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16 香水
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ダンジョンで私が直すことができたのは、
機械仕掛けの原始的な所だけだ。
歯車とベルトを組み合わせた物なら理解はできる。
動力は言い伝えの魔石でも使っていたのかもしれない。
それが精緻であるほど失ってしまうと元には戻らない
ココを設計した人物は最悪の事態になっても
人の手で動かせる非常用の仕掛けを作っていた。
用心深い人物だ。
鍛冶屋に頼めば、歯車は直せる。と思っていたのだが、
鍛冶屋のファイサル―は素材の出所を盛んに聞きたがった。
「こんなに精巧な刻みは知らない。
惚れ惚れする細工だ。
何で出来てるんだ?
純度も半端ないようだな」
遺跡でみつけたのだと打ち明ける。
彼は見たいと意気込んだが、砂漠の真ん中、
妖魔の森だと答えると黙ってしまう。
廃墟になっていて、まだ全然分からないことだらけなので、
見学しても無駄だろうという事も言い添えた。
成果を見せる時が楽しみだ。
ファイサル―は武器に詳しかった。
だから伝説の剣イブニアルの話にも乗って来た
「どうも、魔剣とも神剣とも言われてるが、魔術を唱えるって所は共通だ。
敵から見れば魔剣、味方からすると神剣ってオチだろうよ」
「コイツは喋ったか?」
鍛冶屋の質問にプッと噴だして首を振った。
「この剣は無口よ、幸いにしてね。」
”意識を解析して物体に定着させる実験”
という文献がチラリとよぎる。
「雷を呼ぶとか、光ったとか、火を使うとか魔術系統は光物が多いな。
剣のくせに切れ味の話はサッパリだ」
「魔法の剣だもの。切れ味なんかより効率がいいのよ、剣を交える前に敵が降参するからじゃない?」
「それじゃあ、存外、なまくらかも知れんぞ」
ダンジョンの古文書を思い出しても、イブニアルの切れ味については記載がない。
トリアの回顧録
◆ ◆ ◆
「次はいよいよ、サリアンの番だな。
鍵は香水瓶、ヒントは、【冬】一番の1から」
「彼はこちらに戻ってくるか?夢心地のようだが」
鍛冶屋は、未だ突っ立ったまま動こうとしない古物商を眺めた。
「あの様子だと、かなり難しいですね」
ディマ・スも頷いた。
片隅で座ったまま、成り行きを傍観している二人がいる。
ティシュカは、謎解きなど、どうでもよい。
他人事だが暇潰しにはちょうど良い娯楽だ。
「ああ、モフマール、オマエの気持ちは分かるぞ」
目を見張り、猿ぐつわの下でモグモグと何か訴える男に、ティシュカは笑った。
「オマエの姪っ子は、中々上手くやってたんだな。
大したもんだ。森の妖魔に番をさせて、宝を貯めてたってわけか。
オマエが変な気さえ起こさなきゃ、今頃、小金持ち位にはなってたろうに」
ティシュカは、ぺンでモフマールをつついた。
「詐欺師殿、目の前で財産をかっさらわれる気分は?被害者の気持ちをたっぷり味わえ」
「香水の季節と言えば花の咲く季節。冬の花の香水を一番の1に?」
「一番の1を開けて下さいますか?」
サリアンが指し示したのは、壁いっぱいに取り付けられた薬品の引き出しだった。
「香水はここに入れるのでしょうか?」
ディマ・スが言いながら、取っ手をひく。
「お、紙切れが入ってます。
八番の3、【夜】なるほど、分かってきました。
では、サリアン、一番、早く咲く冬花とやらの香水を入れて下さい」
鍛冶屋が試しに隣の引きだしを開けてみた、メモがやはり、入っていた。
「どうやら、全部の引き出しにメモが入っているらしい。順番にやるしかないようだな」
サリアンが「これだと思う」と差し出したのは雪が降るという異国の花だ。
「ここでは、一年中花が咲きますから、難しいですね。」
「雪、…見たことはあるの?」
アードリアが、夫ファイサルーに聞いた
「ああ、砂漠の明け方より寒い。真っ白でキレイだが、長居はしたくなかったな。」
「見てみたいわ。貴方は?見たことあるの?」
ヴィンラックは頷いた。
「ご主人と同意見ですね。初めは感動的ですが、直ぐに雪のない所が恋しくなりましたよ。」
引き出しに入れると、カタリと、重みで引き出しが鳴った。
「正解を引くと、音が鳴ってその中のメモが次のヒントを指すわけですか?」
「古い順に並べて総当たりできた刀の時より難易度があがってますね」
「薬草の引き出しは沢山あるのね。天井まである。3百くらいありそう。総当たりするのは嫌ね」
「次は 【夜】、八番の3
香水『月下の花』ですね。これなら直ぐに分かります。」
「月下美人は分りやすいですねえ、これくらい簡単だと楽なんだけど」
サリアンは微笑んだ。
「次は十番7 【海】
海、…海辺の花か?海藻の事?」
「サンゴは花みたいに綺麗だけど…」
香りはどうなのかしらねぇ アードリアも考え込む。
「浜夕顔?
