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公国動乱
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オレ達が北の国境付近で竜退治をやってた頃、南西部の商都カートライトバーグでひと騒動あったらしい。
ここは国務大臣で三公の1人、ミズル公爵家の領都。広大な領土を持つ公爵家だから、この辺りはミズル公国とも呼ばれる。これに匹敵するのはオレが住んでるアンバー辺境伯の領土位だけど、辺境だから人が住めない場所もあるんだ。
人口及び街の規模や数に於いて帝国最大。それがミズル公国だ。
竜征戦士となったオレは、下位爵位の貴族ではあるけど皇太子殿下に近しい立場になっちまった。
元々ブヌア家の息女と婚約している訳だから、皇太子派に近いって言えばそうなんだけど。一応まだ皇女派らしい。
ホント貴族って面倒くさい。
あ、何が言いたいかって言うと、大物貴族の動向・動乱が聞こえてくる位置に今オレはいるって事。
オレの所為?かどうかはさて於いて、皇家相続問題は決してしまった。ウチの本家~法皇家が皇太子殿下の派閥に肩入れを表明した事で、ルキアル皇子が後継となる芽は潰えた訳で。
こうなると皇帝陛下もルキアル殿下を少し遠ざける形をとり始め、この事に安堵したルキアル殿下は皇太子を補佐する、ゆくゆくは宰相となるべく動き出した。
ここ迄は何の問題も無いよね。
で、此処から少し拗れて来ていると言うか面倒くさいんだけど、現在帝国に宰相はいない。政務の中心は国務大臣だし、基本皇帝親政でこの数代通っている。
だからルキアル皇子は次代の国務大臣を目指しているって言う話になり始めたんだ。
その国務大臣は代々三公の1人ミズル公爵家から拝していたんだけど、それをルキアル皇子がとって変わると噂が宮廷に流れ始めて…。
現国務大臣はミズル公爵ローナンって言う人なんだけど、何故かココ女系家族。公爵以外に男子は孫が1人のみ。子供は娘しか残っていなくて全て他家に嫁にいってる。嫡男は数年前に…ここだけの話、悲観して自殺してるって話。何故かと言えば2番目の子が男子なだけで後の6人全て女子。勿論正室側室揃って4人の妻がいたんだけど、正室が2人目に男子を産んだだけで後の3人は娘しか産まなかったんだ。
で、その娘が1人は嫁いだんだけどやっぱり女子しか産んでなくて…。
嫡男は「この家には男は生まれない。呪われた家だ」とバカな妄想に取り憑かれてしまい、世と神を呪いながら毒酒を煽り、何故か狂った様に笑いながら死んだらしい。本来なら眠る様に死ぬ筈の毒酒にも関わらず…。
そんでもって後継として残った男子、ミズル公子ジョンはあまりにも出来の悪いバカ息子という話。
で話は最初に戻るけど、ジョンを廃嫡してルキアル皇子を国務大臣、新たな三公としようって。
物語だとバカ息子って矢鱈プライド高く自分の立場や地位を絶対と思ってる事が多いんだけど、コイツも他聞に漏れず自分が公爵家後継で次期国務大臣と思っていて。ライバルが皇子と知って荒れまくっているらしいってのが今回のヒト騒動の顛末なんだけど、もう勝手にやってくれ。
法衣貴族の准男爵には聞こえてこない筈の上位貴族のゴタゴタ。それが聞こえてくる様になったのは、オレの立ち位置が皇太子殿下の最強の剣になってるから。
何せ側近中の側近の義弟予定。
その上で皇女派ってのも消えてない。
まぁ、状況が決してる今、派閥の意味が無くなってるのも事実なんだけどね。
「何ブツブツ言ってんだ?」
「呼び出されて聞かされたのが、本当にどうでもいい事だからですよ」
ココはリスティア皇女の居館。
トライドルから帰って、ギルドで依頼達成手続をしていたら、帝都から皇女の名で名指しの呼び出し。やな予感しまくりでやって来たら、聞かされたのが公爵家のゴタゴタ。
