11番目の神 ~俺と勇者と魔王と神様~

琴乃葉ことは

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第一章『それは、新しい日常』

第十五話「モンスター」

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 彼らは良くも悪くも自己完結してしまっている。

 誰かに救いを求めても救われないことは知っているし、救いを求めるくらいなら自分で何とかしようとした方がましだと知っている。

 そんな彼らの強靭な精神には人との繋がりを必要としてこなかった。無意識的に避けて来たといってもいい。



 だからだろう、彼らには人との繋がりというものが欠けていた







 ◇————◆————◇







 少年と別れた後はお好み焼きを持って帝国の外に来ていた。

 街中で食べることも考えたが、みんな人ごみの中よりこういう静かな場所がいいらしい。笑えるな、全員が全員ぼっち気質とはリリィーをバカにできない。



 ちなみにお好み焼きは亜空間にしまっている。実はこのスキル、調べてみると中の物が時間経過せずそのまま残るという事がわかった。今回外で食べることを決定づけたのもこのスキルのおかげである。もしやと思い、調べてみたかいがあった。

 さすがに冷めたものを食べるくらいならその場て食べている。ただの便利スキルかと思ったら超便利スキルだったとは!これからもお世話なりそうだ。





 帝国から離れるにつれモンスターの数は自然と増えてきた。オオカミのようなやつもいれば、鳥型のようなよくわからん奴もいる。

 特に鳥型の奴はさっきから頻繁に見かけているのだが飛んでいる姿を一切見ないな。この世界のペンギンだろうか?



 俺がモンスターを見て珍しそうにしていたのがわかったのだろう。そこからはシオンが目につくモンスターを手当たり次第に教えてくれた。

 なんだか先生と生徒みたいな感じになってきたな。もしこれから戦うことになった時に備えて、ある程度の知識は入れておきたいのでとてもありがたい。



「あそこにいるのはスライムっていって物理攻撃が効かないんだ。体液は触れると酸で溶かされてしまうからユウキも戦う時は気をつけた方がいいよ」



「なるほどな、でも近づかないで物理以外の攻撃をすれば案外簡単に倒せるんだろ?」



「そうだね、炎や雷系統の攻撃で難なく倒せるよ。あ、ただし水はダメだね。スライムは水を吸って膨張するんだ。」



「ふむ、キ〇グスライムになるわけだ」



「え?」



 このモンスター講義のようなことをしている中でも、モンスター達は襲いかかってくる気配がない。実力の程を分かっているのだろう、ほとんどのモンスターはこちらを威嚇してくるだけで一歩たりとも近づいてはこなかった。



 しかし、馬鹿はどこにでもいるらしい。

 それはこのモンスター界でも例外ではないらしく中には襲ってくるモンスターもいた。

 命知らずな奴らだ。

 近づく前に俺が片っ端から万有引力で吹き飛ばしていく。無意味な殺傷をするつもりはない。食事前にグロ映像って何の拷問だ。



「あんたまた変なスキルを拾ってきたのね。なんていうスキルよ」



 そんなことを言いながらリリィーが訝しげな視線を向けてくる。



「おい変なスキルとか言うな、失礼な。これは《万有引力》っていうスキルだ。指定した範囲の重力を操れる。」



「理不尽の極みみたいなスキルね」



「いや、そうでもないぞ?」



 実際イブはあの中普通に動いていたしな。

 あれも何かのスキルか、はたまた魔法だろうか。



 ん?そういえばスキルと魔法ってどうやって見分けるんだ?

