歩く死者

夏枯 つきひ

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20 影の共犯者

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 戯遊詩人ヴィンラックは睡魔の森からでて、
 やっと現実に戻ってきた気持ちになった。
 砂漠と森の境界線が、宿に泊まらない旅人のもう1つの道だ。
 こちらの旅路を選ぶと2週間以上かかる。水にも気を使う。
  
 周りはポツリポツリと、アチコチに草木が点在し、
 その向こうはクリームのような優美な砂丘がうねって重なりあっている。
 ヴィンラックはトリアと同じような歩き方をしていた。
 足場が悪い荒野で杖をついて、歩くのは確かに安心感があった。
 睡魔の森は控えめに言っても波乱万丈で、疲れた。
 頭が痺れて動かない程、疲れた。
  
  
 馬車から降りたのは、独りで考えたかったからだ。
  
 まだまだ混乱している。
  
 傷つけられた死体、殺人鬼ティシュカの悲鳴、
 そして今まで立っていた睡魔の樹は、みるみるうちに砕けて倒れていった。
 その力を移し替えたと見るべきだろう。
 ティシュカから沸きだすように次々と根を出して、
 さわさわと、葉が生い茂り、金の雨のような細い気根が垂れ下がる。
 本当に見たとは、思えなかった。
  
  
 皆は真っ青になって帰る支度をととのえた。
 鍛冶屋はトリアの武器を入るだけ積んで、
 また、来ることは無いかも知れないと、サリアンに詫びた。
  
 レノウは、さすが商売人だけあって、今後も宜しゅう。と握手していたが、
 顔色には血の気がなかった。
 宿の二人も、かなり狼狽えている様子だった。トリアの穴を埋めるには、どうするつもりなのか。
  
 ヴィンラックは、汗を拭きながら腰を下ろした。
 未だに分からない事がある。
  
 結局、死体は誰が動かしたのだろう?
  
 初めの子供の死体は確かにモフマールが保身で運んだのだろう。
  
 だが、直ぐに捕まって、ずっと監禁されていた。
 ティシュカが飛び出した時、三体の死体を並べて指を折ったのは、誰がやったのだろう?
 死体が勝手に歩いたならともかく、第三者が動かさなかったら、不可能だ。
 歩き回る死体なんて、歌にもできないぞ。
  
 何もかもが1度に起こって爆発したような印象を受ける。
  
 疲れていて頭が回らない。まあ急ぐ旅ではないとヴィンラックは野宿をする事にした。
 此処はもう妖魔の森ではない。水も食料もたっぷりある。
 香料の効いた肉と玉ねぎをふんだんに使ったディマ・スのパイを賞味しながら
 ゆとりのある野宿を楽しくおもう。
  
  
 薪は立ち枯れした木が在ったので手斧で切り取り、お茶を沸かす。
 暖をとりながら、ヴィンラックは目まぐるしく頭を回転させたが、
 やはり、死体が動いた原因は、分からなかった。やっと難を逃れた気がする。

 体が温まり満腹。砂漠兎が顔をのぞかせるなら、この辺は魔物はいない。
  
 トリアから譲り受けた仕込み杖を抱いて彼は、うつらうつらした。
  
  
「悩みか?」
 彼は、懐が暖かいのに気がついた。
 身体が温まり気持ちいい。彼は微笑んだ。
 ボンヤリとみると、胸元に赤光を放つ宿星が煌めいていた。
  
 今、オマエがしゃべったか?夢うつつに彼は、微笑んだ。
  
 馬鹿げているのは分かっていた。
 ヴィンラックは目を擦り、周りをゆるりと見まわした。
 砂と岩の砂漠の中、暮れていく夕陽に染まる自分だけだ。
 …夢か。
  
「何百年以上しゃべってなかったからな。」
 また、声が聞こえた。
  
「誰だ?」
 鋭い声を上げた。今度は気のせいではない。
  
「その質問は、余り意味はないな…最近の呼称なら、トリアの杖か?」
  
 ヴィンラックは驚いて杖を放り出した。
 杖はコロコロと砂地に転がった
  
「乱暴だな、失礼だぞ。」
  
 鞘から少し抜けた真っ直ぐで細身の刀身が覗いている。
 根元に謎の突起があると聞いていたが、今やおぼしき所には大きな宝石が輝いていた。
  
 スタールビーだ。透明な深紅に光の筋がクッキリ浮かび上がっている。
  
 ごくりと喉が鳴る。
 こんなの見たことない、凄い価値がありそうだぞ
  
 君がなにを考えてるのは分かるぞ。
 声は、笑っているようだった。
  
「確かに凄い値段で売れる。だが、私がしゃべった途端に買手は消えるな。」
 夢なのだろうか?私の頭はおかしくなってしまったのか?
  
 ヴィンラックが後退りする
「色々あったからな。仕方ない事だ。」
 宝石は彼を慰めた。
  
「さて、どうする?私を置き去りにして立ち去るか?構わないぞ、誰が通るから拾ってくれる。
 私が気に入った人間に会うまで、私は売り買いされ、転々とするだけだ。」
  
「…トリアの杖、?なのか?一体…あんたは、何者なんだ?」
「分かりやすく言うと、伝説の魔剣、だな。」
 剣は愉しそうに言った。
  
  
「トリアは、知ってたのか?それで、私に託したのか?」
  
「いや、彼女は死ぬ迄私には気がつかなかった。
 お嬢ちゃんは、言ってみれば私を砂トカゲから出してくれた恩人だからな。怖がらせたくない。」
 仕込み杖には感情があるようだ。
「ま、君の所に来たのは天祐、天助だな。」
  
「魔剣のクセに神をかたるか。」
  
 ヴィンラックはようやく余裕がでて、口が滑るようになった。
  
「神の御意志は、敬意を払わんとな。なにをかくそう私も神剣と吟われた事もあるのでな。
 さて、誰が死体を運んだか分かったな?」
「いや、全く。脚もない剣に死体が運べるとはおもえない。」
  
「意外に、鈍いな…」
 剣は渋い口振りになった。
「私は魔剣、魔法位は使える。」
  
 成る程…
 いやいや、魔法が使えるなら、砂トカゲから出られなかったのは変だ。
  
「あの時は、エネルギー切れで、力が出なかった。」
  
 とんだ どんでん返しだ。睡魔の樹からほうほうの呈で逃げ出したのに、魔剣に遭遇した。
 今のところ、魔剣は襲いかかる様子はないが。
  
「死体に何故あんなことをしたんだ?
 指を折って放り出すなんて乱暴だ。」
  
  
「単純な事だ。
 トリアの願い事を叶えるためだ。それにアレは幻術だ。
 効果的だった、それは認めるだろう?
 彼女の願いは、息子を殺したティシュカに報いを受けさせる事だ。
 それだけだった。
 自分がどうなろうと、気にしなかったろうよ。
 ティシュカは、数百年は苦しみから逃れられぬ。身体中を虫がはいまわり、葉が擦れ合っても痛みがある。
 強い日差しに焼かれ、凍る冬にじっと耐える、それは夜も昼も続く。そうなるように作られたのだからな。」
  
「…トリアの杖よ、君はあの睡魔の樹の事をを知っているのか?」
  
「勿論だ。初代の樹には、同情を禁じ得なかった。彼は、謀略に嵌まっただけだったからな。
 助けるには、苦労したさ。」
  
「え…助かるのか?」
 ヴィンラックは驚いて聞き返した
  
  
「死を持って。な」剣は重々しく言った。
  
「代わりを用意せよ。幼子さえ屠る無情の者を。三日三晩の審議の末に決意せよ。
 死によりて、解放は成される。その名を問え、創造者の名で返事せよ。
  
 樹の成就は、自分の重荷を受け渡す相手の名前を知らなければならない。
 そして、あの生物を作り出した魔導師の名前を言い聞かせなければならない。
 それを知るのは、今となっては私だけだ。
 君は正しく行動した。私を殺人鬼の耳元に差し出しただろう。お陰で大声で怒鳴らずにすんだよ。
  
 先代も、今の新人ぐらい酷かった。トリアの復讐の望みがなかったら、そのまま放っといたが。」
  
  
  
「あー、ちょっと待ってくれ、あなたが、例の恋する樹とやらの世代交代を
 コントロールしたような言い方だったが?」
  
「そう、言ったが?偶然の出来事だと思ってた訳ではないだろう?」
  
「確かに、変だと思っていたが…」
  
「お嬢ちゃんは随分と前から準備した。
 最後の最後で輪が締まるかと言う寸前で、己が息絶える時の無念を想像してみろ、
 私は少し最後の詰めを手伝ったに過ぎない。」
  
  
「彼女の計画だった?」
「中途で死ぬのは、計画外だ。人の命は花火のようなものだからな。美しくすぐに燃え尽きる。」
 ヴィンラックは、黙って焚き火が踊るのを見た。
  
 能天気に見えた…トリア
  「睡魔の樹がティシュカに恋するのも分かってたのか?」
  
「そこは、賭けだな、ただある程度、樹に刺激を与えていたな。
 弓で花を射落としたり、枝を伐ったりして。
  
 決定的なのは、殺人鬼に死体を持ち込ませた事だ。
 殺人鬼”指折り”は一か月に一回、いつも満月に犯行をしていた。
 予測してもう一人、役人を招待して、保険に鍛冶屋まで同乗させた。
  