目の前でその話を聞かせてくれたのは四天騎士、風のマゼールさん。他の四天騎士で炎のカイルさん、水のシャーロットさん、大地のチェレンさんもいる。後『紫光の魔女』アンさんははじめましてだよね。母さんにも負けない大賢者って聞いてる。
「うん、まぁ確かに、君にとってはどうでもいい事と言えばそうかもしれないな」
「そんな事はありませんよ?不本意だとは思いますが、貴方は皇太子殿下の切り札です。守護神とは役割が違うのでしょうが、皇家を含む貴族の動きを把握する必要がありますわ」
優しい笑みを浮かべてるのに、言うことは結構キツいなぁ、『紫光の魔女』さん。
「それとも言われるがままに動くだけのモノになりますか?」
それはヤダ。
「道具になりたくなければ判断力を持てと?その為に必要な情報を集めろと?」
「理解が早くて助かります。どこぞの熱い騎士殿とは大違い」
うん、マジでキツいよ、この魔女。
しかも、当の熱い騎士はピンときてネェ。
「それじゃ話を続けるよ」
「すみません、手取り早く要点だけ。そのバカ息子が騒動を起こして、結果どう動くべきだと?」
「あ、うん。フム、アン、頼めるか」
説明役がアンさんに変わった。
「今は静観しかないわ。只現時点で彼のお方は国務大臣補佐官なの。実務を経験させようとしてね。任命された矢先」
「うわぁ。任命された後でやっちゃったの?益々面倒くさいや」
オレは顔を顰めた。アンさんも微笑みながら、
「全く同感。国務大臣の任命責任は勿論だけど陛下の責にも飛火していてね。追求が難しくなってしまっているの。それに乗じて有耶無耶にしようとしているミズル公と追い落としたい他家との駆け引きで膠着状態なんだけど、彼のお方が直ぐには追求されない=罰せられないと思い出してるのよね」
溜息とともに宣う。だから優しい笑みと口調が全然噛み合ってないよ、この魔女さん。怖いよ。
「膠着状態…。コレ、ルキアル皇子を動かして…。うん、追い落としたい他家の貴族で筆頭か上位って誰?それもルキアル皇子派だといいんだけど」
ちょい悪手だけど、こんなの人に振るに限る!
ここは国務大臣で三公の1人、ミズル公爵家の領都。広大な領土を持つ公爵家だから、この辺りはミズル公国とも呼ばれる。これに匹敵するのはオレが住んでるアンバー辺境伯の領土位だけど、辺境だから人が住めない場所もあるんだ。
人口及び街の規模や数に於いて帝国最大。それがミズル公国だ。
竜征戦士となったオレは、下位爵位の貴族ではあるけど皇太子殿下に近しい立場になっちまった。
元々ブヌア家の息女と婚約している訳だから、皇太子派に近いって言えばそうなんだけど。一応まだ皇女派らしい。
ホント貴族って面倒くさい。
あ、何が言いたいかって言うと、大物貴族の動向・動乱が聞こえてくる位置に今オレはいるって事。
オレの所為?かどうかはさて於いて、皇家相続問題は決してしまった。ウチの本家~法皇家が皇太子殿下の派閥に肩入れを表明した事で、ルキアル皇子が後継となる芽は潰えた訳で。
こうなると皇帝陛下もルキアル殿下を少し遠ざける形をとり始め、この事に安堵したルキアル殿下は皇太子を補佐する、ゆくゆくは宰相となるべく動き出した。
ここ迄は何の問題も無いよね。
で、此処から少し拗れて来ていると言うか面倒くさいんだけど、現在帝国に宰相はいない。政務の中心は国務大臣だし、基本皇帝親政でこの数代通っている。
だからルキアル皇子は次代の国務大臣を目指しているって言う話になり始めたんだ。
その国務大臣は代々三公の1人ミズル公爵家から拝していたんだけど、それをルキアル皇子がとって変わると噂が宮廷に流れ始めて…。
現国務大臣はミズル公爵ローナンって言う人なんだけど、何故かココ女系家族。公爵以外に男子は孫が1人のみ。子供は娘しか残っていなくて全て他家に嫁にいってる。嫡男は数年前に…ここだけの話、悲観して自殺してるって話。何故かと言えば2番目の子が男子なだけで後の6人全て女子。勿論正室側室揃って4人の妻がいたんだけど、正室が2人目に男子を産んだだけで後の3人は娘しか産まなかったんだ。
