁消していいぞ」
さすがに魔力が無限とは言え、長時間GOSを広範囲に展開するのは体力的にも集中力的にも辛い。

「おう」
そう答えた昌は息が少し荒く、汗を掻いていて疲れが表情からも読み取れる。

 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ 

いや~疲れたな。
長時間壁の状態を維持するのは骨が折れる。
それにしてもおじさんはやっぱ強いな、それに比べてオレはなんか弱いって言われちゃったからな。
つらい...

「団長、エリックさんは...」
団長の元に向かうと床に倒れたエリックを抱きかかえた団長の服には彼のものと思われる血で赤く染まっていた。

「...」
団長はうつむいていた。
オレは急いでおじさんのもとえ行くが、おじさんは首を横に振った。

「お前が考えている事は分かるが、それはこの世界の生存法則を崩す事になる」
「それに、俺は神様と約束したからな。そんな事をしたら、こんどは俺の命がろうそくの炎のように消される」
最後の希望が消えてしまった。
今日は団長ではなくエリックの命日になった。
会場はパーティーの楽しい空気が御通夜感が漂っている。

「おい、さっさとその死体を片付けろ!」
「目障りだ」
1人の貴族が放った一言がそんな空気を壊した。
苛立ちを覚え、殴りかかろうと一歩踏み出したオレをおじさんは止めた。

「やめておけ」
そう言うおじさんの目はあの貴族を睨んでいてオレよりもヤバそうだ。

「見苦しいものを見せてしまいもしわけない」
頭を下げた団長の手は硬い拳を握っていた。
頭を上げた団長は床に倒れたエリックを抱きかかえ、会場を後にした。

床の血溜りを含め、床にできた傷はおじさんが魔法でキレイに消した。

「静まれ!」
ざわつき始めた会場は王の一言で沈黙に変わった。

「今回はこのようなパーティーになってしまい、申し訳ない」
「この辺でお開きにしたいと思う」
「今日は集まってくれた事を感謝する」
王がしゃべり終わると、出口の扉が開き貴族達は帰っていき、最語に残ったのは王達を含めオレ達だけになった。
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