 碑文に書かれてるくらいだから、睡魔の樹も、”指折り”に一目惚れするだろうて。
  
 突然相乗りしてきた奴等のおかげで、死体を始末しそこなった殺人鬼は、夜中にこっそり棄てようとした。
 だが、もう睡魔の樹は殺人鬼”指折り”に後継の監視を始めていた。
  
 君を迎えに出ていたのを覚えているか?
 トリアは君を待つかたわら、殺人鬼が動けないように見張っていたのだ。
 あの位置は、宿からも良く見える場所なのだ。
 トリアがあそこで釣りをする振りをしていたから、殺人鬼は遺体を運び出せなかった。
  
 詐欺師叔父さんはご愛嬌だったな。
 殺人鬼が夜に動くのは、予想できたから、ずっとこっそり監視していた。鍵の束は撒き餌だな。
 欲の皮の突っ張った詐欺師が思惑通り食い付いて、捕まったのだ。
 計画通りだな」
  
  ひんやりした森の外れの空気は、乾いている。
 やっと湧いてきたお湯で、ヴィンラックはお茶を入れた。剣は暫く黙っていた。
  
「樹に我々が閉じ込められた時のトリアは、計画の殆どが成功して、踊る程喜んでいたよ」
  
 確かに、あの時の彼女は、酔っているのかと思った程、陽気だった。
  剣の声の調子はトリアを忍んでいるのか、静かな暗い声色だ。
  
「当初の計画は二つ。プランAは単純に樹の後継者になって1000年の苦痛を味わう。
 樹が奴を気に入らなかった場 合プランB----詐欺師の鼻先で遺産を分け与え、
 最後に殺人鬼の正体を公表して、もう一人の役人に証人になってもらおうとしたのだ。
 一般人の証言では、握り潰されるかもと考えてな。
 殺人鬼には痺れ薬を盛る予定だった。そんな計画を知らないサリアンが普通の茶を出した。
 足止めをするために私が動くしかなかった。
 トリアは勿論プランAを希望していた。途中降板してお騒がせになってしまったが」
  
  
  
 お嬢ちゃんは有能だったが、ここぞという時に運がない人間だった。なかなか、苦労したぞ。
 こっそりヒントを出して碑文を解く手伝いをしたり。宝のありかをそれとなく示したりしてな。
  
 せっかく見つかった宝を、捨て値同然で安く売っ払うのにも困った。
 剣のボヤキに思わずヴィンラックは、笑った。
  
「アードリアとかいう女が来たのは計画外だったな。
 トリアは、一言いわずには、いられなかった」
「例え、鍛冶屋夫婦の仲を裂くことになろうとも…か。」
  
「彼女の中では、ケチな詐欺師叔父さんより、許せなかったはずだ。
 アードリアさえ、息子をちゃんと見ていてくれたら。とな。」
  
  たしかにアードリアのやったことは罪深い。
 トリアの息子は殺されてしまい、恋人は拷問の末に視力を奪われてしまった。
 あの夫婦はどうなってしまうのだろう。
  
「樹が奴に恋をした時トリアは勝利を確信したろうな。
 最後まで自分で見届けたかったろうが、その前に命が尽きたのだよ。
 だが、最後の彼女は、安堵して解放されていたぞ。

 …さぁ、わかったな。」
  
「トリアの杖よ、あんたは、自分のことを魔剣と言ったな。伝説の魔剣なのか?」
  
「いかにも。」
  剣は短く笑った。
「神剣ともいうぞ。私には沢山の名がある。そして名の数だけ逸話がある。」

 吹いてくる風が頬を撫でて、ヴィンラックは微笑んでいた友人を思い出した。
 確かに安心していたように見えたな…
「その名前の数だけある逸話を聞きたいもんだ」

「いいとも、時間はたっぷりありそうだな?ただし…トリアの杖の物語は、これで終いだ。」


                 終



 ありがとうございました。
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