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脅迫状に隠された思い

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『私も柊音さんと同じですわ。いったい脅迫状は何のために送られてきたんですの?』


一斉に黙る。


その時…


『これは可愛い絵ですね。白い便箋にこの絵…まるで小さな1輪の「エーデルワイス」ですね』


と、良子さんが言った。


全員がその瞬間、便箋の下の方に小さく描かれた花のイラストに目をやった。


『これ、エーデルワイスですの?』


と、亜矢奈さん。


『ええ。間違いないと思いますよ。エーデルワイスは奥様が大好きなお花なんです』


『お母様が?』


初音ちゃんが聞いた。


『はい。奥様はお花がお好きですからね。私もいろいろ教えて頂きましたよ。そうそう、奥様から「花言葉」もたくさん教えてもらいました』


みんなのカップに紅茶を注ぎながら、良子さんがニコニコして懐かしそうに話してくれた。


『良子さん。もしかして、エーデルワイスの花言葉を覚えてる?』


凛音が尋ねた。


『もちろんです。私はその花言葉が大好きですから』


『その花言葉は?』


みんなの視線が良子さんに注がれる。


『「大切な思い出」それに「勇気」です』


良子さんがそう言ったその時、凛音は机に手をついて立ち上がった。


『良子さん、それ、間違いない?』


『凛音様、間違いありませんよ。私は、まだまだボケてませんからね』


『凛音、どうしたの?何かわかったの?』


私は、ドキドキしながら聞いた。


『昨日、演劇部に行った時に見せてもらった台本』


『あ、うん。見たよね』


『脚本のところに数名名前があった。もちろん、脚本制作に携わった佐々木先生の名前もね。』


『あっ!!』


私と初音ちゃんが口を揃えた。


『佐々木先生の名前…「佐々木 勇気」です』


初音ちゃんが、怖々と言った。


『そんな…ということは?もしかして…』


柊音君が、驚いた顔で聞く。
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