3 / 10
第三話
しおりを挟む
おれも、車の操作に没入し、意識をシャットアウトした。
おれは機械。
世界はうすっぺらくでたらめで、ひとを容赦なくただのものへと貶めたりもするけれど。
おれは今機械であり、なにも形を作れない渦巻く闇と影たちを切り裂き引き裂き砕いて散らして、道を造り出してゆく。
そう。
おれは、自分の道を造り出していた。
おれはおれの中で完結し、より深くおれの中に沈み込んでゆく。
そのため、おれは自分自身の追憶に飲み込まれていった。
そう、あれは一年前のことだったか。
❖
おれはようやく、アジトのひとつに辿り着く。
滴る血が床を濡らしてゆくが、気にしている余裕は無い。
おれは殺風景で作業用の机と金属のベッドがあるきりの部屋で、血に塗れ傷だらけになった革のジャケットを脱ぎ去る。
はっ、と気配を感じ腰につけたコンシールドホルスターからデトニクス四五コンバットマスターを抜いて、ベッドに向けた。
迂闊だった。
ベッドにひとがいることに、気が付かないとは。
おれは、片手でセフティを外したデトニクスを構えたまま、ベッドのシーツを剥ぎ取る。
中から出てきたのは、おんなだった。
雪のように白い肌ををして、流れる水で作ったというかのように滑らかで流線形の裸体をもつおんなは、眠気まなこをひらく。
不機嫌な猫のように眉間に皺をよせたおんなが、呟いた。
「え、何? 眠いんだけど」
おれは、苦笑しデトニクスにセフティをかけると作業机に放り出す。
おんなは眠たげな目を瞬かせて、おれを見ている。
そう、昨夜拾ってここに来るようにいったおんなだ。
おれは血に塗れ、あちこちを切り裂かれ襤褸布のようになった服を脱ぎ捨ててゆく。
「なんか随分、賑やかな身体になってるね」
おんなは寝ぼけた声をだし、おれは苦笑する。
傷口からは血が流れ続けているが、とりあえず放っておいておれは冷蔵庫からバドワイザーを出しそれでモルヒネの錠剤を胃へ流し込む。
「あんたは、裁縫は得意か?」
おれの問いに、おんなは目を瞬かせる。
「え、苦手かな?」
おれは、薄く笑う。
「そうか、だったらいい」
おんなは不思議そうな顔をして、問を発する。
「まさか、そこの服を縫うわけじゃないよね」
おれはミネラルウォーターで傷口を洗うと、消毒してベッドに座る。
「ああ。服じゃあ無くて傷を縫うんだ」
おんなは、目を瞬かせる。
「いや、それは裁縫得意でも無理かな」
おれは傷口を縫いながら、無理やり笑みを浮かべる。
「簡単さ、あんたでもやればできるよ」
おんなは、むうっとうなる。
「じゃあ、こんどやってみるわ」
「ま、やるなら自分のをな」
おれは機械。
世界はうすっぺらくでたらめで、ひとを容赦なくただのものへと貶めたりもするけれど。
おれは今機械であり、なにも形を作れない渦巻く闇と影たちを切り裂き引き裂き砕いて散らして、道を造り出してゆく。
そう。
おれは、自分の道を造り出していた。
おれはおれの中で完結し、より深くおれの中に沈み込んでゆく。
そのため、おれは自分自身の追憶に飲み込まれていった。
そう、あれは一年前のことだったか。
❖
おれはようやく、アジトのひとつに辿り着く。
滴る血が床を濡らしてゆくが、気にしている余裕は無い。
おれは殺風景で作業用の机と金属のベッドがあるきりの部屋で、血に塗れ傷だらけになった革のジャケットを脱ぎ去る。
はっ、と気配を感じ腰につけたコンシールドホルスターからデトニクス四五コンバットマスターを抜いて、ベッドに向けた。
迂闊だった。
ベッドにひとがいることに、気が付かないとは。
おれは、片手でセフティを外したデトニクスを構えたまま、ベッドのシーツを剥ぎ取る。
中から出てきたのは、おんなだった。
雪のように白い肌ををして、流れる水で作ったというかのように滑らかで流線形の裸体をもつおんなは、眠気まなこをひらく。
不機嫌な猫のように眉間に皺をよせたおんなが、呟いた。
「え、何? 眠いんだけど」
おれは、苦笑しデトニクスにセフティをかけると作業机に放り出す。
おんなは眠たげな目を瞬かせて、おれを見ている。
そう、昨夜拾ってここに来るようにいったおんなだ。
おれは血に塗れ、あちこちを切り裂かれ襤褸布のようになった服を脱ぎ捨ててゆく。
「なんか随分、賑やかな身体になってるね」
おんなは寝ぼけた声をだし、おれは苦笑する。
傷口からは血が流れ続けているが、とりあえず放っておいておれは冷蔵庫からバドワイザーを出しそれでモルヒネの錠剤を胃へ流し込む。
「あんたは、裁縫は得意か?」
おれの問いに、おんなは目を瞬かせる。
「え、苦手かな?」
おれは、薄く笑う。
「そうか、だったらいい」
おんなは不思議そうな顔をして、問を発する。
「まさか、そこの服を縫うわけじゃないよね」
おれはミネラルウォーターで傷口を洗うと、消毒してベッドに座る。
「ああ。服じゃあ無くて傷を縫うんだ」
おんなは、目を瞬かせる。
「いや、それは裁縫得意でも無理かな」
おれは傷口を縫いながら、無理やり笑みを浮かべる。
「簡単さ、あんたでもやればできるよ」
おんなは、むうっとうなる。
「じゃあ、こんどやってみるわ」
「ま、やるなら自分のをな」
0
あなたにおすすめの小説
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる