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脅迫状の犯人の告白

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『君はこの脅迫状の存在を1度も言わない。おかしいよね。今初めて見て、これが何か知らないからだ。ついでに聞こう。この花、何か知ってる?』


凛音が、少し厳しめに言った。


『…こ、これ…』


『初見では全く何も言えないよね。これはエーデルワイスという花だよ。そして、この花の花言葉も…もちろん君が知るわけないよね』


黙ったままその場に立ちすくみ、動けない小川君が少し可哀想に思えた。


きっと…


中島さんをかばってる。


この人は…


「彼女を想ってる」んだろう。


『僕が取材の中で佐々木先生のことを聞いた時、小川君は全く動じなかった。本当は…先生のこと、良い先生だとは思ってなかったのに。素晴らしい演技力だよ。先生のことは誰にも言わず…自分が中島さんのことを守ろうと思ってたんだね』


その言葉に、小川君はうなだれた。


張り詰めていた物が一気に崩れてしまったんだろう。


見ていてつらくなる。


まだ高校2年の若い彼が、こんなにも憔悴してる姿をみるのは…悲しかった。


『…ごめんね、小川君。私、部長のクセに何も気付かなくて…本当に部長失格だよ。真由にも…申し訳ない…よ』


赤田さんは泣いた。


『部長は悪くない。何も悪くないから。気にしないで。悪いのは…佐々木先生だ』


小川君の強い思いが伝わる。


先生への「嫌悪感」で溢れたその心…


ずっと1人でいろいろ抱えてつらかったよね…


『…佐々木先生を突き落としたのは君じゃないよね?もう「嘘」はやめよう。これ以上の嘘は、同じように頑張ってきた赤田さんに対しても良くない。励まし合ってきた「仲間」の前では正直でいて欲しい』


凛音…


『…でも…』


『中島さんに全てを聞こう。それが1番いい。彼女の苦しみも解放してあげるべきだ。赤田さん、申し訳ないけど、携帯で彼女を呼び出してもらえないかな?』
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