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{第七十七話} ほぼゼロに等しい
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オレの手から離れ、床に落ちた剣は金属音を洞窟内に響かせた。
その時、オレは自分の顔の頬の辺りを何か液体が流れた感覚がした。
自分の顔を触ると、触った手の指先にはミノタウロスのものと思われる血が付いていた。
その血はまだ暖かく、自分の指先でだんだんと冷たくなっていく血の温度をそこに写る自分の顔を見つめながら感じた。
ミノタウロスは血が流れ出す自身のわき腹を片手で押さえ立ち上がった。
まだ血が流れ出てはいるが、出血量が減ってきている。
大剣を持ち直し、ミノタウロスがこちらに近づいてくる。
しかし、オレはうつむき自分の手に付いた血を見つめ震えるばかりで、ミノタウロスが近づいてきている事に気づいていない。
「おい!昌!」
おじさんのその呼びかけで顔を上げた。
しかし、ミノタウロスは大剣を振り下ろす所で剣を拾ったり出したりして受け流す時間はもう無い。
オレは急いで左に飛んだが、右肩に当たった。
おそるおそる目を開け自分の肩を見るが、自分の肩に剣は入っていない。
それどころか、スーツにもキズ一つ付いていない。
どうやらオレは自分の肩でミノタウロスの大剣を受け止めたらしい。
ただ、衝撃は防げなかったらしく肩がものすごく痛い、何処かにぶつけたなんてレベルではない。
というか、肩が外れている。
利き腕とは反対だった事がせめてもの救いだ。
自分の下がった肩を見て、痛みを感じて攻撃を受ければ痛いと言う事も改めて実感し、それと同時にミノタウロスを倒さないと、俺が倒される事も実感した瞬間恐怖に支配された心が解きはなたれ、ついさっきまで動かなかった手足が止まった。
手足の件は誰かの助けを感じたが誰だったのだろうか。
「クソが!」
オレは利き手である左手に剣を出し、ミノタウロスの腹をめがけて突き刺した。
痛がるミノタウロスを見て、もう一本剣を出しまた腹に突き刺した。
何本も何本も、何度も何度も。
ミノタウロスは腹から大量の血を流し床に倒れた。
体中にミノタウロスの血を浴びたオレは、床に倒れたミノタウロスのなきがらをただ眺めていた。
「良くがんばったな」
おじさんはそんなオレの歩み寄り、血を被った頭に手をのせた。
そんなおじさんのお陰でオレは我を取り戻した。
「コレは、オレが倒したのか?」
「ああ」
「全部オレ一人で?」
「ああ」
ミノタウロスを見つめ、聞くオレにおじさんは優しく答えた。
「姫様は?」
「寝かしておいた、モンスターとの戦闘なんていいものじゃないからな」
「そうだな」
おじさんと話しをしていると、目の前のミノタウロスが液体化し、地面にしみこんでしまった。
液体化したのはミノタウロスの体のみで、オレが腹に突き刺した剣は地面に残っていた。
また、剣のほかに透明なクリスタルも残っており、図体が大きかったせいかクリスタルも大きく、2Lのペットボトル位のサイズがある。
軽く見た感じでは、形も良く目立ったキズも無い。
「これは高く買い取ってもらえるぞ、よかったな」
「マジか!」
クリスタルを持ち上げようとしたが、肩が脱臼しているため断念し、変わりにおじさんに持っていってもらうことに。
おじさんがクリスタルを持ち上げようとすると、曲がり角から足音が。
その足音はだんだんと大きくなっていく。
角から出てきたのは、ミノタウロスだ。
ミノタウロスとは言っても、さっきオレが倒したミノタウロスとは違い、肌の色が赤く角も立派だ。
「こいつはヤバイ。お前、付いてるな。ミノタウロス二種類と同じ日にあえるなんて」
「望んでねぇよ」
赤いミノタウロスはさっきのミノタウロスが持っていた大剣よりも大きい剣を両手に持っていた。
「ここはオレに任せな!こいつは少し厄介だ」
そういうとおじさんは「これもっとけ」とジャケットをオレに渡し、ベスト姿のおじさんはYシャツの袖をまくった。
鞘に入った刀を腰に出し、そっと刀のもち手に手を置き構える。
「光速斬り(こうそくぎり)!」
おじさんがそうつぶやくと、さっきまでミノタウロスの前に立っていたはずが、ミノタウロスの後ろに背を向け立っていた。
剣を抜く事も、ミノタウロスに切りかかる事も一切無く、おじさんはただミノタウロスの前から後ろに瞬間移動しただけに見える。
しかし次の瞬間、ミノタウロスの体中に線が走り、そこから血が噴き出した。
そして、大量出血したミノタウロスは自身の血で出来た血溜まりに倒れた。
「ふ~」
おじさんは一息つくと、まくった袖を戻しオレからジャケットを受け取った。
さっきのミノタウロス同様に体はドロドロとした液体になり地面にしみこんでいった。
赤いミノタウロスからは、赤いクリスタルが出てきて大きさも一升瓶ほどある。
おじさんは両手に赤と透明なクリスタルを持ち上げた。
姫様の所に行くと、姫様は壁にもたれかかり足を伸ばして寝ていた。
長座体前屈でも今からするのかな?