鯨の事ですな。」
レノウが立っていた。
「堪能したか?」
ファイサルーが、からかった。
古物商は体を揺すりながら近寄ってきた。
「最終相続人が、気になりましてな。
別名、『イサナの涙』と言われてますわ。」
「なら、これです。」
サリアンが安堵の息を吐いて小さな香水瓶を取り出した。
「意外と重いです。」
また、微かにカチリと、音がした。
「良かった、あってるみたい。」
誰知らず、小声になる。
「 名前は素敵だけど、鯨って、なに?」
アードリアがいって、レノウは言いにくそうに答えた。
この辺の人間に海の事は、想像ができないからだ。
「国より大きな塩湖に住む竜とでも言いましょうかな、
建物ほどの大きさとか。
鯨の耳成軟骨とも、結石とも言われてますが、
ご婦人は余り知らない方がいいですわ」
「なぜ?」
ヴィンラックは微笑んだ。
「意外な部位に、素晴らしい香りは隠されているからです。
ありていに言うと、ゾッとする内臓のある部分とか、ですね」
アードリアは、顔をしかめた。
「確かに、知りたくないわねぇ。次は?メモがありますの?」
「えーと、【空】です」
「何でしょう?わかりますか?
空飛ぶもの?鳥でしょうか?タンポポや、綿毛、飛びクラゲ…」
サリアンが香水の香りを確かめている。
腕に付けて、鼻を近付け目を瞑る。
ディマ・スに香水瓶を渡して囁いた。
彼は、香水の瓶に鼻を近付け、頷いた。
「確かに、そうだ。この瓶の中身は水です。」ディマ・スは瓶を軽く振った。
「え?」
全員が、虚を突かれた様子だった。
「水?」
「…どういうこと?」
お互いに顔を見合わせた。
「わかった。きっと答はこうだ」
ヴィンラックは、そう言うと、瓶の中身をテーブルにあったワインカップに空けてしまった。
「そら、ではなく、空っぽと、言うことでしょう。」
「はぁぁ…トリアも、人が悪いですな」
「全くだ。」
サリアンはうなずいた。空になった香水瓶を恭しく引き出しにいれた。
微かにカチリと、音がした。
「 あってるみたいね。」
誰知らず、小声になる。
「12番の5です。」
「最後はヒント無しですか?」
「ええ、引き出しにメモはないですね」
「残っているのは、あの睡魔の樹の花から採った香水です」
「あれ?」
いまだ外で歌っている樹の歌を聞きながら、鍛冶屋は忌々しい顔をした。
「はい、トリアがアレの花を集めて蒸留したものです。
とても良い香りで、安眠できる薬です。
不眠で悩む人の垂涎の的らしい、とか」
「私は、噂しか知りませんな。金持ちしか手にできない。惚れ薬と言う噂もありますぞ」
「え?アンタ、トリアに言って、扱ってるのかと思った」
「ハァ…非常に魅力的な商品なのは確かですが、
アレを扱うと、もれなくお偉いさんの陰謀がセットになってきますわ。特に痴情のもつれはやっかいです。
面倒事の抱き合わせはゴメンですな。それより、どうやってあの樹に近づき花を採ったのです?」
「弓で」
弓で花を射った。
サリアンは言った。
「彼女は香が効きにくい体質なのもありましたね。
弓に細い糸をつけて花を射る。そして糸を手繰って、寄せる
これを繰り返すのです。
花を刈ると蒸留して香水を作りました。
私たちは、すぐに香りに当てられて寝てしまうから一人で行ってました。」
「今でもあの香りを嗅ぐと、今まで一番いい思い出が蘇ってきて夢心地になりますよ。
睡魔の樹にふさわしい番号は一番の1です。
香水の中の香水、世界に一本しかない。」
