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21. 楽しいお茶会⁉︎
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「アルフォート殿下が?」
「未練…、はぁ、何と言うか女々しいですね」
前世という特別な事情がある事。流石に話す訳にはいかない。でも元婚約者とコンタクトを取った事を私はリサとカールに話す事にした。
「諦め切れない想い。フフ、女冥利に尽きませんね、お嬢様」
「なら、あんな大舞台で人を振るなって話よ」
心変わりの事情は、私自身は納得した。
が、それを表に出せない以上、此方は大っぴらに人前で振られた女だ。100年の恋も冷める程の仕打ちを受けた後で「やっぱりヨリを戻そう」なんて言われても「まぁ、嬉しい」って飛び付く訳が無い。コッチは出奔までしてるんだから。
「それはそうと、ジュスラン殿下の求婚はお受けになられるのですか?」
「心動かされたのは確か。為人は勿論、あんなストレートな求婚、ときめくのはわかって貰えるよね」
「と言われる処をみると?」
「うん、非礼を承知で断るつもり」
「へぇ、アルフォート殿下にまだ脈が残ってる」
「あ、うん、無いって言ったら嘘になるわ。フフ、笑ってくれていいよ」
再び巡り会えた前世の恋人。
今のアルフォート殿下ならば、間違い無く私を幸せにしてくれるだろうし、こんなロマンチックな運命、否定出来る訳無いし。
「なので、サラジアポートから海路グランガランって考えてる」
「やはり大陸を出られますか」
「せっかくの冒険者稼業。どうせなら新天地って想いもあるの。付き合わせるの申し訳ないけど」
「いえ、別に」
「慣れてますよ」
2つ返事で賛同は嬉しいけど、慣れてるって。
私、そんなに我儘言ってる?
その諦めの目付きは、とても不本意だわ。
「明日にでも王宮に伝えます。カール、先触れをお願いします」
「御意」
半分は、流石に大陸からも出奔すればアルフォート殿下の手は完全に届かなくなるだろうって思ってるんだけど。半分はジュスラン殿下の想いを蹴って、この国に留まる程、私の面の皮は厚みが無いって事で。
…でも、先手を打たれて…。
先触れを行う前に、私達の元へ来たのは王妃殿下からのお茶会の誘い。
現時点では、私は断る術を持たない。
持てない。
なので、今、ステラ王妃と差し向かいでお茶を楽しんでます。
「そろそろ他へ行かんと欲する頃に思えましてね。申し訳無いのだけど、息子があれほど興味を持った女性はこれまで皆無と言えたものでね。妾としても今少し引き留めておきたくての」
直球でグイグイ来るわ。
「そうなのですか?最初から、此方が赤面する程美辞麗句並べて、推してきましたけど」
「ほう?一目惚れとは、そこまで入れ込むものなのですね。ある意味羨ましくもある」
まぁ、王族の婚姻が恋愛で進む筈も無く。
聞けば、ほぼ生まれた時点で陛下の許嫁に決まっておられたらしい。物心ついた時には王妃教育が始まり、当時の王太子の調子の良い美辞麗句が薄っぺらに聞こえ、中々好意が持てなかったとか。
…正直な物言いです、妃殿下。
「で、息子はどうかえ?」
「薄っぺらとは思いません。真摯に正面から求愛して来られましたし。まぁ、強引と言えばそうですけど、それすらも不快には感じませんでした。ジュスラン殿下は文武両道に優れ、自身の立場や才に溺れる事なく鍛錬に励む、素晴らしい方と」
「フフ、贔屓目で見ても好ましく育ったと思うておったが、貴女がそう言うてくれると、これは素直に喜んで良さそうですね」
母国の王太子より遥かにマシ。
いや、口に出しませんし、勿論顔にも。
ジュスラン殿下の為人をステラ王妃と話していて分かった事がある。
私は、グイグイ推してくる殿方に弱いのかもしれない。まぁ、身も蓋も無い言い方だけど、ジュスラン殿下に迫られてるから、という現実もあるが。
お陰で、私の心の天秤は、冒険者とカナック王太子妃のどちらに傾くか?実は激しく上下していて収まらない。
…決め切れない。
図らずも、その事に気付かされたお茶会となってしまった。
笑顔で妃殿下の元を辞し、宿に戻ってみると旅装を解いたカールとリサが待っていて。
「貴方達」
「いえ、どうも直ぐには出国出来ない様でしたので」
…妃殿下…。
やってくれましたわね?