そんな姫様の肩の上でミイが座ったまま寝ている。
「おじさん、ヤバい。写真撮ってこの状況を永久保存したい」
「わかりみが深い」
結局オレとおじさんは二人を起こすことが出来ず、ただただ眺めていた。
しばらくすると、ミイが目を覚ました。
「マスター...」
目をこすりながらあくびをしつつ立ち上がった。
「ミノタウロスはオレが倒したから」
「おめでとうございます!」
オレ達の話し声が聞こえたのか、姫様が起きた。
「あ、昌様...ミノタウロスは...」
「オレが倒しますた」
「私は倒せるって信じてました」
「期待に答えられてよかったよ」
地面に座った姫様の手を引き、立たせて皆でダンジョンの出口に。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ダンジョンの出口への道中の雑談
おじさんの横に並んで赤いクリスタルを指差し、聞いた。
「この赤いのはどれ位で買い取ってもらえるんだ?」
「なかなか大きいし形もいい、状態も良好。多分9万位じゃないか?」
「9万?!オレのは?」
「7万位じゃない?」
「学生なオレからしたら大金だな。買いたいものは大抵買えるな」
現世で7万も手に入れたら取り合えず、PCでも作るな。
簡単に稼げた代償に、肩を脱臼したのはどうなんだろうか。
「ここ一階層だよな?一階層からミノタウロスってレベル高くない?」
「普通はミノタウロスなんて出ないんだが、低確率で出てくるんだよな。ちなみに赤いのは更にレア」
「低確率ってどれくらい?」
「10連ガチャで半分が星5になる位の確立」
「ほぼゼロに等しい...」
その時、オレは自分の顔の頬の辺りを何か液体が流れた感覚がした。
自分の顔を触ると、触った手の指先にはミノタウロスのものと思われる血が付いていた。
その血はまだ暖かく、自分の指先でだんだんと冷たくなっていく血の温度をそこに写る自分の顔を見つめながら感じた。
ミノタウロスは血が流れ出す自身のわき腹を片手で押さえ立ち上がった。
まだ血が流れ出てはいるが、出血量が減ってきている。
大剣を持ち直し、ミノタウロスがこちらに近づいてくる。
しかし、オレはうつむき自分の手に付いた血を見つめ震えるばかりで、ミノタウロスが近づいてきている事に気づいていない。
「おい!昌!」
おじさんのその呼びかけで顔を上げた。
しかし、ミノタウロスは大剣を振り下ろす所で剣を拾ったり出したりして受け流す時間はもう無い。
オレは急いで左に飛んだが、右肩に当たった。
おそるおそる目を開け自分の肩を見るが、自分の肩に剣は入っていない。
それどころか、スーツにもキズ一つ付いていない。
どうやらオレは自分の肩でミノタウロスの大剣を受け止めたらしい。
ただ、衝撃は防げなかったらしく肩がものすごく痛い、何処かにぶつけたなんてレベルではない。
というか、肩が外れている。
利き腕とは反対だった事がせめてもの救いだ。
自分の下がった肩を見て、痛みを感じて攻撃を受ければ痛いと言う事も改めて実感し、それと同時にミノタウロスを倒さないと、俺が倒される事も実感した瞬間恐怖に支配された心が解きはなたれ、ついさっきまで動かなかった手足が止まった。
手足の件は誰かの助けを感じたが誰だったのだろうか。
「クソが!」
オレは利き手である左手に剣を出し、ミノタウロスの腹をめがけて突き刺した。
痛がるミノタウロスを見て、もう一本剣を出しまた腹に突き刺した。
何本も何本も、何度も何度も。
ミノタウロスは腹から大量の血を流し床に倒れた。
体中にミノタウロスの血を浴びたオレは、床に倒れたミノタウロスのなきがらをただ眺めていた。
「良くがんばったな」
おじさんはそんなオレの歩み寄り、血を被った頭に手をのせた。
そんなおじさんのお陰でオレは我を取り戻した。
「コレは、オレが倒したのか?」
「ああ」
「全部オレ一人で?」
「ああ」
ミノタウロスを見つめ、聞くオレにおじさんは優しく答えた。
「姫様は?」
「寝かしておいた、モンスターとの戦闘なんていいものじゃないからな」