 見た目だけじゃ分からないよな。





「そしてあれが...って聞いてるかい?」



 いつの間にか再開されていたモンスター講義は上の空で、シオンの言葉で俺はようやく我に返った。



「あ、ああ悪いちょっと新しく疑問に思った事があってな。」



「へー、なんだい言ってみなよ」



「魔法とスキルってどうやって見分ければいいんだ?」



 シオンはなるほどと納得した後、右手をこちらに差し出す。



「ちょっと実際にやってみよう。僕の右手を掴んで」



 言われた通りに握手をする形で手を繋ぐ。

 せっかくならイブに教えてもらえば良かったな。その方が役得だった。



「イブじゃなくて残念だったね」



 シオンが顔をニヤつかせながら、俺にだけ聞こえる声でつぶやく。



「うるせぇー、思考を読むな」



 俺たちの声は二人には届かないはずなので、握手をしたまま何もしない俺たちを見て不思議そうにしている。



「いいから進めろ、この状況は変な誤解を受ける」



「確かにそれは僕も困るな」



 苦笑したシオンはよしっと切り替えようやく説明に入る。



「スキルと魔法の違いは魔力が使われているかいないかなんだ。今僕は魔力を流しているんだけど何か感じ取れるかい?」



「あー なんとなくだが一応」



「それなら次だ。このまま少しずつ手を離していくから、魔力の感覚を追いかけてみなよ」



 そういうとシオンは手を徐々に離していく。しかし手が離れた瞬間に、すでに先程まであった感覚は消え失せていた。



「駄目だ、手が離れた途端何も感じなくなった」



「へー、以外だね。今までの君を見てきたところ、万能ってイメージがあったけど」



「たぶんスキルを取れれば別なんだ。俺ってスキルありきみたいなところがあるからな」



「なるほどねぇ」



 肌に触れていればわかるのだが、どうも俺には魔力を感知するセンスが皆無らしい。神性の身体でも感覚は俺自身の問題ってわけだ。

 まあそこまで深刻に受け止める必要はないだろう。正直あてがある。

 おそらくだが魔力を感知する魔道具は探せば見つかるはずだ。その魔道具を使えば今までの傾向から考えて、きっとスキルが手に入る。余裕が出来たら今度探してみよう。





「そうだ、区切りもいいしここら辺で食べようか」



 シオンの言葉にみんなが頷き、円をつくるように腰を下ろした。

 俺は亜空間から街で買ったお好み焼きを取り出し順番に配っていく。それに続きリリィーが魔法で一時的なナイフとフォークを準備してくれた。



 みんなでいただきますの挨拶をして食事にする。

 やっぱり出来たてを食うのは最高だ。よく猫舌の人で、そこまでか?ってほど冷ます人もいるがあれはもったいないと思う。

 そういえば猫舌ってだいたい食べ方の問題らしい。これ豆知識な。



 おー、思ったより熱い!舌を火傷するところだった。

 他の奴らに注意するか。いやそんなテンプレドジっ子を発動するのはリリィーくらいだろう。うん、なら別にいいか。



「ひゃっ、あつっ」



 何やら悲鳴が聞こえたがきっと空耳だろ。



「うわ、大丈夫かい?気を付けなよ」



 優しいシオンが心配しているが当の本人はそれどころではない様子、口に手をあてながらはふはふ言っている。あれだけ大口でかぶりつくからだ。どんだけ食意地はってんだ。



 チラリとイブの方を確認する。



「おいしい...」



 こちらは全く問題ないようで満足げに食べていた。

 ...てか俺すげーな!この短期間でいつの間にかイブの表情がわかるようになってきた。些細な変化だがなんか雰囲気でわかるのだ、雰囲気で。



「これは美味しいね。このソースが癖になるよ」



 そう、日本のソースに比べれば味は落ちるがこの強めのスパイスが癖になる。一口食べるともう一口と思ってしまうのだ。



「でも... やっぱりマヨが欲しいところ...」



「それは同感だ」



 そんな雑談をしながら食べ進めるとあっという間になくなってしまった。俺が真っ先に食べ終わったので手持無沙汰だ。

 みんなの食いっぷりを見るにもっと買ってきても良かったかもな。

 そんなことを考えながら暫しぼーっとした時間を過ごす。



「ユウキ...」



「んー? え!?」



「最後の一口あげる...」



 隣を見ると、フォークに刺さったお好み焼きを俺の口元に突き出すイブの姿があった。



「え、あー...ありがとう」



 いやありがとうじゃねーよ!俺!

 これってようは、あーんってことだろ!



 横から、戸惑う俺をくすくすと笑いを堪える声が聞こえてくる。

 うるせーな!



「いいのか?」



「ん... あーんっていうのしてみたい...」



 それをストレートに言われるとこっちが引くに引けなくなるだろ。

 完全に退路を断たれた形だ。

 仕方ない観念しよう。



「それじゃあ、ありがたく」



 意を決して口を開く。

 シオンとリリィーが視界の端でニヤニヤしているのが見えた。

 あいつら!





「おいしい...?」



「おいしい...」



 味なんてわからん。あまりの恥ずかしさに自分でも頬が熱くなるのがわかる。



「「プフッ」」



(スキル《万有引力》を発動しました)



「うわっ」「きゃっ」



 遠くでなにか2つの物音がした。

 俺は恥ずかしさを誤魔化す為に咳払いをして、イブにだけ聞こえるように話しかける。幸い今他の二人は取り込み中らしいからな。



「イブ、こういうのは他の人がいないところでな」



「二人きりならいいの...?」



「...たまにならな」



「言質はとった...」



 イブが微かに微笑むのに、俺は目を逸らすしかなかった。

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