11番目の神 ~俺と勇者と魔王と神様~

琴乃葉ことは

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第一章『それは、新しい日常』

第十四話「スラム」

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「いやー、2人ともすごかったね。 なんだっけ? 『俺は転生者!』だっけ? あははは、傑作だったね」



「そうね。イブもすごいドヤ顔だったし。ふふふ」



「2人ともしつこい...」



「いや、お前ら見てたんなら手伝えよ!」



 俺とイブが《瞬間移動》で広場にとんで少々。二人ともさっきのセリフがくさすぎたのではと後悔していた中、シオンとリリィーはあらわれた。



「というか、来るときも思ったんだが目立つなそれ」



「あー、やっぱりそうかい? でもどうしようもないからね」



 呆れ混じりに指摘する俺に返事をしたのは、硬貨がパンパンに詰まった袋を背負ったシオンだ。ここに来るときも装備品を同じくパンパンにしていたのである。

 まるでサンタだ。そりゃ目立つ。



「貸せ、俺が持つ」



 そういうと俺はシオンから袋をひょいと奪い、



(スキル《亜空間》を発動しました)



 先程手に入れた便利スキルで亜空間に放り込んだ。



 放り込んだはいいが中で散らばってないよな?

 ちゃんと口を結んであっただろうか。後になって硬貨一枚一枚取り出すのは、めんどくさすぎる。



「おー、なんか少し見ない間に随分便利なものを手に入れたね」



「初めて見たわ。そういうスキルは私も欲しいね」



 二人とも物珍しそうに亜空間の中を覗き混んでいる。



「いや、でもリリィーは魔法で再現できるんじゃないか? 前に言ってたろ、魔法は何でも出来るって」



「ん、確かにそうね... あ、できたわ」



 少し考えるそぶりを見せたかと思うと、目の前に先程俺が出したよう亜空間が現れた。



 こいつのチートっぷりもなかなかだな。



「魔法はなんでも出来るって周知されれば、マジックバックなんかいらなくなるかもな」



「それは無理よ。魔法はね、自分が望む現象を起こしてる最中は魔力を消費し続けるの。これを再現しようとしたら魔力消費を魔力回復が上回らないといけないわ。そんなの普通じゃないもの。私にしか出来ない芸当ね」



 あなたは普通じゃないんですかね。そのドヤ顔を殴りたい。



「ふーん、さてどこかで飯にでもしようぜ」



「ちょっとー、少しは褒めなさいよ!」



「あーそうだなー、すごいすごい(棒)」



 おざなりな返事を返しながら、どこか腹を満たせそうなところを探して歩きだす。

 しかし、先程のサイクロプスの騒ぎのせいで通常営業している店は少ない。どうしたものか。いくつか出店があるな。そこまで腹が減っている訳でも無いし何か見つけて買い食いしよう。





「ん!? これもしかしてお好み焼きか?」



 ぽつぽつとある出店を見て回っていると一つ気なるもの目に入った。そう、お好み焼き。日本にあったあれである。だが、ソースはかかっているのにマヨがない。おしい!



「おっ、にいちゃんこの料理が気になるのかい?」



 そんな元気な声とともに、ニシシッという笑いが聞こえてくる。料理ばかりに気を取られていた視線あげると、そこには髪を後ろに束ねた褐色肌の人が立っていた。豪快言動とは裏腹になんと女性だ。姉御って感じ。



「これはね、最近あたいが考えた料理なのさ。穀物をねり潰して液状にしたものを適当な具材を混ぜて焼く。それにこのスパイスの効いたソースをかけるだけ。なのに上手いんだな~これが」





 彼女は嬉しそうな顔で語ってくれる。よほどの自信作なのだろう。



 ちょうど今作っていたものが焼き上がり、手にしたソースをかけていく。ジュッという心地良い音とともにソースが全体に広がる。垂れたソースが少々焦げるが、あれはあれで上手いのだ。スパイスの匂いがこちらにまで漂ってきて、暴力的なまでに空腹中枢を刺激する。

