異世界で俺はチーター

田中 歩

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{第百十話} 戦場の魔術師

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「ここだ」
3人組についてたどり着いた場所はおじさんに先日つれていって貰ったカジノだった。
「マスターともう一度戦いたいのから?」
「可能性は高いですね」
「大丈夫だ、問題ない。今のオレに敵はいない」
謎の自信に満ち溢れていた昌は、3人組に続いてカジノの中に入いった。

中に入ると、店内の隅にある柵で囲われたスペースで3人組のボスが床に倒れており、そのボスの頭を踏みつけている男がいた。
「ボス!」「嘘だろ!」「信じられねぇ!何があったんだ!」
この状況を受け入れられない3人組に対してボスの頭を踏みつけた男は答えた。
「見ての通りだ、散々相手に絶望を見せてきた男が絶望を見ているのさ。そうだよな、ベック?」
ボスの名前が「ベック」だと分かった事はさておいて、この男は誰なんだろうか。
男は命を刈り取る形をしたカマを持っていた。
「ネラ、アイツは誰だ?」
「あの男はバラクスクでベックと縄張り争いをしている「タグ・トロ」です」
ベックはゆっくり起き上がると、膝を付いて拳で床を殴った。
「俺の負けだ、お前の言う通りにする」
このセリフにはベックの筋を通す性格がわかる。
「そうだな、このカジノは俺達の縄張りだ。今後一切ベック達の出入りを禁止する」
「ふざけるな!」
「口を出すな!俺は負けたんだ...どんな命令にも答える義務がある」
3人組が反論したが、ベックは遮った。
「まったく、そう言う暑苦しいのは嫌いなんだよな」
この場に居る全員が思った事だが、タグの言動がいちいち鼻につく。だからか、ネイが口を開いた。
「あれ~?まるで自分がベックを唯一倒した人間みたいに言ってカッコつけてるけど、ここにいるのよね~あなたよりも先にベックを倒した人間が」
「えっ?!」
「そうだ!その通りだ!オレを最初に倒したのはタグお前じゃねぇ、アイツだ!」
「え!?まぁそうなんだけど...」
唐突に全員の目が自分に向いて驚いたが、事実ではあるため、面倒くさい事に巻き込まれる事があきらかだったが昌は否定できなかった。
「あなたも余計な事をいいますね」
「だってムカつくんだもん!」
面倒事を呼び寄せたネイに対して、ネイは呆れた様子ではあったが、どこかすっきりした様子だった。
「へぇ~、お前がねぇ」
タグは昌をにらみつけた。
「そうだ、お前は2人目だ!1人目じゃない!」
ベックの言葉にいら立ちを見せつつ、昌の元へ近づいた。
「お前名前は?」
「菊田昌!」
「菊田昌、俺と戦え」
「いいだろう、やってやる!」
身構えた昌に対してタグは手からカードを出した。
「菊田昌、お前が負けてひれ伏す未来が見えるぞ」
タグが出しタロットカードは「死神の正位置」終わりを示すカードで、よくない終わり方を意味する。
「さぁ、始めようか?」
柵の中でタグは昌を呼んだ。
「気を付けろよ、ヤツは戦場の魔術師と呼ばれている。化かされるなよ」
昌とすれ違ったベックは忠告したが、昌はよく分かっていない様子だったが、やってみれば分かると言うやつだろう。
「ルールは何でもありだ」

戦闘が始まって早々にベックに距離を詰め、あの斬撃を放った。
「当たったらひとたまりもなさそうだねぇ、当たった「ら」の話だけどねぇ」
タグは昌の斬撃を軽々と避け、普通の攻撃も簡単に避ける。
タグの動きや攻撃はパターンが無く、先が読めない動きをしてくるためとても戦いずらい。
昌はタグのそんな動きに翻弄され、本来の実力が出せずにいた。
そんな昌の攻撃を避けつつ、肩や膝などの関節を狙ってカマの先端で突いている。
「動きが読めない、クソッ!」
昌はだんだんと動揺し始めていた。
「マズイですね。あの斬撃に頼りすぎている」
「あの3人組との戦いで斬撃一つで3人とも倒せて上手く行った自信が昌くんの焦りを加速させているわ」
昌とタグの戦闘は誰が見ても昌が一方的に遊ばれている様にしか見ない状況だった。
「大した事ないねぇ、ベックはこんなヤツに負けたのか?単純な力押し、戦略の欠片もない。仕方がないから俺の本気を少しだけ見せてやる」
そう言うと、昌の周りを走り始めると、1人が2人に、2人が3人に分身し、昌に対して一斉に切りかかる。
ただでさえ動きが読めず、かわすので精一杯だった攻撃が3倍になったわけで、昌が受ける攻撃の数もだんだんと増えてきた。
「いつまでもつかな?」
「どれが本物なんだ」
分身という事は本体の1人に攻撃してダメージを与えれば、分身はすべて消えるはずという考えのもと、本物を見分けようとしていたが、そう簡単な事ではなかった。
そんな敵に翻弄されきっていた昌はタグの攻撃によってダメージが蓄積していた膝かを付いて立ち上がれず、その場から動けなくなっていた。
そのため3人のタグが高く飛び上がり振り下ろした3本のカマの攻撃を避ける事が出来ず、昌は自分に振り下ろされる3本のカマの先端を只々見ている事しかできなかった。
カマの先端がいよいよ例え動けてもかわせない距離に近づいたところで、2本の剣が3本のカマの攻撃を弾いた。
これは3本のカマの先端が正確に一点を狙っていた為、その一点に交差させた2本の剣の丁度交点で受けたため防げたのだろう。
攻撃を防がれたタグは後ろに飛びのき、分身と思われる2人は大きく飛びのき、どこかへ消えた。
「誰だ!」
いいところを邪魔されたタグが声を上げると、2本の剣をしまい男は顔を上げた。
「お前は、ブラッド・アルキメデス!」
タグを含めた周りの驚きをよそに、ブラッドは落ち着いた様子で口を開いた。
「タグ・トロだったかな、君もBCに出場するつもりなら、そこで決着をつけるのはどうだろう」
「お前、BCに出るのか?」
「ああ」
「お前も?」
タグに出場の有無を聞かれたブラッドは口角を軽く緩めた。
「そうか、2人とも俺にBCで潰されたいってわけだ」
タグは武器であるカマをしまうと、カジノから出て行った。
「じゃあな、BCで会おう!」
それに続いてブラットもカジノから出て行った。
「どういう事なんだ?」
昌の質問に答えるどころか、反応もせずに出て行った。

一通り落ち着いたところで、昌が呼び出された本題に移る。
「今回お前を呼んだのはこれを渡したかったからだ」
ベックからiPadの様なタブレッドを渡され、画面には顔写真が並んでいた。
「ここにはBCの全出場者のデータが入っている。使う武器、戦いかた、ほかの大会での戦歴なんかが載っている。それさえあれば、対策が練れるだろう」
「いいのか?ありがたいけどなんでこれを?」
「ある人に頼まれたんだ」
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