世界を救ったゲーマー・ファントムMAYAは、一対一で決闘する

ヒルナギ

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第十二話

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 おれたちは、公安関係者らしき男にその部屋へ案内された。そこは元々デバッグ室だったのを会議室として使っているらしい。プロジェクターにはテレビカメラを通じて会議に参加しているらしい人影が見える。中には総理大臣らしい人も見えた。
 会議卓に座っているのは背広姿のおっさんたちに、制服姿の国防隊関係者、それに作業着姿の技術者たちである。ナミは一人立っていた。ビジネススーツ姿のナミは日頃会う時のような派手さは無いが、強烈なオーラを放っているためシャネルのスーツ姿よりも遙かに存在感がある。
 ナミはおれたちをみると、手をあげて言った。

「彼女が今着きました。御子柴摩耶、通称ファントムMAYAです」

 会議室がどよめく。MAYAは例によって、孤独を纏った毅然さを全身から放っている。おそらくお偉い官僚の方々にはあまりうけがよくないだろう視線で、彼らを見ていた。

「ゼロは本当に乗ってくるのかね?」

 ナミは強い光を放つ眼孔で、発言したおっさんを睨む。

「もちろんです。何度も説明したようにゼロはマインドコンンロールを受けていない、自由意志で参加している傭兵のような立場です。しかし、彼は傭兵のようなモチベーションを持っていない。彼にとっては全てがただのゲームに過ぎません。だからより危険だといえますが。その彼がMAYAには一度対戦で破れています。MAYAとの戦いは、彼としては望むところのはずです」

 おっさんは黙ってしまった。おれはやれやれと思う。ナミのシミュレーションではゼロの乗ってくる確率は五分五分としていたはず。ああ言いきったら、しくじった時難しくなるだろうにと思う。
 別の恰幅がいいおっさんがくちを開く。

「やろうじゃないか。議論している時間は無い。失敗しても失うものは無い」

 すると別のおっさんが異を唱える。

「ここの最終決定権はあなたにある訳じゃない。総理の判断も必要だろう」

「だから今という状況を理解しているのかと言ってる」

 目の回りに隈を作った甲賀がおれたちに近寄ってきて囁いた。

「このおっさんらの議論につきあうことは無い。外で待ってろ。結論が出たら知らせる」

 おれはうんざりした顔の甲賀に囁く。

「大丈夫か?」

「おっさんたちの議論を聞いてるのは拷問に近い。でも少しなれたよ」

「お気の毒様」



 おれたちが部屋の外で待つこと五分。ナミの咆吼が外まで聞こえた。会議は終わりを告げたようだ。ナミが一人で出てきた。多少疲れた顔をしている。

「ったく何決めるにも、うだうだうだうだ。ゲーハのインポ野郎ども」

「やるんだろ」

 おれの問いにナミが頷く。

「当たりまえだのクラッカーよ。MAYAさん、こっちへ」

 甲賀と数人の技術者も会議室からでてきて、一緒に移動する。例のテストルームに入ると、F4EJのブースに座ったMAYAに甲賀がブリーフィングを始めた。

「恭平、ぼっとしてないで。あなたにも仕事があるのよ」

「なんだよ」

 ナミの呼びかけに応じてコンソールの前に座る。

「このコンソールを通じて、ゼロの操作している端末にメッセージが送れるの」

「何をさせる気だ」

「決まってるじゃない」

 ナミはにんまりとサディスティックに笑う。

「ゼロとの交渉役はあなたに任すわ」

「冗談」

「いいこと、この間ゼロはあなたにだけメッセージをよこした。同じ元パイロットとして彼はなんらかのシンパシィをあなたに持ってるのよ」

「頭のいかれたテロリストにシンパシィ持たれてもなあ」

「つべこべ言わないでやるの」

 おれは端末に向かってメッセージを打ち出す。

『ようゼロ。元気にやってるかい』

 ナミは苦笑する。

「あなたねぇ、もう少し考えたら?」

「時間が無いんだろ、おれに任せるんじゃなかったのかい?」

 ゼロからメッセージが返った。

『待ちかねたよ、シデン。で、君が相手をしてくれるのか?』

『いや、おまえの一番望む相手さ。ファントムMAYAだ』

 ゼロは暫く沈黙する。メッセージが再び届く。

『最高だよ。条件はただひとつ。一対一だ。一対一でMAYAとやらせろ。MAYA以外の機体が見つかりしだい、ウィルスを発射する。いいな?』

『OK』
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