そう言って、サリアンは初めに開けた香水を出して、睡魔の香水を引き出しに入れた。
すると、カタリと音がして中ほどの引き出しが飛び出した。
中には鍵と手紙が入っていてあて名には”ヴィンラック様へ この遺書に承認を貰ってください。”
と走り書きがしてあった。
カタン、と音がして、ゴロゴロと重た物が、動いていく音が響く。
多分、トリアは楽しく盛り上げてパーティーでもしたかったのだろうな。
ワクワクする期待を感じながらヴィンラックは寂しく考えた。
どうなるのだろう、と皆辺りを見回す
薬草を入れた引き出しが、次々とせり出してくる。
カタン、カタン、回る歯車らしい音がする。
壁一杯の薬草引き出しが階段状態に並んで飛び出した。
天井…に?
上段に届く梯子を動かしてヴァンラックが調べる事になった。
ヴィンラックが天井を叩いてみる。人一人入れる程の穴が空いた
「天井の一部が1階の廊下に繋がっています。隙間に手紙もありました。
これはどういった風に使われたのでしょうか?」
「秘密の通路か。陰謀に使ったか、逃げ出すための非常脱出通路かな?」
ヴィンラックは手紙の束を手にして降りてきた。
機械仕掛けの原始的な所だけだ。
歯車とベルトを組み合わせた物なら理解はできる。
動力は言い伝えの魔石でも使っていたのかもしれない。
それが精緻であるほど失ってしまうと元には戻らない
ココを設計した人物は最悪の事態になっても
人の手で動かせる非常用の仕掛けを作っていた。
用心深い人物だ。
鍛冶屋に頼めば、歯車は直せる。と思っていたのだが、
鍛冶屋のファイサル―は素材の出所を盛んに聞きたがった。
「こんなに精巧な刻みは知らない。
惚れ惚れする細工だ。
何で出来てるんだ?
純度も半端ないようだな」
遺跡でみつけたのだと打ち明ける。
彼は見たいと意気込んだが、砂漠の真ん中、
妖魔の森だと答えると黙ってしまう。
廃墟になっていて、まだ全然分からないことだらけなので、
見学しても無駄だろうという事も言い添えた。
成果を見せる時が楽しみだ。
ファイサル―は武器に詳しかった。
だから伝説の剣イブニアルの話にも乗って来た
「どうも、魔剣とも神剣とも言われてるが、魔術を唱えるって所は共通だ。
敵から見れば魔剣、味方からすると神剣ってオチだろうよ」
「コイツは喋ったか?」
鍛冶屋の質問にプッと噴だして首を振った。
「この剣は無口よ、幸いにしてね。」
”意識を解析して物体に定着させる実験”
という文献がチラリとよぎる。
「雷を呼ぶとか、光ったとか、火を使うとか魔術系統は光物が多いな。
剣のくせに切れ味の話はサッパリだ」
「魔法の剣だもの。切れ味なんかより効率がいいのよ、剣を交える前に敵が降参するからじゃない?」
「それじゃあ、存外、なまくらかも知れんぞ」
ダンジョンの古文書を思い出しても、イブニアルの切れ味については記載がない。
トリアの回顧録
◆ ◆ ◆
「次はいよいよ、サリアンの番だな。
鍵は香水瓶、ヒントは、【冬】一番の1から」
「彼はこちらに戻ってくるか?夢心地のようだが」
鍛冶屋は、未だ突っ立ったまま動こうとしない古物商を眺めた。
「あの様子だと、かなり難しいですね」
ディマ・スも頷いた。
片隅で座ったまま、成り行きを傍観している二人がいる。
ティシュカは、謎解きなど、どうでもよい。
他人事だが暇潰しにはちょうど良い娯楽だ。
「ああ、モフマール、オマエの気持ちは分かるぞ」
