ミュータント少女 vs ニンジャ【R18】

ヒルナギ

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第十話

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 おとこは、一発の銃弾が放った音により目覚めた。

 おとこは振り返り、部屋の入口で彼女が大きな軍用拳銃を構えて立っているのを見た。

 おとこの足元に、額を撃ち抜かれたシャンブロウが横たわっている。

 後頭部から流れる血は赤い髪と混ざり合い、床を染めていく。

 彼女が近づこうとするのを、おとこは手で留めた。

 おとこは、昏い声を放つ。

「また、終わっていないぞ」

 おとこは刀を拾い、手に収める。

 刀は狂おしい死への渇望を、光に変えて輝いた。

 ぞわり、とシャンブロウの赤い髪が無数の蛇が如く蠢くと、紐を引かれた操り人形のように額を撃ち抜かれた死体が一息で立ち上がる。

「目を、閉じろ! 意識を持っていかれるぞ」

 そう言いつつ、おとこは刀を振るい差し伸ばされる赤い髪の触手を斬り飛ばす。

 おとこはシャンブロウの瞳が虹色の輝きを放つ寸前に、目を閉じる。

 無明流という、剣の技がある。

 それは目に頼らず、気を感じて相手の動きを読む技であった。

 無明流の開祖は、自身の目を抉り技を究めたという。

 おとこはその無明流の技を、究めている。

 目を閉じても、シャンブロウの気配ははっきりとわかった。

 それは剥き出しとなった、白い炎のようだ。

 シャンブロウは、視覚に頼らなければまさに凶暴な捕食者としての本性がよくわかる。

 頭部で渦巻く髪は、気で感じると燃え盛る溶鉱炉のようにおもえた。

 その溶鉱炉は、いくつもの光でできた枝を伸ばそうとする。

 白く光る細長い枝となった気の流れが、おとこに迫った。

 それは、シャンブロウの髪のはずでありおとこを再び快楽の檻へと取り込もうとしている。

 それには構わずおとこは、刀を振るい横に薙ぐ。

 確かな手応えを、感じた。

 彼女は、刀が肉を断つ音を聞いて目を開く。

 彼女は、足元に転がるシャンブロウの生首を見る。

 おとこは、一刀のもとにシャンブロウの首を、切り落とした。

 おんなを支配していた髪は、その宿主から生命力の供給を絶たれると生きてはいられぬようだ。

 今では動かぬ、髪でしかない。

 力を失った真紅の髪は、静かに床を覆っているだけだ。

 おとこは、彼女に目を向けると不思議そうに尋ねる。

「なぜ、おれを助けた」

 彼女は、肩を竦めて言った。

「あんたをシャンブロウに食わせたほうが、よくないことが起きる気がしたのよ」

 おとこは。

 夕暮れを渡る風のように。

 そっと、微笑んだ。
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