「そうだな」
おじさんと話しをしていると、目の前のミノタウロスが液体化し、地面にしみこんでしまった。
液体化したのはミノタウロスの体のみで、オレが腹に突き刺した剣は地面に残っていた。
また、剣のほかに透明なクリスタルも残っており、図体が大きかったせいかクリスタルも大きく、2Lのペットボトル位のサイズがある。
軽く見た感じでは、形も良く目立ったキズも無い。
「これは高く買い取ってもらえるぞ、よかったな」
「マジか!」
クリスタルを持ち上げようとしたが、肩が脱臼しているため断念し、変わりにおじさんに持っていってもらうことに。
おじさんがクリスタルを持ち上げようとすると、曲がり角から足音が。
その足音はだんだんと大きくなっていく。
角から出てきたのは、ミノタウロスだ。
ミノタウロスとは言っても、さっきオレが倒したミノタウロスとは違い、肌の色が赤く角も立派だ。
「こいつはヤバイ。お前、付いてるな。ミノタウロス二種類と同じ日にあえるなんて」
「望んでねぇよ」
赤いミノタウロスはさっきのミノタウロスが持っていた大剣よりも大きい剣を両手に持っていた。
「ここはオレに任せな!こいつは少し厄介だ」
そういうとおじさんは「これもっとけ」とジャケットをオレに渡し、ベスト姿のおじさんはYシャツの袖をまくった。
鞘に入った刀を腰に出し、そっと刀のもち手に手を置き構える。
「光速斬り(こうそくぎり)!」
おじさんがそうつぶやくと、さっきまでミノタウロスの前に立っていたはずが、ミノタウロスの後ろに背を向け立っていた。
剣を抜く事も、ミノタウロスに切りかかる事も一切無く、おじさんはただミノタウロスの前から後ろに瞬間移動しただけに見える。
しかし次の瞬間、ミノタウロスの体中に線が走り、そこから血が噴き出した。
そして、大量出血したミノタウロスは自身の血で出来た血溜まりに倒れた。
「ふ~」
おじさんは一息つくと、まくった袖を戻しオレからジャケットを受け取った。
さっきのミノタウロス同様に体はドロドロとした液体になり地面にしみこんでいった。
赤いミノタウロスからは、赤いクリスタルが出てきて大きさも一升瓶ほどある。
おじさんは両手に赤と透明なクリスタルを持ち上げた。
姫様の所に行くと、姫様は壁にもたれかかり足を伸ばして寝ていた。
長座体前屈でも今からするのかな?
そんな姫様の肩の上でミイが座ったまま寝ている。
「おじさん、ヤバい。写真撮ってこの状況を永久保存したい」
「わかりみが深い」
結局オレとおじさんは二人を起こすことが出来ず、ただただ眺めていた。
しばらくすると、ミイが目を覚ました。
「マスター...」
目をこすりながらあくびをしつつ立ち上がった。
「ミノタウロスはオレが倒したから」
「おめでとうございます!」
オレ達の話し声が聞こえたのか、姫様が起きた。
「あ、昌様...ミノタウロスは...」
「オレが倒しますた」
「私は倒せるって信じてました」
「期待に答えられてよかったよ」
地面に座った姫様の手を引き、立たせて皆でダンジョンの出口に。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ダンジョンの出口への道中の雑談
おじさんの横に並んで赤いクリスタルを指差し、聞いた。
「この赤いのはどれ位で買い取ってもらえるんだ?」
「なかなか大きいし形もいい、状態も良好。多分9万位じゃないか?」
「9万?!オレのは?」
「7万位じゃない?」
「学生なオレからしたら大金だな。買いたいものは大抵買えるな」
現世で7万も手に入れたら取り合えず、PCでも作るな。
簡単に稼げた代償に、肩を脱臼したのはどうなんだろうか。
「ここ一階層だよな?一階層からミノタウロスってレベル高くない?」
「普通はミノタウロスなんて出ないんだが、低確率で出てくるんだよな。ちなみに赤いのは更にレア」
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