私の中の深い闇

けいこ

文字の大きさ
6 / 6

私の幸せ

しおりを挟む
嘘…

先生は、手術をこばんだ。

すぐの手術は危険だからって。

ふざけたこと言わないで。

お金はたくさんあるんだから、グズグズしないで早く私をもっと綺麗にして。

私は、先生に詰め寄った。

『わかりました、でも、責任は、一切負いませんよ』

先生の腕は、やっぱり確かだったわ。

無事に手術が終わった。

数日、入院して、私はまた生まれ変わる。

生まれてから、結局1度も幸せじゃなかった。

沙羅の人生は、母や真梨愛のせいで散々だったし、 真優の人生も直也にぶち壊された。

次は、なんて名前にしようかな。

こうやって、私は幸せになる…


考えただけで、気持ちが高ぶった。




朝になって、部屋のテレビをつけた。

ニュースだ。

『…真梨愛さんが襲われた事件で、警察は、同時期に行方が分からなくなっている有田沙羅さんが何らかの事情を知っているのではないかとみて、捜索を急いでいます』

ニュースでは、真梨愛が重傷と伝えた。

嘘よ。

真梨愛は死んだはず。

冷静になって考えた。

息があるか、心臓が止まったかなんて、確認してない。

死んでなかったんだ…

しくじった。


でも、今の私に警察がたどり着くのは絶対に無理なんだから、何も心配することはないわ、大丈夫よ。




直也君のことも、すぐにニュースになった。

監視カメラに写った女、真優の顔が公開されている。

沙羅も真優も、どこを探したって見つかりっこないわ。

生きていたとしても、真梨愛のことなんて、もう、どうでもいい。

私は、もうすぐ、とてつもない幸せを掴むんだから。


私を見下げて来た、最低の人間達を、今度は私が上から見下ろしてやるわ。




私はもう人を殺してるの、どんなことも怖くない。

あれから何日経ったかしら?

綺麗な顔、体、貯め込んだお金、 さあ、今日は、いよいよ私の新しい人生の始まりの日。

先生が、ゆっくりと包帯を外した。

沈黙の時間…

『目を開けてもいいですか?』

それでも、先生は何も言わない。

私は、待てなくて、目を開けたの。

鏡の中の私に会うために。


『え?』 




何?

これは何?

人間?

嘘よ、これは夢?

真優のような綺麗な顔は?

肌がガサガサで、目が腫れぼったくて、鼻も歪んでる、とんでもなく醜いものが、鏡の中にいる。

これじゃあ、沙羅よりもひどいじゃない。

『嫌!いやー!!』

病院中に響き渡るくらい叫んだ。

病院と行っても、汚いビルの部屋を改造して作ったような秘密の空間。

先生と看護師が1人。

私は、暴れ回った。


怖くて怖くて…どうしようもなく怖くて。




『だから言っただろう、危険だからって。お前が無理矢理やらせたんだ。俺は無免許なんだ、バレたら捕まるんだよ』

先生が豹変した。

看護師と2人で私を押さえつけ、注射をした。

私は…すぐに…眠って…しまった…

目が覚めたのは、夜中?

ここどこなの?

周りには、たくさんの木々。

まさか、森の中?

誰かが、スコップで土を掘り返している。

私は…もうろうとした意識の中で、すべて悟った。


殺される。




体は全く動かない。

もう、このまま、死んでしまうの?

私は幸せにはなれないの?

そう思った瞬間、心の中に、ふと、遠い昔の小さな記憶が蘇ってきた。

お父さんがまだ生きてた頃、お母さんと私の3人。

笑顔の記憶。

家族でよく遊びに出かけた。

お弁当持って公園に行ったり、水族館や動物園にもよく連れて行ってもらった。

私のことをとても可愛がってくれて…

幼い私は、笑ってるお父さんとお母さんが大好きだったんだ。

ずっと、無かったことのように封印してた思い出が、今になってとめどなく溢れ出してきた。


お父さん、お母さん…




そうだった…

私にも、幸せな時があったんだ…

いつの間にか、私はあきらめと憎しみの人生を歩んでしまっていた。

私は…

真梨愛や直也君よりも、もっともっと醜い悪魔になってしまったんだ。

私の人生は、ここで幕がおりる。

仕方ないわ、だって悪魔は生きてちゃいけないんだから。


声も出せない、動くことも出来ないのに、涙だけがどんどん流れていく。




先生と看護師が、私を穴に投げ落とした。

冷たい土が顔にかかる…

最後の瞬間、幼い頃の自分の笑顔が思い出された。

そう、幸せいっぱいの笑顔。

不思議だ。

なんだか心が温かい…

私の中の深い闇に、ひとすじの光が差したような気がした。


沙羅…さようなら…








 



 





 
 
 

 

 
 

 
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

25年目の真実

yuzu
ミステリー
結婚して25年。娘1人、夫婦2人の3人家族で幸せ……の筈だった。 明かされた真実に戸惑いながらも、愛を取り戻す夫婦の話。

与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし

かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし 長屋シリーズ一作目。 第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。 十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。 頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。 一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

処理中です...