目を見張り、猿ぐつわの下でモグモグと何か訴える男に、ティシュカは笑った。
「オマエの姪っ子は、中々上手くやってたんだな。
大したもんだ。森の妖魔に番をさせて、宝を貯めてたってわけか。
オマエが変な気さえ起こさなきゃ、今頃、小金持ち位にはなってたろうに」
ティシュカは、ぺンでモフマールをつついた。
「詐欺師殿、目の前で財産をかっさらわれる気分は?被害者の気持ちをたっぷり味わえ」
「香水の季節と言えば花の咲く季節。冬の花の香水を一番の1に?」
「一番の1を開けて下さいますか?」
サリアンが指し示したのは、壁いっぱいに取り付けられた薬品の引き出しだった。
「香水はここに入れるのでしょうか?」
ディマ・スが言いながら、取っ手をひく。
「お、紙切れが入ってます。
八番の3、【夜】なるほど、分かってきました。
では、サリアン、一番、早く咲く冬花とやらの香水を入れて下さい」
鍛冶屋が試しに隣の引きだしを開けてみた、メモがやはり、入っていた。
「どうやら、全部の引き出しにメモが入っているらしい。順番にやるしかないようだな」
サリアンが「これだと思う」と差し出したのは雪が降るという異国の花だ。
「ここでは、一年中花が咲きますから、難しいですね。」
「雪、…見たことはあるの?」
アードリアが、夫ファイサルーに聞いた
「ああ、砂漠の明け方より寒い。真っ白でキレイだが、長居はしたくなかったな。」
「見てみたいわ。貴方は?見たことあるの?」
ヴィンラックは頷いた。
「ご主人と同意見ですね。初めは感動的ですが、直ぐに雪のない所が恋しくなりましたよ。」
引き出しに入れると、カタリと、重みで引き出しが鳴った。
「正解を引くと、音が鳴ってその中のメモが次のヒントを指すわけですか?」
「古い順に並べて総当たりできた刀の時より難易度があがってますね」
「薬草の引き出しは沢山あるのね。天井まである。3百くらいありそう。総当たりするのは嫌ね」
「次は 【夜】、八番の3
香水『月下の花』ですね。これなら直ぐに分かります。」
「月下美人は分りやすいですねえ、これくらい簡単だと楽なんだけど」
サリアンは微笑んだ。
「次は十番7 【海】
海、…海辺の花か?海藻の事?」
「サンゴは花みたいに綺麗だけど…」
香りはどうなのかしらねぇ アードリアも考え込む。
「浜夕顔?
鯨の事ですな。」
レノウが立っていた。
「堪能したか?」
ファイサルーが、からかった。
古物商は体を揺すりながら近寄ってきた。
「最終相続人が、気になりましてな。
別名、『イサナの涙』と言われてますわ。」
「なら、これです。」
サリアンが安堵の息を吐いて小さな香水瓶を取り出した。
「意外と重いです。」
また、微かにカチリと、音がした。
「良かった、あってるみたい。」
誰知らず、小声になる。
「 名前は素敵だけど、鯨って、なに?」
アードリアがいって、レノウは言いにくそうに答えた。
この辺の人間に海の事は、想像ができないからだ。
「国より大きな塩湖に住む竜とでも言いましょうかな、
建物ほどの大きさとか。
鯨の耳成軟骨とも、結石とも言われてますが、
ご婦人は余り知らない方がいいですわ」
「なぜ?」
ヴィンラックは微笑んだ。
「意外な部位に、素晴らしい香りは隠されているからです。
ありていに言うと、ゾッとする内臓のある部分とか、ですね」
アードリアは、顔をしかめた。
「確かに、知りたくないわねぇ。次は?メモがありますの?」
「えーと、【空】です」
「何でしょう?わかりますか?