 耐えかねたリリィーが声を上げた。



「これ四つください!」



 おー、勝手に決まった。まあ、どうせ買うつもりだったけど。



「あいよ!」



 姉御の店員が元気な声と共に焼きたてをケースに詰めてくれる。

 支払いと礼を済ませさあ食べようとした、

 その時だ。



 ドンッ



「は?」



 背中に衝撃を感じると視界の端に一人の少年が駆けていくのが見えた。そして、その手には俺が持っていたはずのお好み焼きが。

 チッ。背中の衝撃に気を取られて手元が疎かになった。手慣れてやがる。まだ一口も食べて無いのに。



 すると、駆ける少年の行く手に唐突に一人の少女が出現した。いや、イブだ。隣を見るとつい先程まで一緒に歩いていたイブの姿が無くなっている。《瞬間移動》か。



「うわっ」



 少年は驚きのあまり後ろに転び尻餅をつく。



「それはユウキの... 返して...」



 イブはいつものような平坦な声で話しかける。別に怒っている訳では無いようだが、少年からしたら冷たい態度に見えただろう。未だに唖然としたまま硬直している。



 十歳くらいだろうか。服はほつれていて全体的にみずぼらし格好だ。髪もボサボサであまり身体もふけていない様子。おそらくスラムの子どもだろう。

 近づく俺たちの足音に気づきこちらを振り返った。



「!? シオンにいちゃムグッ」



「うーん、この子はスラム街の子どもみたいだねー。ユウキとイブもここは許してやってくれないかい?」



 シオンは少年の口を塞ぎながら。さも僕は何も知らないというように。

 ごまかせるか!無理がある!

 しかし、質問されたからには答えなければならないだろう。問い詰めるのはまた今度だ。



「ん、まあいいぞ。もう一回買えばいいだけだしな」



「あっ、もう一回買うんだ」



 リリィーが後ろでボソッとつぶやく。



 そりゃ、買うだろ。お好み焼きだぞ。お好み焼き。異世界転生者として食わないわけにはいかない。そういう使命だ。



「イブもそれでいいか? わざわざありがとな俺のために」



「ユウキがいいなら... それでいい...」



 優しいやつだ。昼間の時のように頭を撫でてやる。



「そもそも... 取られるユウキも悪い... 世話が焼ける...」



 イブが両手を上げ、やれやれと外国人のように大袈裟なジェスチャーをする。



 おっと、それをいいますか。

 反論のしようがない。参ったなと、頭をかいていると少年がおずおずと前に出てきた。



「あの、すみませんでした」



「気にするな、それよりも...」



「?」



 予想通りというべきかこの世界も不平等な事ばかりのようだ。

 まったく、見ていて気分が悪い。



「あと何人分必要だ?」



「へ?」



「他にも腹を空かせてる奴がいるんだろ?」



 その言葉で気づいたのか、少年はハッとすると何やら考え始めた。きっとどのくらい必要か計算しているのだろう。





 これは俺の自己満足だ。

 スラム街の人々全員に配ることは不可能だろうが、関わったこの子やその関係がある人だけでもお腹いっぱいになってほしい。

 見なかったことにはしたくなかった。いや、自分は何かしてやれたんだと思いたいだけなのかもしれない。他の見て見ぬふりをする奴とは違うと。そう主張したいだけの、所詮エゴに過ぎない。



「えっと、たぶんあと十個くらいあれば足りると思います」



「わかった。おーい、追加で十一個だ」



 後ろを振り返って、今までの騒動を心配そうに見守っていた姉御の店員に注文する。ん?なんで端数かって?もちろん俺の分だ。



 姉御の店員は一瞬何事かとキョトンとした顔になったが、すぐに察してくれたらしい。ニシシッと笑うと彼女は元気よく返事をしてくれた。



「あいよ!」



 さすが姉御、空気を読んでくれる。たが「よっ、男前ー」とかいいながら背中を叩くのはやめてほしい。痛いっつーの。





 少年はお好み焼き———正確にはようなものだが、を受け取ると何度も何度もお礼をいいながら走り去っていった。
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