「未練…、はぁ、何と言うか女々しいですね」
前世という特別な事情がある事。流石に話す訳にはいかない。でも元婚約者とコンタクトを取った事を私はリサとカールに話す事にした。
「諦め切れない想い。フフ、女冥利に尽きませんね、お嬢様」
「なら、あんな大舞台で人を振るなって話よ」
心変わりの事情は、私自身は納得した。
が、それを表に出せない以上、此方は大っぴらに人前で振られた女だ。100年の恋も冷める程の仕打ちを受けた後で「やっぱりヨリを戻そう」なんて言われても「まぁ、嬉しい」って飛び付く訳が無い。コッチは出奔までしてるんだから。
「それはそうと、ジュスラン殿下の求婚はお受けになられるのですか?」
「心動かされたのは確か。為人は勿論、あんなストレートな求婚、ときめくのはわかって貰えるよね」
「と言われる処をみると?」
「うん、非礼を承知で断るつもり」
「へぇ、アルフォート殿下にまだ脈が残ってる」
「あ、うん、無いって言ったら嘘になるわ。フフ、笑ってくれていいよ」
再び巡り会えた前世の恋人。
今のアルフォート殿下ならば、間違い無く私を幸せにしてくれるだろうし、こんなロマンチックな運命、否定出来る訳無いし。
「なので、サラジアポートから海路グランガランって考えてる」
「やはり大陸を出られますか」
「せっかくの冒険者稼業。どうせなら新天地って想いもあるの。付き合わせるの申し訳ないけど」
「いえ、別に」
「慣れてますよ」
2つ返事で賛同は嬉しいけど、慣れてるって。
私、そんなに我儘言ってる?
その諦めの目付きは、とても不本意だわ。
「明日にでも王宮に伝えます。カール、先触れをお願いします」
「御意」
半分は、流石に大陸からも出奔すればアルフォート殿下の手は完全に届かなくなるだろうって思ってるんだけど。半分はジュスラン殿下の想いを蹴って、この国に留まる程、私の面の皮は厚みが無いって事で。
…でも、先手を打たれて…。
先触れを行う前に、私達の元へ来たのは王妃殿下からのお茶会の誘い。
現時点では、私は断る術を持たない。
持てない。
なので、今、ステラ王妃と差し向かいでお茶を楽しんでます。
「そろそろ他へ行かんと欲する頃に思えましてね。申し訳無いのだけど、息子があれほど興味を持った女性はこれまで皆無と言えたものでね。妾としても今少し引き留めておきたくての」
直球でグイグイ来るわ。
「そうなのですか?最初から、此方が赤面する程美辞麗句並べて、推してきましたけど」
「ほう?一目惚れとは、そこまで入れ込むものなのですね。ある意味羨ましくもある」
まぁ、王族の婚姻が恋愛で進む筈も無く。
聞けば、ほぼ生まれた時点で陛下の許嫁に決まっておられたらしい。物心ついた時には王妃教育が始まり、当時の王太子の調子の良い美辞麗句が薄っぺらに聞こえ、中々好意が持てなかったとか。
…正直な物言いです、妃殿下。
「で、息子はどうかえ?」
「薄っぺらとは思いません。真摯に正面から求愛して来られましたし。まぁ、強引と言えばそうですけど、それすらも不快には感じませんでした。ジュスラン殿下は文武両道に優れ、自身の立場や才に溺れる事なく鍛錬に励む、素晴らしい方と」
「フフ、贔屓目で見ても好ましく育ったと思うておったが、貴女がそう言うてくれると、これは素直に喜んで良さそうですね」
母国の王太子より遥かにマシ。
いや、口に出しませんし、勿論顔にも。
ジュスラン殿下の為人をステラ王妃と話していて分かった事がある。
私は、グイグイ推してくる殿方に弱いのかもしれない。まぁ、身も蓋も無い言い方だけど、ジュスラン殿下に迫られてるから、という現実もあるが。
お陰で、私の心の天秤は、冒険者とカナック王太子妃のどちらに傾くか?実は激しく上下していて収まらない。
…決め切れない。
図らずも、その事に気付かされたお茶会となってしまった。
笑顔で妃殿下の元を辞し、宿に戻ってみると旅装を解いたカールとリサが待っていて。
「貴方達」
「いえ、どうも直ぐには出国出来ない様でしたので」
…妃殿下…。
やってくれましたわね?
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