空飛ぶもの?鳥でしょうか?タンポポや、綿毛、飛びクラゲ…」
サリアンが香水の香りを確かめている。
腕に付けて、鼻を近付け目を瞑る。
ディマ・スに香水瓶を渡して囁いた。
彼は、香水の瓶に鼻を近付け、頷いた。
「確かに、そうだ。この瓶の中身は水です。」ディマ・スは瓶を軽く振った。
「え?」
全員が、虚を突かれた様子だった。
「水?」
「…どういうこと?」
お互いに顔を見合わせた。
「わかった。きっと答はこうだ」
ヴィンラックは、そう言うと、瓶の中身をテーブルにあったワインカップに空けてしまった。
「そら、ではなく、空っぽと、言うことでしょう。」
「はぁぁ…トリアも、人が悪いですな」
「全くだ。」
サリアンはうなずいた。空になった香水瓶を恭しく引き出しにいれた。
微かにカチリと、音がした。
「 あってるみたいね。」
誰知らず、小声になる。
「12番の5です。」
「最後はヒント無しですか?」
「ええ、引き出しにメモはないですね」
「残っているのは、あの睡魔の樹の花から採った香水です」
「あれ?」
いまだ外で歌っている樹の歌を聞きながら、鍛冶屋は忌々しい顔をした。
「はい、トリアがアレの花を集めて蒸留したものです。
とても良い香りで、安眠できる薬です。
不眠で悩む人の垂涎の的らしい、とか」
「私は、噂しか知りませんな。金持ちしか手にできない。惚れ薬と言う噂もありますぞ」
「え?アンタ、トリアに言って、扱ってるのかと思った」
「ハァ…非常に魅力的な商品なのは確かですが、
アレを扱うと、もれなくお偉いさんの陰謀がセットになってきますわ。特に痴情のもつれはやっかいです。
面倒事の抱き合わせはゴメンですな。それより、どうやってあの樹に近づき花を採ったのです?」
「弓で」
弓で花を射った。
サリアンは言った。
「彼女は香が効きにくい体質なのもありましたね。
弓に細い糸をつけて花を射る。そして糸を手繰って、寄せる
これを繰り返すのです。
花を刈ると蒸留して香水を作りました。
私たちは、すぐに香りに当てられて寝てしまうから一人で行ってました。」
「今でもあの香りを嗅ぐと、今まで一番いい思い出が蘇ってきて夢心地になりますよ。
睡魔の樹にふさわしい番号は一番の1です。
香水の中の香水、世界に一本しかない。」
そう言って、サリアンは初めに開けた香水を出して、睡魔の香水を引き出しに入れた。
すると、カタリと音がして中ほどの引き出しが飛び出した。
中には鍵と手紙が入っていてあて名には”ヴィンラック様へ この遺書に承認を貰ってください。”
と走り書きがしてあった。
カタン、と音がして、ゴロゴロと重た物が、動いていく音が響く。
多分、トリアは楽しく盛り上げてパーティーでもしたかったのだろうな。
ワクワクする期待を感じながらヴィンラックは寂しく考えた。
どうなるのだろう、と皆辺りを見回す
薬草を入れた引き出しが、次々とせり出してくる。
カタン、カタン、回る歯車らしい音がする。
壁一杯の薬草引き出しが階段状態に並んで飛び出した。
天井…に?
上段に届く梯子を動かしてヴァンラックが調べる事になった。
ヴィンラックが天井を叩いてみる。人一人入れる程の穴が空いた
「天井の一部が1階の廊下に繋がっています。隙間に手紙もありました。
これはどういった風に使われたのでしょうか?」
「秘密の通路か。陰謀に使ったか、逃げ出すための非常脱出通路かな?」
ヴィンラックは手紙の束を手にして降りてきた。
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