11番目の神 ~俺と勇者と魔王と神様~

琴乃葉ことは

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第一章『それは、新しい日常』

第十三話「換金」

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 大通りから薄暗い路地に入り、かれこれ三十分ほど経っている。

 誇りを被った木箱には蜘蛛の巣が張り巡らされており、しばらく動かされていないことがうかがえた。



「相変わらず埃っぽいなぁ」



 人が寄り付かないようわざと掃除されていないのはわかるが、どうしても愚痴が出てしまう。







「ここだったかな」



 目的地を前にシオンはそう呟いた。

 目の前のドアには、悪趣味なことに死んだ白猫の落書きが描かれている。



 前に立つとノックを5回。一拍開けて3回。さらに一拍開けて7回。

 返事は返ってこないが、これで入った途端に攻撃されることはないはずだ。

 ドアノブを回し、軋む音を気にせずに開けていく。







「なんだ、お前さんか」



「久しぶりだね」



 部屋に入ると机に足を投げ出し、腕を組んでいる小太りの男が1人。これまた随分高そうな葉巻をすいながら、こちらを見下してくる。

 机の上に積み重ねられた書類の山は、彼がついさっきまで仕事をしていたかように見える。



 しかし、これは全てフェイクだというとを僕は知っている。これらは一種の交渉術だ。

 あの資料の山はほとんど白紙だし、葉巻は今慌ててつけられたばかり。見下す視線や足を投げ出した余裕そうな態度も狙ってやっているものだ。



 相手が萎縮して交渉が有利に運べば良し。怒りを買ったり、侮らせて攻撃を加えてくるなら、この部屋のいたるところにいる部下を使って喧嘩を売って来たという弱みを掴めば良し。



 実はすでに《気配察知》でこの男以外にも人がいることはわかっている。



「あれ? 護衛の数前より増やしたんだ」



「... おまえさんが凄いのは十分わかってる。交渉の間で俺たちが有利に進めるつもりもない。だから口にだして指摘しないでくれ。これでも隠密に長けたやつを集めたんだ。そいつらの士気に関わる。」



「まあ、わかってくれてるならいいんだけどね」



 んー、面倒ごとになりたくないから、威嚇したけど別に必要なかったかな。彼も馬鹿じゃないし。



「で? 今度はいったい何を売りに来たんだ? お前さんの持ってくるものはどれも良質な品ばかりだが、こっちの金にも限度ってものがあるんだぞ?」



「ははっ、大丈夫。 今回で最後だよ。 これを全て買い取って欲しい」



「あー? また随分と大量に持って来たな...ぁ...」



 何かに気づいたの彼の言葉はどんどん尻すぼみになっていく。今回持って来たものが、ただものじゃないとわかったのだろう。数ある品の中から1つを手にとる声をあげた。



「こっ、これはっ!?」



 彼は興奮したように、次々と手にとっては机や床に並べていく。おそらく《鑑定》でもかけているんだろう。



 しばらくかかりそうだし、邪魔にならないよう壁際で待ってようか。









 ~~~~~~~~~~









「不気味な野郎だ。いったいどこからこんな物を持ってきやがる。本当に何者だ?」



 彼は物品の1つ持ち上げながら、僅かに呆れを感じさせる声をで話しかけてくる。



「お互い詮索はしない約束じゃなかった?」



「わあ"ってんよ! 今のは愚痴みたいなもんだ。それでいくら欲しいんだ?」



「白金貨300枚」



「はあ!? ばっ、バカか!そんな金用意できるわけないだろ!」



 この世界の通貨には、小銅貨、大銅貨、小銀貨、大銀貨、小金貨、大金貨、白金貨の7種類ある。

 どの硬貨も100枚で、1つ上の価値の硬貨1枚分になり、



 小銅貨100枚→大銅貨1枚

 大銅貨100枚→小銀貨1枚

 小銀貨100枚→大銀貨1枚

   ・

   ・

   ・

 大金貨100枚→白金貨1枚



 といった形になる。



 これを見てもシオンが破格の要求をしていることがわかるだろう。



「それじゃあ交渉は決裂かな?」



「いや、待て。これだけの物を見せられて手を引くわけにいかねー。とりあえず100枚までなら用意できる。それで手を打ってはくれねーか?」



「こっちだってこれだけの物を集めるのに命がけだったんだ。250枚」

(まあ、実際に命がけだったのはユウキだったけど)



「後払いなら追加で50枚用意できる。これ以上は無理だ。頼む」



 なんと彼はここで頭下げた。



 ちょっと予想外だな。ここまで下手にでると思わなかった。

 彼が一生懸命に頼み込んで来るのを見ながら、僕は少し考え込むふりをして、用意していた最後の提案をする。



「わかった。ならこうしよう。支払いはお金以外のものでも構わない」



「金以外だと?」



「そう、実は今自由に動かせる人手が欲しいんだ」



「人手だといったいなんの為に... いや詮索はしない約束だったな。 わかった。何人送ればいい?」



「力仕事ができる人を30人くらい頼むよ。奴隷からでいい」



「了解した。私たちの信用もかかっている用意して見せよう」



 彼はメモとった後、胸をはって答えた。



「それじゃあ、交渉成立だね。人員はこの地図の印を付けてあるところに送ってよ。期限は1週間以内だ」



 元来たドアを開けながら、最後にちゃっかり期限を付けて出て行く。



「は!? いっしゅ ちょっ」



 もうこの場所に用はない。さっき彼の《鑑定》を待っている間に、サイクロプスが来たというアナウスもあったのでさっさとここをでよう。



 わざわざ倒しに行くつもりは無いけどね。
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