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「あー及川って誰?てか暑苦しいから離して」


返事をしながら肩にまわっていた手を勢いよく叩き落とす。稔は痛ってぇなと手を擦りながらこっちを見てきたが無視した。


「春兎、及川知らんの?あのおっぱいでかくて美人の及川恵!!」


「知らない。てか告白してきた女の顔なんて興味無いからいちいち覚えてない」


「そうかー春兎は女に興味無いのか」


「誤解されるからそういう言い方やめてくんない?」


女に興味が無いというよりぶりっ子の女が嫌いなだけ。俺に媚びてきて気持ち悪い、あと簡単に股を開く女も嫌い。


「俺の好みは大人しそうな純情な子だからビッチは好みじゃないだけ」


「うわ~元遊び人がよく言う。及川には同情するわ」


「うるさいよ稔」


「あ、じゃあさ純情そうなら男でもいけんの?」


「はぁ?なんでそうなるわけ?」


稔の言い出した言葉に溜息しか出てこない。俺はビッチな女が好きじゃないだけで恋愛対象は女だ。
いくら純情そうでも男なんか好きになるわけがない。


「ほら、春兎気づいてるか?お前高城にずっと見られてんぞ?」


「高城?誰それ」


稔が指差す方を見るとたしかに陰ながらチラチラとこちらを見ている1人の男がいた。
…あれが高城?正直どこにでもいそうな顔をした男が落ち着きない感じでソワソワしている。

何?俺の事見てるわけ?稔の言葉が本当かどうか確かめる為、俺もじーっと高城を見返してみた。


「っ!!」


一瞬だけ俺と目が合った高城は顔を両手で隠して壁に隠れてしまった。そして両手で顔を隠したまま壁から姿を表し、指の隙間からもう一度俺を見ている。
だが向こうも俺が見ていることに気づいたのか顔を隠したまま背を向けて走り去ってしまった。

…え、何あれ可愛い。めっちゃ小動物感する。いじめて甘やかしてドロドロにして俺だけしか見えないようにしたい。この時初めて俺にも独占欲がある事を知った。


「なぁ稔、高城って下の名前なんて言うの?」


「は?確か昴だった気がするけど…何、もしかしてガチで惚れた?」


「うん、男なんてありえないって言ってた数分前の自分がありえないほど惚れた」


「ま、まじか…」


「うん、あの子は俺のものだから。誰にも渡さない」


その時の俺の顔は相当やばかったのか稔は苦笑いしていた。

でもしょうがないよね?初めて自分のものにしたいって思う存在に出会えたんだから。
そもそも俺を最初に見つめてていたのは昴だし、俺のものにしたって文句ないよね??


「ふふふ、どうやって昴を落とそうかな~ね、稔」


「あーそうだな(ごめんな高城)」


この時稔は昴が春兎を見ていると本人に言ったことを後悔しながら今後の事に頭を悩ませるのだった。

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