で、その娘が1人は嫁いだんだけどやっぱり女子しか産んでなくて…。
嫡男は「この家には男は生まれない。呪われた家だ」とバカな妄想に取り憑かれてしまい、世と神を呪いながら毒酒を煽り、何故か狂った様に笑いながら死んだらしい。本来なら眠る様に死ぬ筈の毒酒にも関わらず…。
そんでもって後継として残った男子、ミズル公子ジョンはあまりにも出来の悪いバカ息子という話。
で話は最初に戻るけど、ジョンを廃嫡してルキアル皇子を国務大臣、新たな三公としようって。
物語だとバカ息子って矢鱈プライド高く自分の立場や地位を絶対と思ってる事が多いんだけど、コイツも他聞に漏れず自分が公爵家後継で次期国務大臣と思っていて。ライバルが皇子と知って荒れまくっているらしいってのが今回のヒト騒動の顛末なんだけど、もう勝手にやってくれ。
法衣貴族の准男爵には聞こえてこない筈の上位貴族のゴタゴタ。それが聞こえてくる様になったのは、オレの立ち位置が皇太子殿下の最強の剣になってるから。
何せ側近中の側近の義弟予定。
その上で皇女派ってのも消えてない。
まぁ、状況が決してる今、派閥の意味が無くなってるのも事実なんだけどね。
「何ブツブツ言ってんだ?」
「呼び出されて聞かされたのが、本当にどうでもいい事だからですよ」
ココはリスティア皇女の居館。
トライドルから帰って、ギルドで依頼達成手続をしていたら、帝都から皇女の名で名指しの呼び出し。やな予感しまくりでやって来たら、聞かされたのが公爵家のゴタゴタ。
目の前でその話を聞かせてくれたのは四天騎士、風のマゼールさん。他の四天騎士で炎のカイルさん、水のシャーロットさん、大地のチェレンさんもいる。後『紫光の魔女』アンさんははじめましてだよね。母さんにも負けない大賢者って聞いてる。
「うん、まぁ確かに、君にとってはどうでもいい事と言えばそうかもしれないな」
「そんな事はありませんよ?不本意だとは思いますが、貴方は皇太子殿下の切り札です。守護神とは役割が違うのでしょうが、皇家を含む貴族の動きを把握する必要がありますわ」
優しい笑みを浮かべてるのに、言うことは結構キツいなぁ、『紫光の魔女』さん。
「それとも言われるがままに動くだけのモノになりますか?」
それはヤダ。
「道具になりたくなければ判断力を持てと?その為に必要な情報を集めろと?」
「理解が早くて助かります。どこぞの熱い騎士殿とは大違い」
うん、マジでキツいよ、この魔女。
しかも、当の熱い騎士はピンときてネェ。
「それじゃ話を続けるよ」
「すみません、手取り早く要点だけ。そのバカ息子が騒動を起こして、結果どう動くべきだと?」
「あ、うん。フム、アン、頼めるか」
説明役がアンさんに変わった。
「今は静観しかないわ。只現時点で彼のお方は国務大臣補佐官なの。実務を経験させようとしてね。任命された矢先」
「うわぁ。任命された後でやっちゃったの?益々面倒くさいや」
オレは顔を顰めた。アンさんも微笑みながら、
「全く同感。国務大臣の任命責任は勿論だけど陛下の責にも飛火していてね。追求が難しくなってしまっているの。それに乗じて有耶無耶にしようとしているミズル公と追い落としたい他家との駆け引きで膠着状態なんだけど、彼のお方が直ぐには追求されない=罰せられないと思い出してるのよね」
溜息とともに宣う。だから優しい笑みと口調が全然噛み合ってないよ、この魔女さん。怖いよ。
「膠着状態…。コレ、ルキアル皇子を動かして…。うん、追い落としたい他家の貴族で筆頭か上位って誰?それもルキアル皇子派だといいんだけど」
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