キャプテン・ドラゴン

ヒルナギ

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第六話

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 リンは、暗い海の底から藻掻き出るように意識を取り戻す。加速は終わっており、無重力状態になっていた。現在の状況を確認するため、センタースクリーンを見る。船はヒエロスムスの重力圏から離れ、星間航路へ向かっていた。

「ちょっと、女の子が乗ってるんだから、もう少し操船を考えなさいよ!」

 リンの叫びに耳を貸さず、ヤンとビリーはコンソールに集中している。よく見ると、センタースクリーンにも警告の表示が出ていた。

 リンも、手元のコンソールを操作する。そこに表示されたのは、船が接近しているというメッセージであった。さらに情報を要求すると、カブト虫のような甲虫を思わす形をした船が表示される。

 船首にカブト虫の角を思わす細長い主砲があり、船体には防御用可動装甲板を兼ねた放熱板が装備されていた。放熱板は、通常航海中であれば、熱放射の為、広げられているものだ。しかし、コンソールに表示されたその姿は、放熱板を閉ざしている。臨戦態勢にあるらしい。

 その船の情報をさらに要求すると、メッセージが表示された。

「ケルベロス級銀河パトロール巡洋艦ですって!」

 リンの叫びは、再び無視された。リンは通信ログを、コンソールへ要求する。そこにあるのは、パトロール船からの発砲の警告ばかりであった。

「ちょっと、どうするのよ」

 リンの問いは、無視される。ケルベロス級巡洋艦の主砲であれば、一撃でこの老朽化した輸送船を沈めるだろう。しかし、ヤンもビリーも忙しく手は動いているが、落ち着いている。

 一瞬、ブリッジの照明が消えた。センタースクリーンも手元のコンソールも、暗くなる。そして、地鳴りのような衝撃が船に走った。

 照明が戻ると同時に、警報が狂った叫びのように鳴り響く。センタースクリーンに赤字の障害メッセージが延々と表示されていった。手元のコンソールは沈黙したままだ。

 ヤンが警報と障害表示を打ち切ったらしく、ブリッジに静寂がもどる。

「一発喰らっちゃいましたね。まだ、バリアは保ってます。それとキャプテン、もうでれますよ」

「了解」

 ビリーは、体を固定するハーネスを外し、ブリッジのハッチへ向かう。リンは、慌てて自分もハーネスを外し、ビリーを追った。

 剥き出しのケーブルやパイプが縦横に走る通路に出て、リンはビリーに向かって叫ぶ。

「ねぇ、どこいくのよ!」

 ビリーが物憂げに応える。

「ブリッジに戻ってろ。次弾がきたら、怪我するぜ」

「怪我するって、それ以前に吹っ飛んじゃうよ、こんな船」

 ビリーはジゴロが情婦に見せるような笑みを、リンへ投げかけた。

「心配するな。対ビーム砲バリアは戦艦並みのを装備している」

「そのわりには、システムがストールしてたじゃない」

「それは、航行システムが安物だからだ」

 リンは、絶句した。ビリーは、スクリーンの中で俳優が見せるようなウィンク

を、リンに投げかける。

「まぁ、ブリッジのコンソールで見てろって。おれが巡洋艦を沈めるところを」

「って、武器があるのこの船?」

「ないよ」

 ビリーはもう移動し始めている。その背中へリンが叫んだ。

「そんな説明じゃ、あんたにぞっこんの恋人だって、納得しないよ!」

 リンはブリッジに戻ると、ブースに入り体をシートへ固定する。リンは、忙しそうにコンソールを操作しているヤンに向かって、叫ぶ。

「ねえ、ビリーは一体武器もなしで、どうやってあの巡洋艦を沈めるの?」

 ヤンはぶっきらぼうに言った。

「決まってるじゃねぇか」

 ヤンは、ちらっと目をリンに向ける。その目は、まじめだった。

「体当たりだよ」

「聞いたわたしが、馬鹿だったわ!」

 その瞬間、ずん、と振動が走る。着弾のショックとは別物だ。

 リンは、コンソールを操作する。コンソールに、船が何かを射出したという表示が出ていた。リンは、その射出物を表示するように、指示する。

「なにこれ?」

 リンは、我が目を疑う。そこに現れたのは、黄金に輝く双頭の龍の姿であった。それは、お伽噺に語られる英雄や騎士と戦った龍、そのままの姿。長く蛇のようにくねる首。深紅に輝く4つの瞳。大きく広げられた金色の翼。長いのたうつ尾が二つ、体の後ろに延びる。その異様な姿は、リンの思考を停止させた。

「コンソールが狂ってるわよ、ヤン」

「そうじゃねぇ。知らなかったのか?」

 ヤンは、狼のような笑みを見せる。

「キャプテン・ドラゴンと呼ばれる訳を」
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