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だから、ごめん
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『女神の愛し子、希望の勇者、馬鹿な子』
すべてを見ていた女神は言った。
『そなたが居なければあの者はどうあっても幸せになどなれぬと言うのに』
その瞳に映るのは、拭うことすら忘れたように涙を流す勇者の婚約者の姿だった。
『けれど世界を平和に導いたそなたに、敬意と感謝を』
小さく一つ溜息をつき、女神は勇者の魂に手のひらをかざした。
『だからこれは餞別。もう一度、あの者の近くに生まれ変わる運命を』
キラキラと輝いた勇者の魂は、まるで感謝を告げるかのように女神の手の上で小さくはねた。
『良く頑張ったわね、我が愛し子』
■
あら、こんなところに子供?
あなた、どこから来たの?……ここに住んでるって……ここ、山よ。
私?私は……この国から遠いところに行く途中なの。
確かに危ないけど……でもいいの。もしも死んじゃっても、会いたい人がいるから。
……嘘よ。そんな顔しないで。なんであなたがそんな顔するのよ。
悲しくなった?……小さいのに優しいのね。ほら、涙を拭って。かっこいいお顔が台無しよ。
あら、あなた指に何を……え、これ……あなた、この指輪、どこで見つけたの?
すべてを見ていた女神は言った。
『そなたが居なければあの者はどうあっても幸せになどなれぬと言うのに』
その瞳に映るのは、拭うことすら忘れたように涙を流す勇者の婚約者の姿だった。
『けれど世界を平和に導いたそなたに、敬意と感謝を』
小さく一つ溜息をつき、女神は勇者の魂に手のひらをかざした。
『だからこれは餞別。もう一度、あの者の近くに生まれ変わる運命を』
キラキラと輝いた勇者の魂は、まるで感謝を告げるかのように女神の手の上で小さくはねた。
『良く頑張ったわね、我が愛し子』
■
あら、こんなところに子供?
あなた、どこから来たの?……ここに住んでるって……ここ、山よ。
私?私は……この国から遠いところに行く途中なの。
確かに危ないけど……でもいいの。もしも死んじゃっても、会いたい人がいるから。
……嘘よ。そんな顔しないで。なんであなたがそんな顔するのよ。
悲しくなった?……小さいのに優しいのね。ほら、涙を拭って。かっこいいお顔が台無しよ。
あら、あなた指に何を……え、これ……あなた、この指輪、どこで見つけたの?
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